Tropicana Uncle事件から学ぶ ― マレーシアの新築物件トラブルと欠陥責任期間(DLP)

ここ数日、マレーシアでみんなの話題をさらったおっさんを紹介します。名前は「Tropicana Uncle」、通称トロピカーナおじさん。購入した物件が全く気に入らず、赤スプレーでバツ印をつけ始めました。これでも気が収まらなかったトロピカーナおじさん、次の瞬間ハンマーを持って登場です。

📋 2019年、KLを揺るがした一本の動画

2019年4月KLCC近くの高級コンドミニアム「Tropicana The Residences」で、内覧に訪れた男性がタイルにひび割れを指摘。事の発端はこの物件のセールスポイントである贅沢な空間を満喫できるはずが、実際に完成物件を訪れるとタイルにヒビ、家具も期待していた基準に到底届いていなかったことでした。

その後男性は赤スプレーで室内の壁や床にバツ印を書き込み、続けてハンマーで家具やタイルを叩き壊す様子を撮影し、SNS上に公開。動画は瞬く間に拡散し、マレーシア国内外のメディアが一斉に報じる騒動となりました。

デベロッパー側の反論物件を開発したTropicana Corporation Berhadは、動画の男性は実際の購入者(女性)本人ではなく代理人であると説明。同社の主張によれば、3月23日の鍵渡し(vacant possession)時点では大理石床の不具合のみが指摘されており、4月10日にTropicana側のスタッフ・施工業者・コンサルタントが現地を訪れ、大理石特有の自然な模様について説明しようとした矢先、男性の態度が攻撃的になり、安全上の懸念から担当者らがその場を離れざるを得なかった、としています。同社はさらに、男性が事前にハンマーを持参していたことを「計画的な行為」であり「金銭を引き出そうとする計画的な試み」だったと主張し、交渉には応じない姿勢を示しました。

※ この一件は当事者双方の言い分が大きく食い違っており、どちらの主張が事実かは第三者には断定できません。ここでは「実際に起きた出来事」として、確認できる双方の言い分をそのまま紹介しています。

📋 この物件はRM2,000,000(約6,000万円)

この物件の値段もそれなりのRM2,000,000(約6,000万円)で、トロピカーナおじさんは相応の仕上がりを期待していたのです。消費者センターに訴えるという手段もありますが、トロピカーナおじさん曰くその時間はない。そのため自分のユニットをショールームにしてビデオを世間に流し、不動産の実態を世間に知らしめるとのことでした。実際、この一件は「新築の高級物件でも施工品質のトラブルは起こり得る」という話題としてマレーシアの不動産業界内でも広く議論を呼びました。

📋 2026年時点で知っておきたい、正規のトラブル解決手段

ハンマーを持ち出す前に、マレーシアには正規の解決手段が用意されています。住宅開発規制法(Housing Development (Control and Licensing) Act 1966、通称HDA)の対象となる物件であれば、鍵渡し(vacant possession)から24ヶ月間の「欠陥責任期間(Defect Liability Period)」が設けられており、この期間内であればデベロッパーは自己負担で不具合を修繕する義務を負います。書面で不具合を通知すれば、デベロッパーは通常30日以内に対応することが求められます。

デベロッパーが対応しない、あるいは対応が不十分な場合は、住宅購入者審判所(Tribunal for Homebuyer Claims、通称TTPR)に申し立てることができます。弁護士を立てる必要がなく、費用も比較的抑えられる制度で、国籍を問わずHDA対象物件であれば外国人購入者でも利用できます。申し立ては、デベロッパーが修繕通知に応じなかった時点などから12ヶ月以内に行う必要がある点には注意が必要です。

📋 まとめ

トロピカーナおじさんの一件は、感情的なインパクトの強さで一世を風靡しましたが、実際に新築物件の欠陥に直面した場合は、まず書面での記録・写真撮影・デベロッパーへの正式な通知を行い、それでも解決しない場合はTTPRという公的な仕組みに頼るのが、時間的にも費用的にも現実的な選択肢です。マレーシアで不動産の売買・賃貸に関わる立場から見ても、この一件は「感情のはけ口としての破壊」ではなく「制度を使った解決」の重要性を改めて示すエピソードとして記憶しておく価値があります。

補足: HDAはあくまで住宅開発(Housing Development)に分類される物件が対象で、商業用不動産(オフィス・商業テナント区画など)は原則として別の枠組みで扱われます。テナント契約・売買契約を結ぶ際は、対象物件がどの法制度の下にあるのか、契約書のどの条項が欠陥・修繕責任を定めているのかを事前に確認しておくことが、こうしたトラブルを未然に防ぐ最も確実な方法です。

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