マレーシアで漏電検査・修理手配ー元電気工事士が教えます

感電してみたい!

という人はいないでしょう。

ただ、マレーシアに住んでいると感電してしまったというニュースをよく聞きます。

今回は、「電気なんて怖くない!DIYで修理をやってみよう!!」という方の為に記事を書きますので,是非参考になさってください。

まず漏電とは電気的にどういう意味だったのかをパート①から復習しましょう。

前回,漏電に関して電池と豆電球の例えでお話したのを覚えておられますか?電気の回路というのは必ず輪っか状になっていなければ電球は点灯しませんね。プラス側の配線から電気が流れ,負荷(電球)があり,マイナスの配線より電気が戻っていく,それが電気の基本です。感電するか否かは別にして,人間がいわゆる「配線ケーブル」になってしまったというのが”感電”という意味でした。

 

ではなぜ人間は電池で感電しないのでしょうか?不思議ではないですか?

端的に回答すると理由は人間の「抵抗値」が高いからです。

 

        ?

 

意味が分からない方に別の例えを使ってご説明したいと思います。

電気というものは水によく例えられます。電流=水流,電圧=水圧という訳です。

「抵抗」とはホース先をつまむ力に似ています。蛇口を若干ひねり,ホースを強くつまんでいたら水が出てこないのは想像できるでしょう。

蛇口を更にひねり水“圧”を上げた場合どうなりますか?(水圧を上げるということは結果流れ出る水“流”を上げることにもなります。)指先の力を撥ね退けて水は勢いよく出てきます。

 

 

そう,もうお分かりのように乾電池のような”微”電圧では抵抗が大きすぎて電気の回路が構成されないのです。

ただし家屋に使用されている低電圧110Vに関して言えば話は変わってきます。乾電池に比べて蛇口の栓を大きく開けた状態になります。かなり強く指でつまんでも水が出てきてしまうように,電気は人体を流れて地面へと帰ってゆきます。人間が“配線”となってしまう訳です。

 

ただし私たちが「感電」するかどうかは,付加された電圧値と抵抗値を考慮に入れた数値→つまり電流値を調べる必要があるのです。

 

なので,

電流値の大きさ,感電時間によって体に及ぼす影響が変わってきます。

 

あるサイトでは次のように感電の症状が出ると説明されていました。

5mA→痛みを感じる

10mA→耐えられないほどびりびりくる

20mA→筋肉の硬直が激しく,呼吸も困難な状態で,引き続き流れたら生命に危険を及ぼす

30mA→短時間でも生命が相当危険な状態になる

100mA→致命的な障害を起こす

。(人体の皮膚の乾燥度によりますが,乾燥した状態の接触抵抗1000~5000Ωと言われています。)110Vで乾燥した人体(5000Ω)の場合,22mA流れることになります。

マレーシアの240Vの場合は48mAですので日本より「感電」しやすいですね(笑)

逆に静電気は電圧は超強力ですが,流れる時間は一瞬ですので感電する人はいません。

 

ではどのように感電の危険を防げますか?

皆さんは家電を買った時についているアース線というものを覚えているでしょうか?大抵, 緑色でウォシュレットや洗濯機についてくるものです。

        アースは必ず施工しなさい

とは必ず取り扱い説明書に載せられています。なぜそれほど強調されるのでしょうか?
アースを金属部(パイプ等)につないでいるかつないでいないかの違いは以下の通りです。

アースがない場合
電柱(変圧機)→コンセント→洗濯機漏電人体地中電柱
アースがある場合
電柱(変圧器)→コンセント→洗濯機漏電アース→パイプ→地中電柱

 

水が低い土地に必ず流れていくように,電気も「抵抗」の低い方へ必ず流がれます。

アースがない場合,あふれ出している電気の逃げ道がないために人体のような絶縁抵抗の高い場所も頑張って電気は通ってもとの場所(電柱)に帰ろうとします。

もしアースがあれば人体や床などの比較的高い絶縁部分をわざわざ通る必要がなくなる訳です。電気もできるだけ楽をしたい怠け者なのです(笑)カラスが高圧電線の上にとまっていても感電しないのもその法則のお陰です。

高い電圧があれば高い抵抗を簡単に弾き飛ばせるという様子は,空気を例に取ると分かりやすいです。空気はかなり高い抵抗値を持った絶縁物質です。しかし,200万~10億ボルト(20万アンペア)とも言われる電気が溜まると何が起こりますか?

