マレーシア当局、JPPH が2016年度第4期の不動産集計報告を発表しました。
マレーシアにおける不動産業界の不調は、世界の政治動向の不透明性、マレーシア国内の景気の影響を受け、2017年も引き続き続く見通しです。
新規販売戸数の減少と売れ残り物件の増加
住宅の新規販売戸数は不動産業界の景気の鈍化を受けて減少傾向にあります。
2016年度の新規販売戸数は2015年度と比較して10%近く減少しているという結果が発表されました。
成約件数の割合も2015年度と比較して悪化しています。
イスカンダル計画が有名なジョホール州は新規販売戸数が一番多い州となっていますが、ジョホール州における物件売れ残りが顕著となっています。
ジョホール州に続き、ペナン州、セランゴール州の売れ残りが多くなっています。
※売れ残り物件とは: 販売開始後9か月たっても買い手のつかない物件と定義されています。
不動産種類別の傾向
開発されている物件の種類別でみると、テラスハウスが新規販売住宅の主体となっています。
テラスハウスとはリンクハウスとも呼ばれ、日本でいうところの一戸建て住宅の壁が隣接する住宅と共有されたものです。10戸ほどの住宅がすべて壁を共有している場合もあります。
テラスハウスに続きコンドミニアム・アパートが開発の主体となっています。
コンドミニアム・アパートの新規物件はクアラルンプールエリアが主となっています。
現状としてはジョホール州で多く開発されているテラスハウスの売れ残りが目立っています。
クアラルンプールで開発されているコンドミニアムも買い手が付きにくい状態です。
物件価格帯別の傾向
富裕層向けの物件RM 500,000以上の物件は特に成約率が低いという結果となっています。
低所得者向けの物件の売れ残りを見てみると、ケダ州、ヌグリ・スンビラン州の土地付き物件での売れ残りが多いようですが、実需を反映して比較的堅調に売れている模様です。
開発中プロジェクトの停止
※マレーシアは日本とは異なり建物完成前・設計段階から販売をかけることができます。
売れ残り物件の増加を受けて、多くのデベロッパーがプロジェクトの停止、一時停止を行っています。
ジョホール州のテラスハウス、クアラルンプールのコンドミニアムがその主な対象となっています。
全体未販売物件数の割合を価格帯別で見ると、RM 500,000~RM 1,000,000の物件のプロジェクト停止が顕著です。
それよりも安い物件は未だに開発が続けられています。
まとめ
RM 300,000以下の物件は他の価格帯に比べ成約率が依然として高く、実需があることをうかがわせます。
クアラルンプールにおいては住宅の販売価格はこのような市場の流れにもかかわらずまだあまり下がっていません。
物件の賃貸価格に関しては2016年末に新しくMRT、LRTが開通しました。開通したMRT、LRTの周りの物件は賃貸の上昇傾向が見られています。反対に他の物件に関しては下降傾向にあります。そのため近年は借り手市場といわれています。
銀行も住宅ローンの許可を渋り、購入意欲のある消費者でもローンが付かず、購入を延期せざるを得ないという状態となっています。
ローカルの間では不動産市場において景気が回復するのはあと数年かかると予想されています。
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