高級品に最大10%の課税、サービス業にも拡大。中間層の生活はどう変わる?
「また税金が上がるの?」
最近こんな声をよく聞きます。たしかにその通り。でも、今回の変更は“上がる”というより、“変わる”という表現の方が近いかもしれません。
2025年7月1日から、マレーシアでは物品・サービス税(SST)の制度が大きく見直されます。
この税制改正、なぜ行われるのか。どんなものが新たに課税対象になるのか。そして私たちの生活には、どんな影響があるのでしょうか?
この記事では、今わかっていることをわかりやすく、そしてできるだけ「生活者目線」でまとめました。
「贅沢品に税をかけ、生活必需品は守る」――政府の方針
今回のSST改正の背景には、国の財政事情があります。
社会保障、医療、教育、インフラ整備といった公共サービスを持続的に支えるには、新たな財源が必要――それが大きな理由のひとつ。
でも、すべてのモノやサービスに一律で税金をかけるわけではありません。
政府は、「生活に必要なもの」には手をつけず、「贅沢品や高額サービス」にのみ、新たな税を課す方針です。
具体的に、何が課税対象になるのか?
◼︎ 新たに5%課税されるもの
ちょっとした贅沢品や高級素材が中心です。
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サーモン、キングクラブ、キャビア、トリュフなどの高級食材
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チェリーやブルーベリー、キウイなどの輸入果物
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絹のスカーフやシャツといった高級繊維製品
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アンティーク家具や装飾性の高い輸入家具
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宝飾品、アート作品、嗜好性の高い装飾品
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特定の産業用機械(対象業種あり)
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レーシングバイク、ゴルフクラブセットなどの趣味用品
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骨董品や模型など、収集用の高額品
◼︎ 10%の税がかかるもの
「これはさすがに贅沢だろう」と判断されるアイテムたちです。
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レース用の高性能バイクやスポーツカー
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プロ仕様の高級カメラや望遠鏡(業務用を除く)
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限定アート、収集目的の宝飾品やオブジェ
サービス分野にも、税の波が
今回の改正では、“モノ”だけでなく、“サービス”にも変化が及びます。
新たに8%のサービス税が課税される分野は、以下の通り:
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建設業(建築請負など、ただしB2B取引は除外の可能性あり)
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商業物件のレンタル・リース(住宅は非課税)
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美容院、ネイルサロン、スパなどの美容系サービス
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私立クリニック、専門歯科などの民間医療(高額施術が中心)
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年間6万リンギットを超える授業料の私立教育(インター校など)
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給与処理や資産管理といった一部の金融系サービス
生活必需品は、これまで通り非課税のまま
正直、この点には少しホッとしました。
以下のようなものは、これまで通りSSTの課税対象外(0%)で据え置かれます:
◼︎ 食料品
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お米、小麦粉、パン、卵、牛乳、パーム油
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ジャガイモ、玉ねぎ、キャベツなどの主要野菜
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パパイヤ、バナナ、リンゴなどの一般果物
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地場の魚やエビ、鶏肉や牛肉(未加工)
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ビーフン、テンペ、トウフ、乾麺、米粉などの加工品
◼︎ 医療・衛生品
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処方薬、解熱剤、抗生物質などの医薬品
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おむつや生理用品、消毒液などの衛生用品
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車椅子や血圧計といった基本的な医療器具
◼︎ 公共・住居関連
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住宅の賃貸や購入
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バスや鉄道などの公共交通機関
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一定使用量までの水道・電気料金
業界と市民の声は、まだ交差している
建設業界からは、「現場コストが増えれば工期に響く」という切実な声も。
私立教育の現場では、「授業料基準があるとはいえ、影響が出る家庭もある」と懸念の声が出ています。
市民の間でも、「ドバイ並みに稼いでるわけじゃないのに」というSNSの投稿に、共感する声が多く集まりました。
とはいえ、政府は「中〜高所得層を中心に課税」「国民の生活に影響が出ない範囲で」と説明を繰り返しており、課税収入は医療・教育・公共インフラに再投資される予定です。
いま私たちにできること
税制は変わっても、日々の生活は続きます。
だからこそ、変化を「不満」で終わらせるのではなく、「準備」に変えていくことが大切なのかもしれません。
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よく買う食品や日用品が非課税対象かどうかを確認する
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影響を受けそうなサービスの利用予定を整理する
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もし個人事業主やフリーランスなら、顧問税理士と相談して対応を検討する
日常を守るために、少しだけ目線を上げて「税の仕組み」を知っておく。
それだけでも、これからの変化を冷静に受け止めることができると思います。
まとめ
税制が変わると、どうしても「暮らしにどんな影響があるんだろう」と身構えてしまいます。
実際、今回のSST改正で、一部の品目やサービスは確実に値段が上がる見込みです。
なかには、「これ、今のうちに買っておいた方がいいかも」と思うものも出てくるかもしれません。
たとえば、トリュフや高級フルーツのような贅沢品だけでなく、
業務用の道具や家具、美容系のサービスなども対象になるなら、
「まとめて仕入れる」「価格改定前に施術を受ける」「別の選択肢を検討する」など、
ちょっとした対策で支出を抑えることもできそうです。
また、これを機に、自分が日々どんなものにお金を使っているのかを見直すのもよい機会です。
何が本当に必要で、何が“なんとなく続けている支出”なのか。
そうした家計の棚卸しをするだけでも、無理のない形で対応できる可能性は広がります。
制度の変更にすぐに慣れるのは難しいこともあります。
でも、知っておくことで、備えることができる。
そして備えがあれば、不安も少し軽くなります。
今回のSSTの見直しが、私たちの暮らしを大きく揺らすものにならないように、
それぞれの生活に合ったかたちで、少しずつできることから始めていけたらと思います。
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