SketchUpで作ったシーンを、1枚ずつ手で保存していませんか。
外観・玄関・LDK・水回りと、提案用のカットをそろえるだけでも、10アングルあれば同じ保存操作を10回繰り返すことになります。
理由ははっきりしています。SketchUpの画面上で「シーン」を切り替えるのは一瞬でも、画像として保存する操作は1枚ずつだからです。カットが増えるほど、設計やモデリングではなく保存作業に時間が溶けていきます。
ただしSketchUpには、登録したシーンをまとめて連番の静止画に書き出す機能が標準で用意されています。プラグインは要りません。この記事では、その手順を3ステップで整理したうえで、「1シーンにつき1枚にならない」「透過PNGで書き出せない」といったつまずきやすい点と、その回避方法まで紹介します。
はじめに確認しておきたい2つの前提
手順に入る前に、ここを外すと画面をいくら探しても見つからない、という前提が2つあります。
- デスクトップ版の機能です。アニメーション書き出しはインストール型のSketchUp(Pro/Studio)に用意されている機能で、ブラウザで動く無料のSketchUp Freeには見当たりません。メニューを探しても無い場合は、まずご自身の環境がどちらなのかを確認してください。なお無料のWeb版はそもそも商用利用が認められていないため、業務で使うならデスクトップ版が前提になります。
- 先にシーンを作っておく必要があります。書き出せるのは「シーンとして登録済みのアングル」だけです。カメラを動かしただけの状態は対象になりません。書き出したいカットの数だけ、先にシーンを追加しておきます。
シーンを一括で静止画に書き出す3ステップ
1書き出したいアングルをシーンに登録する
まず、保存したいアングルごとにシーンを作ります。トレイ(Macの場合はパネル)の「シーン」を開き、「+」ボタンでシーンを追加します。外観・アプローチ・LDK・水回り、といった具合に、提案書に並べたいカットの数だけ登録しておきます。
このときシーン名は書き出し後のファイル整理を意識して付けておくと後が楽です。書き出されるファイル名自体は連番になりますが、シーンの並び順がそのまま連番の順序になるため、並び順=提案書の構成にしておくと貼り込みで迷いません。
2「1シーン=1枚」になるようアニメーション設定を調整する
ここが最大の分かれ目です。この機能は名前のとおりアニメーションの書き出しを流用しているため、初期設定のままだとシーンとシーンの間の動きまで1コマずつ画像化され、数十〜数百枚が吐き出されます。10シーンのつもりが数百枚出てくるとしたら、原因はほぼここです。
[ウィンドウ]→[モデル情報]→[アニメーション](または[表示]→[アニメーション]→[設定])を開き、次のどちらかに設定します。
方法A:シーン切り替えのアニメーションを切る
シーンからシーンへ移動するときのアニメーション(トランジション)をオフにし、各シーンで待つ秒数(ディレイ/遅延)を0にします。これで各シーンが1枚ずつ書き出されます。
方法B:1秒切り替え+1fpsで合わせる
切り替えにかける時間を1秒にしたうえで、書き出し時のフレームレートを1に設定します。1秒あたり1コマなので、結果として1シーン1枚になります。
どちらでも結果は同じです。普段からウォークスルー動画も書き出す方は、設定を戻す手間が少ない方法Bのほうが扱いやすいこともあります。
3イメージセットとして書き出す
[ファイル]→[エクスポート]→[アニメーション]→[イメージセット]を選びます。メニューの名前は「アニメーション」ですが、ここで選ぶ形式によって動画ではなく静止画の連番として保存できます。保存場所とファイル名を指定し、形式にJPEGやPNGを選びます。
[オプション]ボタンからは、画像サイズ(幅・高さ)、フレームレート、アンチエイリアス、線の太さの倍率などを指定できます。画面の表示サイズをそのまま使う設定(Use View Size)が有効になっていると、書き出しサイズがSketchUpのウィンドウサイズに引きずられます。提案書に載せる解像度が決まっているなら、この設定を外して幅と高さを直接入力してください。あとは[エクスポート]を押せば、各シーンが連番のファイルとして保存されます。
つまずきやすい3つの落とし穴
① 一括書き出しでは背景を透過にできない
これは知らないと必ず引っかかります。イメージセットの書き出しには「背景を透過」のオプションがありません。透過が使えるのは[ファイル]→[エクスポート]→[2Dグラフィック]でPNGまたはTIFFを選んだときのオプションだけで、こちらはシーンを1枚ずつ書き出す方式です。さらにSketchUp 2026では、アニメーション書き出しでPNGを指定すると背景が黒く塗りつぶされるという不具合も公式フォーラムに報告されています。切り抜き前提の画像が必要なカットだけは、2Dグラフィック書き出しで個別に対応するのが確実です。
② 枚数が想定と合わない
前述のとおり、シーン切り替えのアニメーションが有効なままだと中間フレームまで書き出されます。書き出し前に必ずアニメーション設定を確認してください。逆に、動画用の設定に戻し忘れるとウォークスルーがカクカクになるため、用途を切り替えるたびに見直すのが安全です。
③ スタイルや影は書き出し時に変えられない
書き出されるのは、各シーンに保存されている状態そのものです。影の時刻・スタイル・タグの表示非表示をそろえたいなら、書き出し前にシーン側を更新しておく必要があります。一括書き出しは「保存し直す手間」を消す機能であって、「見え方を後からそろえる」機能ではありません。
イメージセットと2Dグラフィック、どちらを使うか
| 項目 | イメージセット(一括) | 2Dグラフィック(1枚ずつ) |
|---|---|---|
| 複数カットの書き出し | ◎ 一度の操作で全シーン | × シーンの数だけ繰り返す |
| 背景の透過(PNG/TIFF) | × オプションが無い | ◎ 「背景を透過」で対応 |
| サイズ指定 | ○ 幅・高さを指定可 | ○ 幅・高さを指定可 |
| カットごとに設定を変える | × 全カット共通 | ◎ 1枚ずつ調整できる |
| 向いている場面 | 提案書用の一式・修正前後の比較 | 切り抜き合成・特定カットの高解像度出力 |
提案書に並べる一式はイメージセットで一括、切り抜きが要る1枚だけ2Dグラフィックで個別に。この使い分けが最も速いです。
実務での使いどころ
この一括書き出しは、建築パースの現場でとくに効きます。
- 提案書用の一式をそろえるとき。外観・玄関・LDK・水回りを同じ設定で一度に書き出せるため、画角や明るさのばらつきが出ません。
- 修正前後の差分を見せるとき。同じシーンを保持したままモデルだけ直して再度書き出せば、まったく同じ画角の比較画像が手に入ります。口頭で説明するより、施主に伝わります。
- 検討案を横並びで比較するとき。仕上げ違い・家具違いのシーンを用意しておけば、比較資料が数分で用意できます。
一枚ずつ手で保存する必要はありません。前提とアニメーション設定さえ押さえておけば、複数アングルの書き出しは数分で終わります。パース制作でいちばん削れる時間は、実は絵を作る時間ではなく、こうした周辺作業の時間です。
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