たとえば、こんな食い違いがあり得ます。
「3階以上の外壁は、窓だけのすっきりした面にしてください。」
「でも、図面には、バルコニー付きの大きな開口があるんだよな。」
※アイキャッチ画像は解説用のイメージで、実際の制作事例ではありません。
外観パースでは、道路や通路に面した外壁面にどんな窓やバルコニーが見えるかが、建物の表情を決めます。一方、建築基準法施行令には、3階以上の階に「非常用の進入口」を設けることを求める規定があり、設ける場合は、開口の寸法やバルコニー、赤色の表示などが定められています。
非常用の進入口を設けるかどうかや、どの窓がそれに当たるかは、設計で決まります。パースの依頼文に何も書かないと、図面にあるバルコニーや開口が省略され、実際の外観と違うパースになるおそれがあります。
この記事では、3階以上の外観パースで確認したい5つのポイントを、e-Gov法令検索の建築基準法施行令第126条の6・第126条の7の内容と、あわせてパース依頼で押さえたい点を整理します。設置の要否や法規への適合の判断は、設計者と確認申請先の領域です。ここでは「パースの依頼文に何を書いておくか」に絞ります。
なお、条文に書かれていることと、筆者の見立てやパース依頼上の助言は、文を分けて書きます。後者は「ここからは筆者の見立てです」と添えて書きます。条文は要旨を言い換えており、実際の規定は必ず原文でご確認ください。
① 高さ31メートル以下の部分の3階以上が、対象になり得る
施行令第126条の6は、建築物の高さ31メートル以下の部分にある3階以上の階には、非常用の進入口を設けなければならないと定めています。なお、不燃性の物品の保管など、火災の発生のおそれの少ない用途の階などは、対象から除かれます。
どの階が対象になるかは、用途や構造によって変わるため、設計者が判断し、確認申請先で確認される領域です。パースの制作側は、これらを判断する立場ではありません。
ここからは筆者の見立てです。3階建て以上の外観パースを依頼するときは、道路や通路に面した外壁面にバルコニーや大きな開口が図面にあるかどうかを、依頼側で確認しておくと、描き漏れを防げます。
② 設けなくてよい場合も、条文に挙げられている
同じ条には、次のような場合は設けなくてよいというただし書きがあります。ひとつは、施行令第129条の13の3に適合するエレベーター(非常用エレベーター)を設置している場合です。もうひとつは、道、または道に通ずる幅員4メートル以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に、一定の大きさの開口を、壁面の長さ10メートル以内ごとに設けている場合です。この開口は、直径1メートル以上の円が内接できるもの、または幅75センチメートル以上かつ高さ1.2メートル以上のもののいずれかで、どちらも格子など屋外からの進入を妨げる構造のないものに限られます。さらに、吹抜きなど国土交通大臣が定める一定規模以上の空間を確保し、そこから容易に各階へ進入できる開放性の高い通路等(大臣が定めた構造方法または大臣認定によるもの)を設けている場合も挙げられています。
ここからは筆者の見立てです。設計によっては、外観に赤い表示のある進入口が見える建物もあれば、進入口を設けず窓の並びだけの建物もあり得ます。どちらになっているかは、図面で決まっている情報です。パースでは、窓の大きさ・位置・格子の有無を、図面どおりに描くのが食い違いを減らしやすい進め方です。
③ 設ける場合は、開口の寸法とバルコニーが定められている
施行令第126条の7は、非常用の進入口の構造を定めています。道、または道に通ずる幅員4メートル以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に設けること、進入口の間隔は40メートル以下であること、幅75センチメートル以上・高さ1.2メートル以上で、下端の床面からの高さが80センチメートル以下であること、外部から開放または破壊して進入できる構造であること、奥行1メートル以上・長さ4メートル以上のバルコニーを設けること、などです。次の図は、開口の寸法の考え方を示した概念図です。

ここからは筆者の見立てです。非常用の進入口がある外壁面には、バルコニーが付くため、外観の見え方が、窓だけの面と変わります。バルコニーの出と手すりの形は、外観の印象に関わるので、図面どおりに描きます。
④ 赤色灯の標識と赤色の表示を、描くかどうか決めておく
第126条の7は、進入口またはその近くに、外部から見やすい方法で赤色灯の標識を掲示し、非常用の進入口である旨を赤色で表示することを定めています。
ここからは筆者の見立てです。この表示は、外観の小さな要素ですが、赤色なので、パースでは目立つことがあります。実際の建物に設けられる表示であれば、描くかどうか(描く場合は位置と大きさ)を、依頼文で決めておくと食い違いません。表示の文字を読める大きさで描く必要があるかどうかも、あわせて決めておきます。素材や色の決め方は、別記事「建築パースの素材・色の決め方5つの基準」にまとめています。
⑤ 判断は設計者と確認申請先。依頼側は図面の情報を揃える
非常用の進入口が必要かどうか、どの開口がそれに当たるかは、設計者の検討と、確認申請先での確認に委ねられる領域です。パースの制作側は、これらを判断する立場ではありません。
ここからは筆者の見立てです。依頼側にできるのは、設計で確定した情報を、図面と依頼文で伝えることです。次の表のように、確認することと、パース依頼で伝えることを対応させておくと、制作側が迷いません。
| 確認すること | 根拠(資料) | パース依頼で伝えること |
|---|---|---|
| 3階以上の道路や通路に面した外壁面の開口 | 施行令第126条の6 | 窓の大きさ・位置・格子の有無 |
| 進入口の寸法とバルコニー | 施行令第126条の7 | バルコニーの出と手すりの形 |
| 赤色灯の標識・赤色の表示 | 施行令第126条の7 | 表示を描くか、位置と大きさ |
ここからは筆者の見立てです。依頼文に書く情報は、(1)窓まわり(大きさ・位置・格子の有無)、(2)バルコニー(出と手すりの形)、(3)赤色の表示を描くかどうか、の3点です。必要な資料の全体像は、別記事「建築パースに必要な資料と渡し方7項目」にまとめています。
ここからは筆者の見立てです。「外壁はすっきり見せて」という一言は、窓の大きさ・位置・格子の有無を図面どおりにするか、バルコニーの出と手すりの形をどうするか、赤色の表示を描くかどうかの3つに分けて伝えると、制作側に伝わりやすい指示になります。



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