マレーシアの人種差別

生々しい話になるかもしれません。不快になられる方もいらっしゃるかもしれません。差別のない社会が来ますように。

 

マレーシアでの人種差別

歴史

多民族国家マレーシアで意外に思われる方もいるかもしれませんが、マレーシアには人種差別が色濃く存在しています。

人種による差別は古くはイギリス植民地時代にさかのぼります。中国から移民してきた中華系マレーシア人は勤勉に働き、経済的に成長していきました。道端で行商を行っていた人が銀行貸し付けまで上り詰めるという例もありました。彼らのコミュニティーは強く中国の文化・言語・習慣を持ち込みました。

インド系の移民も多く入ってきました。しかし中華系マレーシア人と比べコミュニティーも弱く、国に大きく影響を及ぼす勢力とはなりませんでした。多くのインド系マレーシア人がプランテーションなどの労働者として働き続けました。

マレー系も同様に社会に大きく影響を及ぼす勢力ではなかったものの、イギリスが中華系マレーシア人を潜在脅威としてとらえたため、学校教育の面などで優遇し、他の中華系マレーシア人、インド系マレーシア人を一時的な居住者として定義しました。

そして現在

現在も国立大学ではマレー系を優遇した入学制度となっており、役所・警察・行政関係者の大多数もマレー系が占めています。

家の購入時もマレー系には格安価格で販売されています。その他車などの購入時にもマレー系マレーシア人に対してはローンの組まれ方が異なっています。

しかしマレー系マレーシア人には基本的にイスラム教からの改宗は許されていません。

ビジネスで成功した中華系マレーシア人は、お金を出して、アメリカ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド等に留学に出ることができます。そして帰国後事業を受け継ぐこともできるわけです。

一方インド系マレーシア人の場合は、中華系マレーシア人のような金銭的なバックグラウンドのない家庭が多いです。そのため進路は二極化し、国立系大学において非マレー系に割り当てられた希少枠を勝ち抜いて、その後、医師・弁護士等の高学歴が必要とされる職業に就く人と、労働者として、そして中には非社会性活動に手を染めるものに分かれる傾向があります。

他と国籍を含めると、マレーシアでは色が濃ければ濃いほど差別を受ける傾向にあります。そのためマレーシア人は日焼けを嫌い、色白になりたがります。

 

 

実例

街中にはアメリカでの1960年代以前を彷彿とさせるような広告を時々目にします。

例えば家の賃貸広告には 「No N*」のサインが書かれていることがあります。黒人お断り、しかもひどい差別用語を使っています。アメリカでは一発逮捕です。その前に広告主はただでは済まないでしょう。中華系のみなどの表現もよく用いられています。

不動産仲介業者も同様にして近隣住民に黒人がいないことをメリットの一つとして紹介します。古くは黒人系住民が違法薬物に関係していたことから来るのでしょう。

警察は道路に検問を設けた際、黒人を優先的にマークし職務質問・ID・有効なビザのチェックを行います。

就労のための面接応募時に提出する履歴書には、宗教・人種・写真を書く欄があります。これもアメリカでは一発逮捕です。

マレー系は○○、中華系は○○、インド系は○○というように、人々の間では人種をひとくくりにした表現を使うのが頻繁に見受けられます。

 

マレーシアにおける差別のこれから

悲しいことに一歩マレーシアを出れば彼らも差別を受ける対象です。

マジョリティとして考えられているイスラム教徒は海外、特に欧米圏ではマイノリティーです。

私たち日本人も例外なく欧米では黄色人種として差別を受けることがありますが、中華系マレーシア人も欧米では同じ黄色人種として差別を受けています。

差別される側に一度でも立てば、弱い人の立場が分かり、少しは改善されるという方もいるかもしれません。しかしアメリカでは差別されているメキシコ系がさらに黄色系を差別する事例を耳にします。

日本・アメリカ等では表立っては行われていないことが、マレーシアではすべてを大っぴらに行っているというのが現状でしょうか。

 

マレーシアでも問題意識がないわけではないようです。

PETALING JAYA: Racial discrimination in Malaysia remains high despite ongoing efforts by the government to promote moderation and racial harmony within the country.

Malaysia’s Racial Discrimination Report 2016, compiled and prepared by non-profit social outfit, Pusat Komas, concluded that incidences of racial discrimination in Malaysia continued to rise last year.

According to the report, discrimination based on ethnicity in education, healthcare, finance, workforce and welfare continued on an upward trend.

【出典: New Straits Times

差別をなくしていくのは簡単なことではありません。

 

コメント

  1. nikoniko より:

    そうなんですか~。よーく分かりました。私達日本人は人種差別といっても、ピンと来ないし、言葉に出して聞くことも出来なかったのですが、これで様々な事が納得できました。
    有難う御座いました。