建築ビジュアライゼーションの現場では、実物を写真から3Dモデル化する「フォトグラメトリ」が、添景や現況再現の定番手法になっています。2022年12月、Epic GamesとCapturing Reality社は、スマートフォンで撮った写真から3Dモデルを作れる無料アプリ「RealityScan」を発表しました。当時ニュースとして紹介したこのアプリは、その後大きく進化し、2026年9月時点ではデスクトップ版の定番ソフトRealityCaptureまで統合した総合フォトグラメトリツールになっています。この記事では2022年の発表内容を振り返りつつ、2026年9月時点の最新状況(バージョン2.2・AMD GPU対応まで)を1本にまとめます。
2022年12月、RealityScanは何を発表したのか
Epic GamesとCapturing Realityは、RealityScanアプリをiOSで無料公開すると発表しました。スマートフォンで対象物を撮影すると、アプリがクラウド処理で高精度の3Dモデルに変換し、3D共有プラットフォームSketchfabへエクスポートできるというものです。開発元のCapturing Reality社は「すべてのクリエイターが3Dスキャンにアクセスできるようにする」ことを目指すと述べていました。
当時すでにiPhone 12 Pro・iPhone 13 Pro・2020年以降のiPad Proに搭載されたLiDARを使って3Dモデルを作れるアプリはありましたが、RealityScanはiOS16以降のiPhone・iPadであればLiDAR非搭載機種でもカメラだけで精巧な3Dアセットを無料で作成できる点が新しいところでした。使い方はシンプルで、対象物をアプリ内で緑色の点として認識されるまで撮影・アップロードすると、AIが認識して3Dアセット化してくれます。
Capturing Realityはこれ以前、MegascansのキュレーターであるQuixelと共同で、デスクトップアプリRealityCaptureを使った高精度スキャンを手がけてきた会社です。今回のモバイルアプリは、それと同等クオリティの3Dモデルをスマホだけで素早く作れるようにしたものでした。当時は、RealityScanでSketchfabに初めてアップロードすると1年間Sketchfab Proが自動付与される特典もありましたが、これは2022年当時のキャンペーンで、現在は終了しています。
2025年6月、RealityCaptureと統合してRealityScan 2.0に
2021年にEpic GamesがRealityCapture開発元のCapturing Reality社を買収し、2022年にスマホ向けRealityScanを無料公開(それが上記のニュース)。その後Android版も追加され、2025年6月、デスクトップ版RealityCaptureが「RealityScan 2.0」へ改称・統合されました。スマホ版は「RealityScan Mobile」として整理され、スマホで手軽に撮り、デスクトップで高精度に処理するという流れが、同じブランド・同じEpicアカウントで完結するようになっています。
料金面の変化も大きく、モバイルだけでなくデスクトップ版RealityScanも年間総収入100万米ドル未満の個人・企業・学生・教育者・趣味利用者は無料で使えるようになりました(2024年4月の料金改定・2026年9月時点の公式サイトで確認済み)。個人の設計者や中小の設計事務所・工務店・不動産会社であれば、実質無料でプロ用フォトグラメトリ環境が手に入る状況です。超える場合は1席あたり年間1,250米ドルのサブスクリプションになります。
書き出し先については、当時紹介したSketchfabへのアップロード機能は残っていますが、Epicの3Dアセット流通の主軸は2024年開始の統合マーケットプレイスFabへ移りました。この経緯と無料3Dモデルの入手先は無料3Dモデルの入手先ガイドにまとめています。
2026年、AMD GPU対応の2.2まで進化
2.0以降もアップデートは続いています。2025年11月には2.1が公開され、2026年3月の2.1.1ではCOLMAP互換性が強化(FULL_OPENCVカメラモデル対応・エクスポート構造の柔軟化)されました。そして2026年6月には2.2が公開され、従来NVIDIA GPUに限られていた処理がAMD GPU(コンシューマー・ワークステーション両対応)でも可能になり、AMDとNVIDIAを混在させたマシンでも動くようになっています。あわせて、360度カメラの映像をRealityScanで使える形式に変換する無料オンラインツール「Pano2Views」も公開されました。
2026年9月時点のバージョン早見表
RealityScan 2.0(2025年6月・RealityCaptureから改称統合)、2.1(2025年11月)、2.1.1(2026年3月・COLMAP対応強化)、2.2(2026年6月・AMD GPU対応、Pano2Views追加)という順で進化しています。GPU環境やインポート・エクスポート形式にこだわりがある場合は、最新版のリリースノートを確認してから導入するのがおすすめです。
建築ビジュアル実務での使いどころと注意点
- 敷地周辺の現況(擁壁・石垣・樹木・既存建物の一部)をスキャンしてパースの背景・現況再現に使う
- 施主が新居にも残したい家具・調度品をスキャンしてCGへ配置する
- 店舗の什器・商品をスキャンして内装パースの添景にする
一方で苦手分野も明確です。ガラス・鏡面などの反射物、透明なもの、真っ白で均質な面はスキャンが破綻しやすく、撮影時はマスキングテープを貼る・マットスプレーを使うなどの工夫が要ります。またスキャン系モデルはポリゴン・テクスチャが非常に重くなるため、パースに使う際はリトポロジーやデシメートによる軽量化を前提にしてください。文化遺産クラスの大規模スキャンデータはOpen Heritage 3Dの記事、モデルをUnreal Engineで使う流れはSketchUp→Unreal Engineの記事もあわせてどうぞ。
まとめ
2022年に無料公開されたスマホ用スキャンアプリは、4年足らずでデスクトップの定番ソフトを吸収し、GPUの選択肢まで広げた総合ツールへと成長しました。料金面の間口も広く保たれているため、フォトグラメトリを試したことがない方は、まず無料枠で使ってみる価値があります。バージョンアップの動きは今後も続く分野なので、導入時は必ず公式サイトの最新情報を確認してください。


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