マレーシアの賃貸物件は、基本的に1年以上の契約が前提です。1週間から1か月程度の滞在であれば、ホテルやAirbnbを探す方が圧倒的に多く、日本のようなマンスリーマンションの仕組みがそのまま存在するわけではありません。「日本にはマンスリーマンションがあるのに、なぜマレーシアには短期契約物件がほとんどないのだろう」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。筆者もマレーシアに来た当初、この存在を知らずホテルに長期滞在した経験があります。ただし、探し方さえ知っていれば、1か月単位から借りられるコンドミニアムはマレーシアにも実在します。
なぜマレーシアには短期契約物件が少ないのか
■エージェント側の事情:手間に見合う収入にならない
マレーシアで賃貸物件を借りる際は、エージェント(不動産エージェント)を通すのが一般的で、エージェントは契約成立時に家賃1か月分程度を手数料として受け取るのが通例です。しかし短期契約になると、この手数料はもちろん減ります。一方で、電話対応・内見の案内・家主との交渉・契約書の締結という一連の作業量は、契約期間の長さに関わらずほとんど変わりません。労働と報酬の費用対効果を考えると、エージェントがどうしても年間契約の案件を優先してしまうのが実情です。
■家主側の事情:空室リスクと原状回復の手間
家主にとって一番のリスクは、賃貸物件が空室になることです。短期契約では、せっかく借主を見つけても数か月後にはまた退去してしまい、次の借主をまた探さなければなりません。エージェントへの手数料も、そのたびに払い直しになります。さらに、次の借主がすぐに見つからなければ空室期間が延び、その間の家賃収入はゼロになります。加えて、借主によって部屋の使い方には差があり、退去のたびに壁や設備の状態を確認し、必要であれば原状回復の手配をしなければなりません。短期契約はこの手間とコストが長期契約より高い頻度で発生するため、家主側にも積極的になりにくい事情があります。
逆に言えば、これらのハードルを乗り越えてでも短期で貸し出している物件は、家主や管理会社が短期需要をあらかじめ見込んで用意しているケースが多く、探す価値があります。以下では、実際に1か月単位から借りられることが確認できているコンドミニアムを紹介します。
短期契約可能なコンドミニアムの例
1. Ara Greens Residences
2. Tropicana Avenue Service Apartments
Persiaran Tropicana, Tropicana, 47410 Petaling Jaya, Selangor
3. Tropics – Tropicana City
いずれもPetaling Jaya西側、Ara Damansara・Tropicana周辺に位置しています。KL中心部と比べて家賃を抑えつつ、幹線道路(LDP・NKVE)へのアクセスも確保できるため、短期滞在者から根強い人気があるエリアです。
2017年の初回公開時から何が変わったか
■探し方:エージェント直接交渉からAirbnb・Booking.com経由へ
2017年の初回公開時は、エージェントへの直接交渉が短期物件を見つける主な手段でした。2026年現在は、Ara Greens Residencesのような物件でも、Airbnbや Booking.comを通じて家具・Wi-Fi込みの部屋を数日〜数か月単位で予約できるケースが一般的になっています。オーナーや管理会社が直接プラットフォームに掲載しているため、エージェント手数料なしで借りられることも増えました。物件を探す起点そのものが、電話や現地の不動産屋回りから、アプリでの検索に移ったと言えます。
■相場:上昇傾向だが物件差が大きい
2017年時点でこの記事が紹介していた相場は「月額RM2,000前後から」でした。2026年時点でAra Damansara周辺の賃貸情報を調べると、長期契約(年間契約)の物件は間取りによってRM1,800程度〜RM3,000程度前後まで幅があり、家具付き・短期対応のサービスアパートメントではRM2,500〜4,000程度の掲載例も見られます。ただし、いずれも情報サイト上の一時点の掲載例であり、恒常的な相場として一次資料で裏付けが取れているわけではなく、部屋タイプ・築年数・管理会社によって実際の価格は大きく変わります。「短期のほうが必ず高い」と断定できる根拠も現時点ではないため、あくまで参考値として捉え、契約前には必ず複数物件の掲載価格を比較し、家具・光熱費・清掃費が家賃に含まれているかどうかも合わせて確認してください。
■エリア:アクセスと家賃のバランスが良い立地に人気が集中
Ara Damansara・Tropicana・Damansara Uptown周辺は、KLCCなど市中心部に比べて家賃を抑えつつ、幹線道路へのアクセスも悪くないため、短期滞在者に根強い人気があります。短期滞在向けの物件を探す際は、勤務先や普段の行動範囲からの距離を優先して絞り込むと、候補を効率よく絞れます。
・光熱費・Wi-Fi・清掃費が家賃に含まれるか事前確認する
・保証金(デポジット)の返還条件を契約前に書面で確認する
・エージェント経由でない場合はオーナー・管理会社の実在確認(SSM登録等)を行う
・短期契約は年間契約に比べて割高になりやすいため、3か月以上滞在予定なら年間契約への切り替えも検討する
・Airbnb・Booking.com経由の場合はキャンセルポリシーと最低宿泊日数を必ず確認する
上記は一例で、このほかにも短期で貸し出しているコンドミニアムはあります。年間契約が前提のマレーシアの賃貸市場でも、探し方を知っていれば短期の選択肢はゼロではありません。マレーシアの賃貸契約全体の流れや注意点はマレーシアの賃貸ガイドで、契約時に起きやすいトラブルは賃貸契約(Tenancy Agreement)でよくある3つのトラブルでまとめているので、あわせて確認してみてください。



コメント