以前より気になっていたABTCを取得しました。手続きは難しいと思っていたのですが、意外に簡単なものでした。
APECビジネストラベルカード(ABTC)とは?
APEC・ビジネス・トラベル・カード(ABTC)とは、APEC域内を頻繁に出張するビジネス関係者の移動を円滑にするために、制度参加国・地域の政府が自国・地域のビジネス関係者に交付する特別なカードです。日本では外務省が交付しています。(外務省ページ参照)
ABTC所持者は、APEC域内を短期商用目的で渡航する場合、事前に各国・地域の承認を得ることで、査証(ビザ)なしで入国審査を受けられ、入国審査時にABTC専用レーン(優先レーン)を利用できます。
現在のABTC制度参加国・地域は以下の21か国・地域です。
- アメリカ
- インドネシア
- オーストラリア
- カナダ
- 韓国
- シンガポール
- タイ
- 中国
- 香港
- 台湾
- チリ
- ニュージーランド
- マレーシア
- メキシコ
- パプアニューギニア
- フィリピン
- ブルネイ
- ベトナム
- ペルー
- ロシア
- 日本
※アメリカとカナダは「暫定的参加メンバー(transitional member)」のため、入国審査でABTC専用レーンは使えますが、ABTCによる入国(ビザ免除)は認められておらず査証の取得が必要です。
【2026年最新】カードは「バーチャルABTC」に移行しました
筆者が取得した当時はプラスチックカードでしたが、制度は大きく変わりました。
- APEC全体で2020年11月にバーチャル化が決定され、日本では2024年4月1日からバーチャルABTC(VABTC)の交付が開始。スマートデバイスのアプリケーション上に表示する方式で、日本ではプラスチックカードは新規交付されなくなりました。
- 2025年2月時点で、13のAPEC参加国・地域がバーチャルABTCを導入済み(オーストラリア、ブルネイ、チリ、インドネシア、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、タイ、ベトナム)。未導入の国・地域へもバーチャルABTCで渡航できます。
- 手持ちのプラスチックABTCからバーチャルABTCへの切替は無料です。
メリット
東南アジアを行き来しているとパスポートがあっという間にスタンプでいっぱいになっていきます。カンボジアなど、パスポート一面にビザが大きく貼られる国もあります。そうなるとあっという間にパスポートのページがなくなります。。
専用レーンを使用できるのは大きなメリットです。東南アジアは空港周りの渋滞がひどく、万全な計画をしたつもりでも空港にぎりぎりに到着ということがあります。このような時に出入国手続きの長い列に当たってしまうともう絶望的です。
これもメリットとなるかもしれません。
国によっては「一年に○回までは無料のビザで入国できますが、それ以上多くなるとお金が発生します」という国もあります。その費用を抑えることができます。
バーチャル化により、物理カードの携帯・紛失リスクがなくなりました。パスポートとスマホがあれば完結します。
デメリット
国によってはABTCで滞在できる日数が、通常の観光入国で滞在できる日数より少ないことがあります。例としてマレーシアは観光ならMax90日ですが、筆者が取得した当時の確認ではABTCだと60日でした。
また、バーチャルABTCの渡航目的は「収入・報酬を伴わない短期商用活動(商談、業務連絡、市場調査、投資のための契約締結、納品後の無償アフターサービス等)」に限定されています。観光目的での使用は想定されておらず、目的外利用が判明するとABTCの失効や、渡航先の法令による処罰の対象になり得るので注意してください。収入を伴う活動には別途就労ビザが必要です。
【2026年版】申請方法~オンライン完全移行~
2024年4月1日から、申請はオンラインに完全移行しました(郵送申請は廃止)。外務省のオンライン申請システムから申請します。
- 新規交付手数料: 13,000円(申請後に手数料納付書を印刷し、収入印紙を貼付して外務省ABTC班へ郵送。納付書の署名がABTCに転記されます)※筆者が取得した当時は13,100円でした。
- 旅券番号の変更による再交付: 8,000円
- プラスチックABTCからバーチャルABTCへの切替: 無料
一般の申請者の必要書類(添付データ)は以下のとおりです。
- 顔写真(JPG・縦横比4:3・撮影から6か月以内)
- 旅券の写し(顔写真ページ・鮮明なもの)
- 在職証明書(発行から6か月以内。代表者でも提出が必要)
- 所属企業等の登記事項証明書(発行から6か月以内)
- 貿易・海外投資の実績を示す文書(決算書・損益計算書の関係部分の写し等。規模は問われません)
- 業務内容に関する資料(会社案内等。自社ウェブサイトに掲載があればURL入力で提出免除)
所属企業に1年以内の新規交付申請歴がある場合、AEO事業者、経団連・日本商工会議所・経済同友会・関西経済連合会の会員企業に所属する場合は、提出書類が一部免除されます。個人事業主も申請可能です(筆者取得当時は在職証明書と確定申告書控え等で対応できました)。
有効期間は原則交付から5年間ですが、旅券の残存有効期間が5年未満の場合は旅券の有効期限までとなります。有効期限間近の旅券での申請は、他国・地域の審査で不承認になる場合があるため控えたほうがよいです。
体験談①: 署名は「まねされにくいサイン」がおすすめ
申請時の署名はパスポートと同じ署名を使います。余談ですが、日本人は自分の名前をそのまま漢字で署名(サイン)としている方が多いかと思います。しかしマレーシアではそれは得策ではないかもしれません。欧米では漢字のサインはまねされにくいですが、マレーシアでは漢字を書ける人が多いからです。実際サインをまねされたという事例を聞いたことがあります。野球選手のようなかっこいいサインは単なるかっこつけではありません。自己防衛手段の一つとして採用を検討されるのも一手かと思います。
体験談②: 証明写真はアプリで格安に
顔写真は、以前は写真館や証明写真ボックスで撮影していたのですが、リクルートが出している公式アプリで自分のスマホから証明写真データを生成できるものを発見しました。
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プラスチックカード時代はこのデータを印刷屋やコンビニで印刷して郵送していましたが、現在はオンライン申請で顔写真をJPGデータのままアップロードする方式のため、アプリで作ったデータがそのまま使えて更に便利になりました。
実際にABTC許可が下りるまで(筆者の体験)
申請後は、各国・地域政府による事前審査の状況をオンラインで確認できます。日本以外でまずABTCの許可が降りたのはチリでした。日本の許可が下りた後、即発行されたので日本の許可が出た時点で自動的に許可される仕組みになっているのでしょうか?日本の信頼度高しです。

