この記事は2017年に「マレーシア住宅融資制度2017」として公開したものを、2026年7月時点の情報で全面的に書き直したものです。当時挙げていた制度名の多くは、その後の政権交代と住宅政策の再編で名前が変わったり、新しい枠組みに吸収されたりしています。
まず最初に、日本語でこの記事にたどり着いた方に一番大事なことをお伝えします。
先に結論:ここで紹介する制度は、原則としてマレーシア国民向けです
PR1MAもRumah Selangorkuも、以下すべて「マレーシア市民権を持つ人」が対象で、日本人を含む外国籍の方は申し込めません。それどころか、こうした手頃な価格帯の住宅(affordable housing)区分やブミプトラ枠の物件は、外国人が購入すること自体ができないルールになっています。
外国人としてマレーシアで住宅を買う場合の条件は、記事の後半「外国人がマレーシアで家を買うときの2026年ルール」にまとめました。制度の中身より先にそちらを読みたい方は、そこまで飛ばしてください。
2026年のマレーシア住宅支援制度、全体像
マレーシアの住宅支援は、大きく2つに分かれます。この2つを混同すると話がややこしくなるので、最初に整理しておきます。
- 住宅そのものを安く供給するプログラム(PR1MA、Rumah Selangorku、Residensi Wilayah、PPR など)
- お金を借りやすくする金融支援(SJKP、SRP、Step-Up Financing など)
2017年の記事では、この2つをまとめて「融資制度」と呼んでいましたが、実際には(1)は住宅の供給・分譲プログラムで、融資そのものではありません。今回のリライトでは分けて説明します。
住宅供給プログラム(2026年時点)
| 制度名 | 対象 | 世帯収入の目安 | 物件価格帯 | 転売制限 |
|---|---|---|---|---|
| PR1MA | 全国のM40層・初回購入者 | RM2,500〜15,000 | RM10万〜40万 | 5年 |
| Rumah Selangorku | セランゴール州民 | 〜RM14,500(5段階) | RM4.2万〜25万 | 5年 |
| Residensi Wilayah(旧RUMAWIP) | KL・プトラジャヤ・ラブアン | 単身RM10,000/既婚RM15,000 | 〜RM30万 | 10年 |
| PPR(Program Perumahan Rakyat) | 都市部のB40層 | 低所得層 | RM3.5万〜4.2万(賃貸あり) | 概ね10年 |
| Rumah Mesra Rakyat(RMR) | 自己所有地を持つ地方のB40層 | RM750〜5,000 | 自己所有地に新築 | 数年(条件により変動) |
| RMMJ(Rumah Mampu Milik Johor) | ジョホール州民 | 州の区分による | RM4.2万〜 | 州の規定による |
このほか、現在のMADANI政権下ではProgram Residensi Rakyat(PRR)とResidensi MADANIという新しい枠組みが動いており、新規供給はこちらに寄ってきています。2026年予算では住宅関連に約RM6.72億が配分され、49件のPRRプロジェクト(約1,755戸)が2026年末までに完成予定とされています。
金融支援(2026年時点)
- SJKP(Skim Jaminan Kredit Perumahan)/SJKP MADANI:給与明細が出ないギグワーカー・自営業者・屋台商などのための融資保証。2026年予算で保証枠がRM100億からRM200億へ倍増され、約8万人の初回購入者をカバーする想定。SJKPは物件価格の110%(上限RM50万)、SJKP MADANIは120%(上限RM36万・内装費込み)まで。
- SRP(Skim Rumah Pertamaku/My First Home Scheme):頭金なしで最大110%まで借りられる初回購入者向けの保証制度。21〜40歳、単身RM5,000/連帯RM10,000までの収入、物件はRM50万まで。
- Step-Up Financing:2026年予算で導入。21〜35歳向けに、返済額を最初は低く抑えて後年に上げていく仕組み。
- LPPSA(公務員向け住宅融資):融資上限がRM60万からRM100万に引き上げ。
- 初回購入者の印紙税免除:RM50万以下の物件について、譲渡証書・ローン契約書ともに100%免除。2027年12月31日まで延長。
2017年から何が変わったのか
元記事に載せていた8つの制度が、2026年時点でどうなっているかを整理します。ここが今回のリライトで一番書き直しが必要だった部分です。
| 2017年の記事での表記 | 2026年時点の状況 |
|---|---|
| Skim Perumahan Rakyat 1Malaysia (PR1MA) | 現存。「1Malaysia」の看板は外れ、PR1MA単体のブランドとして継続。長らく塩漬けだった34件の遅延プロジェクトが完成し、22,925人が引き渡しを受けたと報じられている。新規供給はResidensi MADANI・PRRへ移行しつつある |
| Skim Perumahan Mampu Milik Swasta (MyHome) | 2014年開始の民間デベロッパー向け補助制度。現在は当時の形では動いておらず、新規の窓口としては実質的に機能していない。今から探す制度ではない |
