【2026年版】マレーシアの川で魚は捕れるのか|キノボリウオ・オスカーと、外来魚問題のいま

「マレーシアの川で魚を捕まえてもいいんですか」「捕った魚を、そのまま家の水槽で飼えますか」

日本で川に入って魚をすくった経験のある方から、こうした質問をいただくことが増えました。

日本の感覚のままマレーシアの水辺に立つと、面食らいます。用水路のような濁った流れに大きな魚が悠々と泳ぎ、熱帯魚店では日本のメダカと同じ値段でグッピーが売られている。一方で川の魚の顔ぶれは、この30年で大きく入れ替わりました。水産局の長官が2024年10月に、クランバレーの河川の8割以上に外来魚が定着していると述べたほどです。何が在来で何がそうでないのか、外から来た人間には見分けがつかないのが現実です。

この記事では、実際に近所の川で採った2種類の魚の生態と値段、2026年時点のマレーシアの外来魚問題と守るべきルール、そして日本で同じことをするときに関わってくる法律までを紹介します。

用水路のような川にもいる魚、PUYU(キノボリウオ)

最初に網に入ったのが、この魚でした。とにかく生命力が強い。採取した場所の水質は、お世辞にもきれいとは言えないところです。それでも平気な顔をして泳いでいます。

大きな目を持っていて、正面から見ると少し笑っているような顔をしています。観察しているとじっとしている時間が長く、個人的にはかなり愛着の湧く魚です。

ひれがしっかりしていて、空気呼吸ができます。えらぶたの内側に上鰓器官(ラビリンス器官)と呼ばれる迷路状の構造を持ち、口から吸い込んだ空気から直接酸素を取り込めるためです。水が干上がれば、えらぶたのとげを支えにして地面を這い、近くの水場まで自力で移動します。

キノボリウオという名が付いているが、実際は木に登ることはなく、実際には、雨天時などに地面を這い回る程度である。 このような名が付いたのは、鳥に捕まって木の上まで運ばれ、生きているのを目撃した人が、木に登ったと勘違いしたためである。このように地上に進出できるのは、同じ仲間のベタやグラミーと同様に、エラブタの中に上鰓器官(ラビリンス器官)を持ち、これを利用して空気呼吸ができることと、他の仲間と異なり、這い回りやすい体型のためである。

Wikipedia参照

名前に反して木には登りませんが、雨の日に地面を移動する姿は本物です。野生では全長25センチほどになり、水槽では20センチを超えることは多くありません。マレーシアではPUYUと呼ばれ、家を守る魚として飼われることもあるようで、ペットショップの店員なら誰でも知っている魚です。

日本では1匹500円ほどで販売されています。

マレーシアではRM3、日本円で90円ほど。安いですね。完全に地元の魚で、排水溝のような流れにもいます。

東南アジア各国で食用にされており、バングラデシュでは養殖もおこなわれています。汚れた水でも育ち、乾季を越えられる強さが、そのまま養殖向きの資質になっているわけです。

15センチのこの魚は、南米生まれだった(オスカー)

同じ川で捕れたもう1匹が、オスカー(アストロノータス)です。東南アジアでは養殖もされていますが、本来はアマゾン川水系の魚です。日本でいえばブラックバスやブルーギルにあたる立場の魚が、当たり前のように近所の川にいる。実際、ペットショップでも南米原産だと知らない店員がいました。

捕獲した個体は15センチほどでしたが、成魚は全長45センチ、重さ1.6キログラムに達します。寿命も10年ほどと長い魚です。写真では分かりづらいのですが、腹にあるオレンジ色がきれいでした。気性が荒く混泳には向かないとされていますが、この個体に関してはそうは見えませんでした。個体差はありそうです。

成魚は最大で全長45センチメートル、重さ1.6キログラムに達する。

体高は高くやや寸の詰まった体型である。各鰭は大きい。背鰭、尾鰭、尻鰭は分割してはいるが互いにほとんど隙間なく隣接して発達し、後方に向かって大きな扇型を形成する。これらの特徴は高速長距離の遊泳には適さないが、水中で複雑頻繁に姿勢を変えることを可能にしている。

