「モデルはこちらで作ってあるので、そのまま読み込んでレンダリングだけお願いできますか」
「送ったファイルを開いてもらったら、なぜか壁が一部消えていると言われた」
設計事務所や工務店が社内でSketchUpやRevitのモデルを作り、レンダリングの部分だけを外部に依頼する進め方は、建築パースの現場では決して珍しくありません。モデリングの工数を圧縮できるうえ、設計変更のたびに図面を渡し直す手間も省けるため、双方にとって合理的な分業です。ただし「モデルを渡せばそのまま絵になる」わけではなく、渡し方ひとつで、そのままレンダリングに入れるか、モデルの手直しから始まって納期がずれ込むかが決まります。
この記事では、3Dモデルを支給していただいてレンダリングを行う場合に、受け渡しの時点で確認しておきたい5つのチェックポイントを紹介します。
① どのファイル形式・バージョンで送るか
3Dモデルの受け渡しにはいくつもの形式があり、それぞれ開ける環境と得意分野が異なります。「開けるかどうか」と「情報がどこまで残るか」は別問題という点が見落とされがちです。
| 形式 | 主な作成ソフト | 開くための環境 | 受け渡し向き |
|---|---|---|---|
| SketchUp(.skp) | SketchUp | SketchUp本体・無料のWeb版 | ◎ 意匠・概算モデル |
| Revit(.rvt) | Revit | Revit本体が基本 | ○ BIM連携案件 |
| Rhino(.3dm) | Rhinoceros | Rhino本体・対応レンダラー多数 | ◎ 自由曲面形状 |
| IFC | BIM系ソフト全般 | BIM対応ソフト・無償ビューアで閲覧可 | ○ ソフト非依存の橋渡し |
| FBX / OBJ | 各種3DCGソフト | ほぼ全てのレンダリングソフト | △ 寸法・部材属性などのBIM情報は落ちる |
最終的にどの形式で受け取るかより、こちらのレンダリングソフトが「無理なく読み込める」形式を先に確認するのが結論です。
形式が同じでも、バージョンの新旧で開けないことがあります。SketchUpは2021年版以降、サポート対象のバージョン同士であれば新旧どちらでも開ける形式に変わりましたが、サポートが終了した古いバージョンで新しいファイルを開こうとすると「新しいバージョンで作成されたファイルです」というエラーで止まります。Revitはさらに厳格で、新しいバージョンで保存したファイルを古いバージョンで開くことはできず、古いファイルを開いた時点で自動的に新しい形式へ変換され元には戻せません。いずれの場合も、送信前にお互いの利用バージョンを伝えておくと二度手間を防げます。
② 単位とスケールは実寸で揃っているか
■ 「なんとなく合っている」が一番危ない
DWG・DXFからのインポートでは、送信側と受信側で単位設定(ミリ単位かメートル単位か)が食い違ったまま読み込まれ、モデル全体が1,000倍・1,000分の1のスケールでずれることがあります。見た目のプロポーションが崩れていなければ気づきにくく、家具や添景を配置した段階で初めて「入らない」「浮いている」と発覚するケースが典型です。受け渡し時に単位と、可能であれば基準寸法(階高や開口幅など)を一つ添えてもらうだけで、この種の事故はほぼ防げます。
③ ジオメトリの状態(面の重複・法線の向き)
設計用に作られたモデルは、意匠検討や数量拾いには十分でも、レンダリング用としては手直しが要ることがあります。代表的なのが、面が二重に重なっている、法線(面の表裏)が反転している、閉じているべき形状に隙間が空いている、といった状態です。これらはレンダリング画面上でチラつき・黒い抜け・影の異常として現れます。意匠検討用のモデルとレンダリング用のモデルでは、求められる精度の種類が違うという前提を共有しておくと、手直しが発生しても「作業のやり直し」ではなく「想定内の工程」として扱えます。
④ テクスチャ・マテリアルはリンク切れしていないか
モデルファイルの中には、外壁材や床材の画像そのものではなく「画像がどこにあるか」という参照パスだけが記録されていることがあります。この参照が送信元のパソコンのフォルダ構成(絶対パス)のままだと、受け取った側の環境では画像が見つからず、初期状態のグレーやピンクの仮テクスチャで表示されてしまいます。モデル本体だけでなく、使用しているテクスチャ画像一式を同じフォルダに入れて渡してもらうのが最も確実な対策です。
⑤ カメラ位置・方位・参考写真の共有
モデルデータそのものが完璧でも、「どこから見た絵が欲しいか」が伝わらなければ的外れなカットになってしまいます。カメラの高さ(目線の想定)、見せたい面、そして敷地の方位(朝夕どちらから光を当てるか)は、モデルファイルの中には入っていない情報です。周辺環境の参考写真や、過去の類似案件の完成イメージを一緒に共有してもらえると、初稿の段階から狙いに近い絵に仕上がります。カメラ位置の決め方については建築パースのカメラ位置と構図の決め方で詳しく整理しています。
逆に言えば、①〜⑤のうち何か一つが欠けていても、致命的な手戻りになるとは限りません。単位のズレは寸法を一つ聞けば直せますし、テクスチャの欠落は差し替えるだけで済みます。問題は、これらの不足が重なった状態で作業を始めてしまい、初稿を見せる段階になって初めて気づくことです。受け渡しの時点で数分の確認を挟むだけで、初稿のやり直しという営業日単位の手戻りを避けられます。
① よくあるつまずき
意匠検討用のモデルをそのまま流用しようとして、非表示にしていたはずのオブジェクトが実は削除されておらずレンダリングに映り込む/古いバージョンのファイルが混在していて最新の変更が反映されていない/添付し忘れたテクスチャ画像を後から個別に送ってもらう往復が発生する、といったことが起こりがちです。
② 事前に伝えておきたいこと
こちらのレンダリングソフトが対応する形式・バージョンは、依頼を受けた段階で先に伝えておくと、送信側も出力形式を選びやすくなります。「とりあえず今使っているファイルをそのまま送ってください」という進め方は、結果的に確認の往復回数を増やしてしまいます。
モデル支給の際にあらかじめいただけると助かる情報
- 使用ソフトとバージョン(SketchUp◯年版、Revit◯年版など)
- 単位設定と基準寸法(階高・開口幅など1か所でよい)
- テクスチャ画像一式(モデルと同じフォルダにまとめて)
- 希望カメラ位置・方位(簡単な図やメモ書きで可)
- 参考イメージ(近い雰囲気の完成事例や周辺写真)
3Dモデルの支給によるレンダリングのみの依頼は、モデリングから一貫して依頼するより工期・費用を抑えられる分業のかたちです。受け渡しの精度が仕上がりと納期を左右することを踏まえたうえで、事前のすり合わせを工程の一部として組み込んでおくと、双方にとって無駄のない進め方になります。
なお、3Dモデルではなく図面から依頼する場合に揃えたい資料は建築パースに必要な資料と渡し方7項目で別途整理しています。
3Dモデルをお持ちの場合の対応は3DCGモデルレンダリングサービス、サービス全体の内容と料金は建築パース・店舗内装CG制作代行にまとめています。
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