労働人口のかなりの部分を外国人労働者が占めていると言われるマレーシア。多くの業種で人手不足が続いており、いわゆる「3K」に近い職種にはマレーシア人自身が就きたがらない傾向が根強く、どうしても外国人労働者に頼らざるを得ないという構造が長らく続いてきました。フィリピン・インドネシア・タイ・カンボジア・ネパール・ミャンマー・バングラデシュ・中国本土・インドなどから来た労働者を街中で見かけることは、マレーシアで暮らしていればごく日常的な光景です。
2025年政府はより本格的な制度として「多段階レビー制度(Multi-Tier Levy Mechanism、MTLM)」の導入を予定していましたが、実施は2026年に延期されました。
2026年MTLMの導入により、外国人労働者への依存度に応じてレビー(人頭税に近い雇用税)の負担額が変動する仕組みへの移行が進められています。ただし2026年時点でもMTLMはまだ正式に官報告示(gazette)されておらず、現行の一律レビー制度(半島部で製造業・建設業・サービス業が年間RM1,850、プランテーション・農業がRM640、サバ・サラワクはより低い税率)が引き続き適用されています。
政府の狙いは、外国人労働者への依存度を段階的に引き下げることにあります。現在マレーシアの労働力に占める外国人労働者の比率はおよそ15%とされており、これを2030年までに10%、2035年までに5%まで引き下げることが政策目標として掲げられています。MTLMによって追加的に徴収されるレビー収入は、自動化・機械化を促進するための基金に充てられる計画で、単に外国人労働者を締め出すのではなく、企業側に省人化・自動化への投資を促す狙いも込められています。あわせて、短期就労許可の取得要件も厳格化される方向で、業種・雇用主の変更に関する制限や、許可期間の短縮なども議論されています。
労働市場全体への影響
外国人労働者への依存度引き下げという方針は、製造業・建設業・農業・サービス業といった労働集約型産業に広く影響を及ぼします。テナントとして事業を営む企業にとっても、将来的な人件費・レビー負担の増加を見込んだ事業計画が必要になってくる可能性があります。一方で、この流れは自動化・省人化を進める企業にとっては投資の追い風にもなり得るため、業種によって受け止め方は分かれるところです。マレーシアで事業を営む、あるいはこれから事業を展開しようとする立場からは、こうした労働政策の方向性を継続的にウォッチしておく価値があります。
現場で実際に感じる変化
街中の飲食店・建設現場・清掃業などでは、依然として外国人労働者の存在感が大きいのが実情です。一方で、雇用主側からは「レビー負担の増加を見据えて、できる工程から自動化・省人化を進めたい」という声も徐々に増えてきています。飲食業では配膳ロボットやセルフオーダー端末の導入、建設業ではプレハブ工法やモジュール化の活用など、労働集約的な工程を減らす動きが、外国人労働者への依存度引き下げという政策の方向性と歩調を合わせる形で広がりつつあります。マレーシアで人材確保に頭を悩ませる事業者にとっては、単に外国人労働者を増やす・減らすという議論だけでなく、こうした業務プロセスの見直しも並行して検討する時期に来ていると言えそうです。人手不足という長年の課題は簡単には解消しませんが、制度の方向性を早めに把握し、対応を前倒しで進めておくことが、これからのマレーシアで事業を続けるうえでの備えになります。制度は今後も細かく変わっていく可能性が高いため、一度確認して終わりにせず、継続的に情報をアップデートしていく姿勢が欠かせません。マレーシアで長く事業を続けるつもりであれば、この労働政策の行方は避けて通れないテーマのひとつです。



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