眼はやや大きく、また他のスズキ目中層魚と比べ眼球が眼窩外に突出している。

野生で捕獲された個体は、普通暗い体色をしている。尾びれや背びれのつけ根には鮮やかな橙色で縁取られた黒い目玉模様があり、これは目を狙って襲ってくる水鳥や、生息域の重なるピラニアなどの天敵を欺き、頭部を守るための適応と考えられる。なお、この目玉状の模様(英語ではocelli)が種小名の由来である。また本種は縄張りを主張したり、同種の他個体を威嚇したりするために自らの体色を変えることが出来る。若魚は成魚と違った体色をしており、白色やオレンジ色の縞模様と、頭部の斑点が特徴である。

Wikipedia参照

日本では1500円ほどで販売されているようです。RM10(300円ほど)で買えるマレーシアとは、5倍の開きがあります。

なお、オスカーは観賞魚の中でも侵略リスクが高い種として評価されていますが、マレーシアの野外で定着したという報告はほとんどありません。クランバレーの熱帯魚店を対象にした2020年の調査でも、高リスク種でありながら野外の定着例が乏しい種として扱われています。導入が失敗しているのか、まだ見つかっていないだけなのかは決着していません。「高リスクだが、まだ定着していない」段階の魚を、自分の手で定着させてしまわないこと。ここが飼う側の分かれ目です。

いま本当に川を埋めているのは、別の魚です

2020年から2021年のロックダウン中、スランゴール州バンティンに住むモハマド・ハジク氏が近所の川で釣りを始めました。狙いはパティンやバウンといった在来魚。ところが何度通っても、上がってくるのはプレコ(サッカーマウスキャットフィッシュ、現地名イカン・バンダラヤ=「市役所の魚」)ばかりでした。

2022年後半、仲間とクラン川で網を入れたところ、1回の遠征で200〜400キログラムのプレコが獲れたといいます。この活動は2023年にSPIA(Skuad Pemburu Ikan Asing=外来魚ハンター隊)として正式に登録され、2026年2月時点で登録メンバーは約1,000人。水産局がボートや網を提供し、半島マレーシア各地の川でプレコ、アフリカンキャットフィッシュ、アリゲーターガーを駆除しています。獲った魚は汚染の懸念から食用にはせず、大学と共同で養殖用のペレットに加工され、スランゴール州水産局を通じて登録養殖業者に無償配布されています。

なぜ外来魚が川にいるのか

出発点は、1990年代から2000年代の観賞魚ブームです。プレコはコケや食べ残しを掃除してくれるため、多くの家庭の水槽に入りました。それが大きくなりすぎたとき、あるいは飼い主が趣味に飽きたときに、川へ放されたのです。汚染に強く天敵もいないため、放された魚は爆発的に増えました。水産局は毎年、在来魚の稚魚を放流していますが、外来魚が居座っている限り稚魚に勝ち目はない、というのがSPIA側の見立てです。

出身 マレーシアの川での立場 飼うときの注意
キノボリウオ(PUYU) 在来 ◎ 元からいる魚 飛び出すのでフタは必須
グッピーの仲間 中南米 △ 世界中で野生化済み 増えすぎる。譲り先を先に考える
オスカー 南米 △ 高リスク評価/定着報告は乏しい 45cmになる。大型水槽が前提
プレコ(イカン・バンダラヤ) 南米 × 河川を占拠。駆除対象 大きくなる。絶対に放流しない
アリゲーターガー等 北米ほか × 駆除対象 許可制の対象。事前確認が必要

