マレーシアの外国人労働者の待遇 ー 2026年の最低賃金・宿舎基準はどう変わったか

労働者人口の相当な部分を外国人が占めているマレーシア。国の経済は外国人労働者に大きく依存しており、他の多くの国が外国人排除的な政策をとる中、この国は外国人労働者を大量に受け入れなければ立ち行かない、という特殊な事情を抱えています。そうした外国人労働者は、実際にはどのような待遇で働いているのでしょうか。マレーシアで最もなくてはならない職種のひとつであるセキュリティーガードの人たちに、実際に話を聞いてみたことがあります。

現場で聞いた、当時の待遇

私たち日本人もマレーシアに来れば必ずお世話になる職種で、この人たちなくしては平穏な生活はまず送れません。当時話を聞いたガードマンたちの多くはネパール出身で、家族を帯同せず単身で出稼ぎに来ている人がほとんどでした。

当時聞いた話では、月給はおよそRM2,000(当時のレートで約5万円)。日給でも週給でもなく月給で、その中からネパールに残した家族へ仕送りをしているとのことでした。勤務時間は1日12時間の2交代制。恵まれた配置の人は建物の下など日陰で勤務できますが、そうでない人は灼熱の日差しを遮るもののないパラソルの下で立ち続けなければならないケースも多く、住居を持たず「セキュリティボックス」と呼ばれる詰所で寝泊まりしている人も少なくありませんでした。それでも近隣のインドネシアなどに比べれば好待遇とされ、多くの人がマレーシアへの出稼ぎを選んでいる、という話でした。

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2026年時点で変わったこと・変わっていないこと

制度面では大きな進展がありました。マレーシアの最低賃金は2024年の最低賃金令(Minimum Wages Order 2024)に基づき、2025年8月1日以降、これまであった企業規模による猶予措置がすべて撤廃され、月給RM1,700(時給換算でRM8.18)がマレーシア国内のあらゆる雇用主・あらゆる従業員に例外なく適用されています。ILO第100号条約(同一報酬の原則、マレーシアは1997年批准)および雇用法1955年に基づき、この最低賃金は国籍を問わず外国人労働者にも同様に適用される、と明記されています。当時のRM2,000という月給は、この現在の最低賃金水準を上回ってはいますが、12時間×2交代という勤務形態が現在の労働時間規制の観点からどう扱われるかは、雇用契約や職種区分によって解釈が分かれる部分でもあり、断定は避けたいところです。

住居面でも制度整備が進んでいます。外国人労働者の宿舎については労働者最低住宅基準及び施設法1990年(Act 446)が最低居住面積・トイレ数・換気・消防設備等を規定しており、2026年にはスランゴール州・クランバレー地域を中心に取り締まりが一段と強化されています。違反した場合、労働者1人あたり最大RM50,000の罰金、宿舎閉鎖命令、外国人労働者の雇用枠停止といった重い処分が科される制度になっています。「セキュリティボックスで寝泊まり」というような当時の実態が、現在この基準に照らしてどう扱われているかは職場ごとに差があり、一律には言えませんが、少なくとも制度上の最低基準は以前より明確に整備されています。

この話を振り返って

マレーシアの経済が外国人労働者に大きく依存しているという構造自体は、2026年になっても変わっていません。一方で、最低賃金・住居基準といった制度面のセーフティネットは、当時に比べて明確に整備が進んでいます。もちろん制度が整っていることと、現場での実際の運用がすべての職場で徹底されていることは別問題であり、この記事で紹介したような厳しい労働環境が今も一部で存在している可能性は否定できません。マレーシアで事業を営む、あるいは外国人スタッフを雇用する立場からは、こうした制度の変化と、現場の実態の両方に目を配っておく必要がありそうです。

まとめ: 外国人労働者への依存という構造は変わらないものの、最低賃金(RM1,700・全雇用主対象)と宿舎基準(Act 446)という2つの制度的な下支えが、2017年当時にはなかった形で整備されてきています。制度と現場実態のギャップを埋めていけるかどうかが、これからのマレーシアの労働環境における課題と言えそうです。

商業施設やオフィスビルのオーナー・テナントとして警備会社・清掃会社と契約する立場からも、この話は無関係ではありません。委託先の警備会社が最低賃金・労働時間・宿舎基準をきちんと守っているかどうかは、契約先選定の際に確認しておきたいポイントのひとつです。コンプライアンス違反が発覚した場合、直接の雇用主でなくても、テナントとして入居しているビルの評判に影響が及ぶ可能性はゼロではありません。目の前で働いてくれている人たちの待遇に無関心でいないことは、事業を営むうえでの基本的な姿勢のひとつと言えるでしょう。

マレーシアという国の豊かさは、こうした外国人労働者の存在に支えられている部分が大きいのが実情です。制度が整っていくにつれて、当時のような厳しい話を耳にする機会が少しずつでも減っていくことを願いたいところです。

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