【実録】東南アジア不法就労者~現代版奴隷ができるまで~

先週より、マレーシア当局が不法移民・不法就労者排除キャンペーンを行っています。

取り締まりにより不法移民が多く就労している現場は混乱しています。

不法移民は建築現場・レストラン・工場などで就労している場合が多いですが、今回の一斉摘発を受けて、多くの労働者が摘発を恐れて出勤を拒否し、現場が止まるケースが相次いでいます。

マレーシアではたびたびあることですが、レストランが突然営業停止、工場が突然閉鎖になることがあります。

マレーシアの様々な分野のひずみがここに現れてきています。

マレーシア社会は現代版奴隷に依存しているのです。

現代版奴隷の制作過程を見ていきましょう。

 

労働者不足

2017年のマレーシアでは失業率3.35%という統計情報があります。大量の外国人を入れていて、実質労働者の2人に1人が外国人とまで言われているマレーシアにおいてはこの数字は驚異的です。実質の超完全雇用形態が出来上がっており、人手不足が顕著なのです。

そのためマレーシア人は仕事をえり好みできます。辞めてもまた次の仕事に就けばよいわけです。日本でいうところの3Kの職種はマレーシア人には圧倒的に人気がなく、外国人労働者に任せておけばいいものという風潮があります。

実際、工事現場・レストラン・工場で働いている人々のほとんどは外国人労働者です。

そのためマレーシア人の間で技術者はなかなか育ちません。国も当然これを危惧しているわけですが、それより前に国のプロジェクトの多くを外国人労働者が下請けとして担っているため、外国人労働者を一網打尽にするわけにはいきません。

マレーシアには外国人労働者に対する需要が常にあるわけです。

需要があるところには供給が発生します。しかし合法的な供給が追い付いていません。そのため特別な供給が発生します。

 

悪徳エージェント

外国人労働者を紹介する多くの仲介エージェントがマレーシアには存在しています。その中には労働者から搾取するシステムを構築しているエージェントが存在します。

実際にある例ですが、エージェントはインドネシアやミャンマーなどの失業率の高い周辺諸国から労働者の募集をかけます。その際、

「現地ではビザをあっせんし有効な労働ビザを発給します、マレーシアは安定的に仕事があり高給で家族にも仕送りができます」

などとアピールするわけです。そして労働者は紹介料をエージェントに払ってこのプログラムに参加するわけです。

この時点でエージェントは当然利益を出します。

さらにマレーシアの人材紹介先企業に対しては、人材を紹介してビザ申請を代行するからと、紹介料+ビザ申請費を請求します。

ここでもエージェントは利益を出します。

そして労働者をマレーシアに観光ビザで入国させます。入国後、労働者からパスポートを没収  回収します。

就業ビザの申請などはしません。

そのまま労働者は紹介先の企業に就職させられます。

そして紹介を受けた企業はその労働者が違法労働者だと認識していない場合も多々あります。

ここまでの流れでおよそ3か月の期間をエージェントは使います。3か月という期間を稼ぐのがポイントで、労働者の観光ビザ有効期限3か月が切れるのを待ちます。

 

 

そして労働者はそのタイミングでこのような口頭説明を受けます。

契約期間は2年。その期間の給料は契約期間が満了したら払います。その間の生活費は実費自己負担です。

つまり働いている間は、労働者の側には1銭も入ってきません。むしろ食事代が持ち出しです。(あるいは食事代のみ支給の場合もあります)

また口頭約束であることに注目してください。書面にしないため、何年何月何日に、どのような約束をした証拠は全く残らないのです。したがって2年の契約期間を3年・5年・10年とすることはいとも簡単にできるのです。

もちろん労働者はビザの支給がなく、このような条件を提示された時点で、騙されたことに気づくわけですが、それまでに多額の人材派遣プログラム参加料を支払っているわけです。

少しでもかかった経費を回収してから本国に戻ろうとします。しかしそれができないのです

次のことを忘れているからです。

 

汚職・賄賂

エージェントは管轄の警察に事実を見逃してもらうよう取り計らっています。そのためエージェントが手配した労働者用宿泊所には立ち入り検査がありません。

しかし買い物、食事などのためにそこから離れた労働者は別です。もし警察に見つかるようなことがあればIDを要求され、違法滞在者と分かればすかさず、見逃すための「手数料」要求されます。

労働者はお金を全く貯めることができません。

 

さらに違法滞在者は自由に出国はできません。違法滞在に対する多額の罰金がマレーシア当局から科されます。

そのため最低でも違法滞在に対する罰金をまず稼がなくてはなりません。

 

ここにおいて、働けど働けど全くお金は貯まらない現代版の奴隷が完成するわけです。

 

 

警察も汚職の排除を進めようと取り組みを続けています。ペナンでは賄賂を拒否して不法移民を摘発した警察官が、内部で表彰されました。

それらの不法移民を載せた運転手(恐らくエージェント)から賄賂としてRM1,000を提示されましたが断ったようです。これは月給がRM2,000ほどしかない警察官としてはかなりの額です。

When police constable Muhammad Norzulkhairee Md Akhir, 27, stopped a car in Tanjung Bungah here, he saw four men suspected to be illegal immigrants inside.

The driver of the car offered him a bribe of RM1,000 – more than half his monthly salary.

Muhammad Norzulkhairee was not one to be tempted. He arrested the man.

【出典: The Star Online http://www.thestar.com.my/news/nation/2017/05/18/cop-who-turned-down-rm1000-bribe-rewarded/#aBXyDTvLc3HVOmbK.99】

まとめ

私たち日本人はマレーシアのインフラ・外食・製品を日本からすると破格の値段で楽しむことができます。しかしこのマレーシア社会の根本を支えているのはある意味、彼ら外国人不法就労者です。

彼らがいなければより高い賃金でマレーシア人を雇用する必要性が生じます。その価格は当然私たちの受けるサービス・製品に跳ね返ってくるわけです。

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