川で網を入れて「よく捕れる魚」ほど、飼う前に確認が要る魚です。

捕る前・飼う前に確認したい3つのこと

1川で釣る・採るときの許可

マレーシアでは、海面の遊漁について許可制の整備が進んでいますが、川など淡水の遊漁については、この許可の対象外という案内が水産局から出ています。ただし内水面の管理は州ごとの枠組みで動いており、国立公園・州立公園・保護区・タガル制度(サバ州などの村落による河川管理)の区域では、入域料や事前の許可、漁具の制限がかかる場所があります。行き先が決まっているなら、最寄りの県水産事務所に問い合わせるのが確実です。

2許可なしでは飼えない魚がある

マレーシアには「禁止魚(ikan terlarang)」の枠組みがあり、ピラニア、アリゲーターガー、アラパイマなどが対象です。水産局は禁止魚の所有許可という手続きを設けており、販売・展示・所有をするなら申請が要ります。ペナン州の報道では対象は34種、許可なしの場合はRM1,000の罰金または1年以下の禁錮という説明がなされていますが、州や年度で運用が動くため、金額や種のリストは申請前に水産局で確認してください。

3飼えなくなった魚を、川に放さない

クランバレーの河川の8割以上が外来魚に置き換わったのは、悪意ある放流ではなく「大きくなりすぎた」「引っ越すことになった」という善意混じりの一手からでした。飼う前に、飼えなくなったときの引き取り先まで決めておく。これが観賞魚を飼う人が守れる、いちばん効果の大きいルールです。

熱帯魚店ではグッピーの仲間が、日本のメダカのような値段で並んでいます。1匹30円ほど。安いからこそ、増えたあとをどうするかを先に考えておきたいところです。

同じことを日本でやると、法律に触れる魚がいます

日本の川で魚をすくって持ち帰る遊びは、種類によっては現在ははっきり違法です。外来生物法で特定外来生物に指定された魚は、生きたままの飼育・保管・運搬・販売・野外への放出が原則として禁止されており、オオクチバス(ブラックバス)とブルーギルはその代表格です。違反した場合、個人には3年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。

2023年6月からは、アカミミガメ(ミドリガメ)とアメリカザリガニが条件付特定外来生物になりました。この2種については、一般家庭でペットとして飼うこと自体は引き続き認められています。ただし販売や頒布を目的とする飼養には原則として許可が必要で、池や川など野外に放すこと・逃がすことは禁止です。

言い換えれば、日本でもマレーシアでも、守るべき線は同じところに引かれています。買うのも飼うのも自由度は高い。ただし放したときだけは取り返しがつかない、という一点です。

常夏はヒーターいらず。ただし油断できる話でもない

日本で熱帯魚を飼いたかったけれど、水温管理に自信がなくてあきらめていた。そういう方にとって、マレーシアの環境は圧倒的に楽です。年間を通じて気温が高く、ヒーターによる加温がほぼ要りません。器具も減り、維持コストは驚くほど安く上がります。

逆に言えば、高い水温には高い水温の課題があります。水温が上がるほど水に溶ける酸素の量は減るため、エアレーションの重要度は日本より上がります。エアコンの効いた部屋と切った部屋で水温が上下する、停電で一気に条件が変わる、といった揺さぶりもあります。そしてオスカーのように45センチまで育つ魚を飼うなら、水温より先に水槽のサイズと水量が問題になります。加温が要らないぶんの余裕は、水量と濾過に回すのが定石です。

まとめ

はじめは追い回し合っていた2匹ですが、数日で仲良く暮らすようになりました。

近所の川で網を入れれば、在来の強者と南米生まれの魚が同じ場所から上がってくる。それがマレーシアの水辺の現在地です。飼うのは安く、環境も楽。だからこそ、捕る場所のルールを先に確かめ、飼えなくなった魚を川に戻さないという一線だけは守りたいところです。

許可や禁止魚の最新の扱いは、マレーシア水産局(Department of Fisheries Malaysia)の禁止魚所有許可のページで確認できます。外来魚駆除の現場については、SPIAの活動を伝えるMalay Mailの記事が詳しいです。日本側の規制は環境省の外来生物法Q&Aが一次情報になります。

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