【現地レポート】マレーシアの漁業現場で見えた「鮮度」と「信頼」のかたち

マレーシアで暮らしていると、時々こんな話を耳にします。

「あの魚、新鮮に見えるけど、実は薬品で処理されてるらしいよ」

あくまで噂レベルの話ではあるものの、地元の市場や漁港で売られている魚の一部には、鮮度を保つために何らかの薬品が使われている可能性があるという声があるのも事実です。

噂される「薬品使用」の実態とリスク

一部のローカル市場では、ホルマリンや過酸化水素などを使って魚の鮮度を“演出”するという話も耳にします。あくまで全体の話ではなく、一部の業者や漁船に限った話ですが、現地消費者の間でも不安の声があるのは確かです。

よく噂に挙がる薬品とそのリスク:

薬品 使用目的 健康への影響
ホルマリン 防腐・鮮度維持 発がん性あり。食品使用は法律で禁止されている。
過酸化水素 白く見せる・脱臭 高濃度では胃腸刺激。残留のリスクあり。
亜硫酸塩 黒変防止・抗酸化 過剰摂取でアレルギーや呼吸器障害の懸念。

マレーシア政府もこれらの薬品使用に対して取り締まりを強化しており、多くの漁港・市場では違法使用が減少傾向にあるとされています。

今回、私はこのテーマに興味を持ち、漁港の町・Sekinchan(セキンチャン)と、都市部で支持を集めるBeacon Martを訪ねてみました。それぞれの現場で感じたことを、なるべく主観を交えすぎず、率直にお伝えできればと思います。

Sekinchanの港と魚市場:地元の誇りと課題が混在する場所

朝方の漁港は活気があり、漁師たちが水揚げを終えたばかりの魚を次々に運んでいました。魚の種類も豊富で、タイやカマス、エビなどが氷詰めの状態で並んでいます。冷凍庫や氷の製造設備も整っており、漁業の町としての基盤はしっかりしている印象を受けました。

ただ、市場を歩いていると、魚の見た目にバラつきがあることも感じます。目が濁っていたり、身が少し柔らかそうだったりするものもあれば、状態の良いものもある。品質管理が徹底されているとは言いがたい場面もあるのが正直なところです。

Beacon Mart:一貫管理が生む“信頼という付加価値”

さて、お次はクアラルンプールのBeacon Mart。ここでは、魚は産地で処理され、すぐに内臓を取り除き、超低温で冷凍された状態で店舗に並びます

仕入れは主にサバ州のクリーンな海域から。自社ブランド「GroforU」のもとで、漁獲から加工、物流、販売までを一貫して管理しているのが特徴です。これにより、魚の履歴が明確であり、購入者としても安心して手に取ることができます

もちろん価格はやや高めですが、品質に納得して買っていく人が多く、クアラルンプール内でも店舗を増やしています

日本の業者にはチャンス?安全と鮮度を求める消費者たち

現地の魚の質そのものが悪いわけではありません。むしろ天然物が多く、旨みも強い。問題は、処理と流通の仕組みに差があること。Beaconのように、「鮮度管理+情報の透明性」が整えば、魚は“高付加価値商品”になり得るのです。

日本では当たり前のように行われている神経締め、血抜き、真空冷凍といった技術。それをマレーシアの漁港に合わせた形で簡易的に導入できれば、現地の漁業者にとっても、新たな収益源に繋がるかもしれません。

まとめ

現地を訪れて感じたのは、「ちゃんと処理されていれば、多少高くても魚は売れる」という事実です。そして同時に、「処理されているかどうかが分からない魚」に対する不安が、消費者の行動に大きく影響するということでもありました。

Beaconが築いてきたモデルは、もしかするとマレーシア全体の漁業の価値を高めるヒントになるかもしれません。

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