マレーシア賃貸完全ガイドでも触れていますが、2年以上の賃貸契約を結び就労ビザで在住する場合、賃貸契約書に「Expat Clause」という条項を入れられることがあります。絶対的に主張できる権利ではなく家主との交渉になるため、家賃がすでに安い場合などは通らないこともあります。
Expat Clauseとは
通常、賃貸契約は契約期間中の途中解約に違約金が発生します。多くの場合、違約金としてデポジット(家賃2か月分程度)の返金をあきらめる形になるのが慣習です。
しかし駐在員の立場は、会社都合での異動や本国への帰任命令がいつ出るか分からない不安定なものです。そのため2年以上の賃貸契約に限り、そうした立場を考慮した条項(Expat Clause)を入れる交渉ができる、というのがマレーシアでの慣例になっています。日系企業の駐在員はこの条項の存在を知らないまま契約してしまうケースも多く、知っているかどうかで契約の柔軟性が大きく変わります。
具体的な文面のポイント
契約書には「両者は2か月前の書面通知、または通知に代えて2か月分の家賃相当額の支払いにより契約解除できる。ただしこの解除権は契約開始から12か月経過後に限り行使できる」といった趣旨の条項が入ります。
つまり、契約から1年経過後であれば、家主・借主どちらの側からでも2か月前通知で解約可能となり、その場合デポジットの支払い義務は発生しません。逆に1年経過前の解約や、2か月前通知をしなかった場合は、どちら側の都合であってもデポジット相当額を相手に保証する必要があります。
交渉のタイミングとコツ
Expat Clauseの交渉は、契約書にサインする前、つまり物件が決まった直後が最も交渉力が高いタイミングです。すでに契約書にサインしてしまった後から追加するのは難しいため、内覧〜契約条件のすり合わせの段階で「就労ビザでの入居であること」「会社都合での転勤・帰任リスクがあること」を明確に伝え、エージェントを通じて家主に交渉してもらいましょう。
家主が個人の場合と、不動産投資目的の法人・信託の場合とで交渉の通りやすさが変わることもあります。長期の安定入居を望む家主であれば、多少のリスクを許容してでもExpat Clauseを受け入れてくれる可能性が高くなります。
会社の駐在員規定との整合性も確認
企業によっては、駐在員向けの住宅補助規定の中で「契約解除条項(Expat Clauseに類する条項)を必ず契約書に含めること」を社内規定として定めているケースもあります。赴任前に総務・人事担当者に確認し、会社側の要求事項も踏まえて契約交渉に臨むとスムーズです。
Expat Clauseがない場合の対処法
交渉の結果、どうしてもExpat Clauseを入れてもらえない場合は、次善の策として契約期間自体を短め(1年)に設定し、更新のタイミングで状況を見て判断するという方法もあります。あるいは、転勤・帰任のリスクを見込んで、あえて短期契約向けのサービスアパートメントを選ぶという選択肢も検討に値します。サービスアパートメントは家賃はやや割高になる傾向がありますが、契約の柔軟性という点では優れています。
デポジットの内訳もあわせて確認を
マレーシアの賃貸契約では、一般的に「家賃2か月分の保証金(Security Deposit)」「家賃0.5〜1か月分の公共料金デポジット(Utility Deposit)」などが必要になります。Expat Clauseの交渉と合わせて、退去時にこれらのデポジットがどのような条件で返還されるのかも事前に確認しておくと、退去時のトラブルを避けられます。小さな条項一つで、赴任期間中の安心感は大きく変わります。契約書にサインする前に、時間をかけて確認する価値は十分にあります。初めての海外赴任で右も左もわからない中での契約は不安が多いものですが、こうした慣習を知っているだけで交渉の主導権を握りやすくなります。エージェント選びの段階から、こうした交渉ごとに慣れたプロを見つけておくことも、スムーズな契約への近道です。契約は一度サインしたら簡単には変更できないものだからこそ、最初の一歩を丁寧に踏み出すことが大切です。安心して新生活をスタートできるよう、事前準備をしっかり行いましょう。良いスタートは、良い契約から始まります。ぜひ参考にしてみてください。マレーシアでの新しい生活が、良いスタートを切れますように。



コメント