雷です。

帰り道を失った電気は空気を切り裂き,地中に戻って行く様子をマレーシアではいつも観察できるわけです。電気が人間を“配線”にしてしまうのがいかにたやすいことなのか理解できると思います。

最後にそんな漏電に対処する方法,そして絶縁を確実にする予防点検の方法をご説明します。

対処する方法は2通りあります。

①特別な工具無しで漏電箇所を特定する方法

この方法は電気工事の道具が必要なく判別できます。ただし,この方法は既に漏電済の場合=どこかから既に漏電が発生している場合にのみ使えますので、とても危険な状態です。。心してDIYしてください。

修繕ステップ

①主幹漏電ブレーカーをまずOFFにします

②子ブレーカーも全てOFFにします

③電気器具の電源を全てスイッチをONの状態にします

④主幹ブレーカーをONにし,その後,子ブレーカーを一つずつONにしてゆきます

この際,主幹ブレーカーが落ちたらその系統のどこかに何かしらの問題が発生しているということになります。

⑤今度はそのブレーカーが落ちているときに使えないエリアを探します。

⑥見つけたらそのエリアの全ての電気器具をコンセントから外します。

⑦ブレーカーを上げてみます。

⑧ブレーカーが落ちない場合→⑥で外した電気器具に何かしらの原因があるということです。ひとつずつコンセントに差しながらブレーカーが落ちる器具を探します。問題の器具が見つかれば,それを買い替えれば修繕完了です。

ブレーカーが落ちる場合可能性として考えられるのはスイッチ,コンセント,配線などの据付器具が原因です。よって焦げや変形している箇所,器具がないか今一度確認し,もしあった場合には交換します。これらを行うのは電気工事士の資格を持った人にお願いしましょう。

⑨交換してもブレーカーが落ちる症状がある場合は更に奥の配線器具か,壁内の配線の為,電気専門業者に依頼しましょう。費用はかなり掛かることを覚悟してください。業者が来るまで,漏電している系統のブレーカーは下げたままにしておきましょう。 

②特別な工具を使って漏電箇所を特定する方法

電気工事士は普通,絶縁抵抗計という機器を用いて屋内配線をチェックします。これは日本では竣工検査の時にも各都道府県の電力会社から義務付けられている検査です。

絶縁抵抗計とは高圧の電圧を片側から付加することで電気の漏れが分かるというものになります。

前述した水で例えるならば,高水圧を配管に掛けてパイプの水漏れを探すものです。この検査機械を用いればコンセントに接続している機器を含め全ての絶縁の可否を調べることが可能になります。前述の方法で漏電検査を行うのは危険が伴う上,漏れ電流が大きくなくては分かりませんが,この抵抗器を使った方法は電気の漏れが少なくても調査することが可能になります。

機器自体の使い方は簡単です。ですが高価な買い物になりますので普通は電気工事士に依頼します。

印加電圧は100Vであれば125V,200Vなら250Vを使うのがベターです。電圧を加えたら目盛りが0であれば絶縁が全くない状態(=漏電確定),∞の場合は良好な絶縁が取れているということになります。

検査方法(この説明はある程度の電気の知識がある方向けです)

①主幹ブレーカーをOFFにします。このとき子ブレーカーは全てONです

②主幹ブレーカーの2次側を短絡させます。スイッチ全てON,負荷のスイッチも全てONにします

③絶縁抵抗器のクリップ側をアースの線へ,コテ側を主幹ブレーカーの2次側に触れて,電圧を負荷します。

④もし計測器が∞を示しているのであれば絶縁は良好です。

もし下記のような結果が出てしまった場合はどこかの回路で漏電があります。

 

⑤数値に何か問題がある場合は各子ブレーカーで①~④を行い,どの回路に漏電が発生しているのかを探る作業を始めます。

下記が先日とある家で漏電検査をした時の接続図です。

図を見て頂けるとお分かりの通りブレーカーの2次側の配線を取り外して黒のターミナルと接続しているのがお分かりですか?