2日後フィリピンの許可が出ました。

その後どんどん追加されていきます。


すべての国から発行されたのはおおよそ6か月後でした。筆者のときはベトナムとロシアが発行に時間がかかりました。ABTCは事前審査で承認された国・地域のみで効力を発揮します。
まとめ
メリットが多いもののあまり知られていないABTC。バーチャル化とオンライン申請への移行で、取得も利用も以前よりずっと手軽になりました。会社の経費で申請費用が出る企業も多いと思うので、APEC域内への出張が多い方は取得を検討する価値があります。なお、パスポートを更新(旅券番号が変更)するとABTCの再交付手続き(8,000円)が必要になる点は引き続き気を付けてください。




コメント
本稿のデメリットの欄に「マレーシアは観光ビザはMax90日ですが、ABTCだと60日のようです。」とありますが、公式サイトの表のマレーシアの欄には90日と表記されています。
https://www.apec.org/docs/default-source/groups/abtc/abtc-economy-information-table.pdf
また本稿のメリットの欄に「ビザランの疑いがなくなる」とありますが、
公式サイトの表の最下部の脚注によると、180日という表記があります。これはABTCを使っても180日ルールが適用されるということになりますか。マレーシアで年間180日を超えて再入国をした際に、入国を拒否される可能性があるということになりますでしょうか。