2018年、マレーシアで「Anti-Fake News Law(偽ニュース規制法)」という法律が制定され、事実と異なる報道・発信を行った個人や関係者に最大RM50万の罰金や最大6年の禁錮刑を科すという内容が大きな話題になりました。当時は野党や一般市民から「何を『偽ニュース』と判定するのか」という基準の曖昧さを理由に、言論の自由を脅かすとの懸念の声が上がっていました。
制定から廃止までの経緯
この法律は2018年5月の総選挙のおよそ1か月前、当時のナジブ政権下で可決されました。人権団体や野党からは、当時渦中にあった汚職・不正管理疑惑(1MDB問題)をめぐる報道を封じ込める狙いがあるのではないか、との批判が上がっていました。同年5月の総選挙でナジブ政権が敗北しマハティール政権が誕生すると、新政権は同法の廃止を公約していましたが、下院(Dewan Rakyat)が2018年8月に廃止を可決したものの、ナジブ氏の与党が多数を占める上院(Dewan Negara)がこれを否決し、廃止は一旦頓挫します。最終的に2019年10月9日に下院が改めて廃止法案を可決し、同年12月19日に上院も可決したことで、施行から1年半ほどを経て正式に廃止が確定しました。
2026年現在は「Online Safety Act 2025」という別の枠組み
偽ニュース規制法が廃止された後も、AIによるディープフェイクや誤情報の拡散、SNS上のサイバーいじめといった問題自体はなくなっていません。こうした背景から、2025年に新たに「Online Safety Act 2025(オンライン安全法)」が制定され、2026年1月1日に施行されています。
旧法は「偽の情報を発信した個人・関係者」を罰する枠組みでしたが、Online Safety Act 2025はプラットフォーム事業者(ASP・CASP・NSPライセンスを持つ通信事業者)に有害コンテンツの削除義務を課す枠組みです。マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)が、優先度の高い有害コンテンツについては最短1時間〜24時間以内のブロックを事業者に義務付けており、対応しない企業やその責任者個人にも罰則が及ぶとされています。
ライセンス区分の補足
この法律についての見方
推進する立場からは、AIによるディープフェイクや誤情報、児童を含むサイバーいじめといった実害への対応として必要な措置だとされています。一方で、Press freedom(報道の自由)を重視する国際団体からは、2018年の旧法の際と同様に、何が「有害」とみなされるかの線引きが政府・当局側の裁量に委ねられている点への懸念も表明されています。旧法が特定政権による報道封じ込めの疑いをかけられた歴史を踏まえると、新法の運用が公平になされるかどうかを注視する声があるのも自然なことだと言えるでしょう。どちらの見方にも一理あり、今後の運用実績によって評価が変わってくる分野と言えそうです。特に外国人居住者にとっては、SNSでの発信内容がどこまで規制対象になり得るかは今後の運用例が積み重なることで徐々に見えてくる部分も大きいため、引き続き情報のアップデートが必要です。



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