検査の仕方は下記の図になります。ワニ口クリップをアースターミナル,こて側を短絡した線に繋いでいます。これで抵抗値を測定する訳です。

∞にならない系統を見つけます。

⑥問題になっている子ブレーカーの系統を発見したら,その系統以外の系統を全てONにし,どのコンセント,どの負荷に電気が来ていないかを確認します。ライトも全て点灯してみて確認すると良いでしょう。

まず疑わなければいけないのは電気製品(負荷)からの漏れです。というのは家屋の配線はそんな簡単に傷むものではなく漏電する可能性も低いからです。それをチェックする為に行うのが,疑われている回路の負荷を全てコンセントから外し,メガーで調査してみることです。このときもやはり対地電圧を測定します。(N相とL相は短絡。)結果として∞がでていれば家電からの漏電は決定です。

 ⑦家電を全てコンセントから外したのにメガー(絶縁抵抗器)の値が∞ではない場合は,次に配線器具からの漏電を疑います。

漏電している系統内にあるコンセントとライトを全て取り外しましょう。配線器具の中に溶けや剥がれ,劣化が認められれば器具の交換をしてください。

⑧それでも値が∞にならない場合は配線の問題ということになります。業者に依頼して該当の配線の新規敷設を行ってください。マレーシアの場合は壁面がコンクリートの場合も多い為,場合によっては「はつり」作業が入るため大がかりになる可能性があります。

家電からの漏電を探る方法(おまけ)

通常あまり実施しない検査になりますが,家電からの漏れを測定する方法もやはりこれもメガー(絶縁抵抗器)で当たるのが望ましいです。

測定方法としてはコンセントプラグの両方に電圧を印加し,他方のワニ口プラグを家電筐体の金属部分に当てます。∞になれば絶縁が取れている証拠ですので問題ありません。(注意;電圧を通常使用している電圧より負荷しない。100Vコンセントで使用しているのであれば125Vまで負荷する。)

 

 付録

上記では対地間絶縁のご説明をしましたが,「線間絶縁」を確認する方法も別のサイト等では説明されています。ただ,「線間」の確認は通常電気工事においては行ないません。ケーブルが古くなってきて樹脂部に亀裂が入り所ショートする可能性があることを疑うのであればする価値はあるかもしれませんが。。通常,短絡の場合はブレーカーが動作するのでこの検査がそこまで有名ではないのかもしれません。

この線間絶縁をどうしてもしたいという方,1点ご注意戴きたい点があります。線同士で電位差を出すために,負荷を接続した状態で測定すると製品の設計で想定していない大きさの圧が掛かる為機器は故障する可能性があります。なので線間絶縁を測定する場合は負荷を必ず外しましょう。

 

まとめ (電気工事依頼の方法)

如何でしたか?ここまで完読できている方は少ないとは思いますが,読んで頂きありがとうございました。今回の記事はかなり細かな点まで触れました。特に電気の初心者の方には喜んで頂けると幸いです。

マレーシアに在住の方で修理を頼みたいという方がいれば弊社KOKONATSでも対応可能で御座います。住所と症状を併記の上、弊社の「お問い合わせ」からご連絡を頂ければと思います。

コメント

  1. mit より:

    この度は我が家の不具合について問い合わせをしたところ、とても丁寧に回答していただきありがとうございました。ネットで検索した時にここのサイトの情報が役立つものばかりで、今回の電気関係の不具合では元電気工の方がマレーシアにいると分かっただけでもほっとしました。また相談した際にちょっとの内容でいろいろ分かってもらえることもマレーシア生活経験者ならではと思います。まだ我が家の件は解決していませんが、また何かあればご相談等させて頂ければありがたいです。