| Perumahan Penjabat Awam 1Malaysia (PPA1M) | PPAMへ改称後、公務員向け住宅施策の再編に吸収。現在の公務員向けの中心はLPPSAの融資上限引き上げと、プトラジャヤPrecinct 19の「Kota MADANI」(1万戸・うち8割が公務員枠) |
| Program Perumahan Rakyat (PPR) | 現存。マレーシアで最も歴史の長い公共住宅プログラム。賃貸は月RM124程度から、分譲はRM3.5万〜4.2万。2026年予算でRM1.43億がエレベーター更新を含む改修に充てられた |
| Rumah Mesra Rakyat 1Malaysia (RMR1M) | 「1Malaysia」が取れてRumah Mesra Rakyat(RMR)に。SPNB(国営住宅公社)が運営。2026年は全国6,545戸を建設予定。自己所有地に約750平方フィート・3ベッドルームの平屋を建てる仕組みで、返済は月RM300程度から |
| Rumah Mampu Milik Wilayah Persekutuan (RUMAWIP) | Residensi Wilayahに改称。制度自体は継続。上限RM30万、10年の転売制限は変わらず |
| Rumah Selangorku | 現存。5段階の区分(Type A〜E)に整理され、「Selangorku 3.0」では30歳未満向けの単身用ユニットも追加された |
| Rumah Idaman Rakyat (RIR) | 単独の全国制度としては現在ほとんど言及されない。実務上はPRR/Residensi MADANIや州レベルの制度に置き換わったと考えるのが自然 |
ざっくり言うと、「1Malaysia」という当時の政権のブランドが付いていた制度は軒並み改称・再編され、いま新しく動いているのはMADANI系(PRR/Residensi MADANI/SJKP MADANI)です。制度の中身(所得制限・価格帯・転売制限)はそこまで劇的には変わっていませんが、名前で検索すると古い情報にたどり着きやすいので注意してください。
転売制限(moratorium)は必ず契約書で確認を
PR1MAの転売制限について、2017年当時は「10年」と説明されていましたが、現在は5年と案内されています。プロジェクトや契約年次によって条件が違う可能性があるため、数字はネット記事ではなく必ず売買契約書と各制度の公式サイトで確認してください。Residensi Wilayahの10年は特に長く、途中で転勤や家族構成の変化があっても売れません。
外国人がマレーシアで家を買うときの2026年ルール
ここからが、日本人読者に実際に関係する部分です。上で挙げた制度はすべて国民向けなので、外国人は別のルールで動くことになります。
1. 最低購入価格がある
外国人が住宅を買う場合、州ごとに最低購入価格が定められています。2026年時点で最も一般的な水準はRM100万ですが、マラッカやペナン本土のストラタ物件ではRM50万程度、ペナン島の戸建てではRM300万超と、州と物件種別で大きく振れます。土地は州の管轄なので、「マレーシア全体でいくら」という一律の答えは存在しません。
2. 2026年1月から印紙税が8%固定に
これが直近で一番大きな変更です。2026年1月1日以降、非市民および外国法人による住宅用不動産の取得には、一律8%の印紙税がかかります(従来は4%)。永住権保持者は対象外です。RM100万の物件なら印紙税だけでRM8万。購入計画の資金繰りに直接効いてくる数字なので、古い記事の「4%」で試算していると足りません。
3. 州政府の同意(consent)が必要
外国人の購入は、案件ごとに州の土地局の書面承認が必要です。承認までの期間は州によって差があり、決済スケジュールに影響します。
4. 買える物件の種類が限られる
基本的にストラタタイトルの集合住宅(コンドミニアム・アパート)が中心で、戸建て(landed)は多くの州で厳しく制限されます。そして冒頭に書いたとおり、手頃な価格帯の住宅区分・ブミプトラ枠・マレー人保留地(Malay Reserved Land)の物件は、価格条件を満たしていても外国人は購入できません。
まとめ:制度は毎年動く。名前で検索しないこと
2017年に書いたこの記事を2026年に読み返して痛感したのは、マレーシアの住宅制度は毎年の予算で普通に中身が変わるということです。制度名で検索すると数年前の記事が上位に残っていることが多く、所得制限や上限価格をそのまま信じると計算が合わなくなります。
確認するなら、以下の一次情報にあたるのが確実です。
- PR1MA:pr1ma.my
- Rumah Selangorku:ehartanah.lphs.gov.my
- Residensi Wilayah:residensiwilayah.jwp.gov.my
- Rumah Mesra Rakyat:spnb.com.my
- PPR・住宅政策全般:KPKT(住宅地方自治省)
そして外国人として購入を検討する場合は、最低購入価格・8%印紙税・州の同意という3点を、必ず購入したい州の最新ルールで確認してください。この記事の数字も、あくまで2026年7月時点のものです。



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