【サンプルと違って見える】建築パースの素材・色の決め方5つの基準|違いの正体は光源とモニターにあります
承認したはずの外壁の色が、いざ現地の見本帳で見返すと想像より濃い。
パースで確認したタイルの質感と、後から届いた現物サンプルの質感がどうも一致しない。
建築パースの発注では、こうした食い違いがしばしば起こります。
これは制作側の技量の問題というより、「色」がそもそも見る条件によって変わるものだからです。同じ塗料・同じタイルでも、画面で見るか現物で見るか、どんな光の下で見るかによって、映る色は毎回変わります。ここを発注時に揃えないまま「イメージ通りの色でお願いします」とだけ伝えると、初稿の色は制作側の解釈頼みになり、修正のやり取りが増えるのが現実です。
この記事では、建築パースの素材・色をどう決めて、どう伝えれば行き違いが起きにくいのかを、5つの基準に整理して紹介します。
1. 色が転ぶ最大の要因は「モニター」そのものにある
パースの色を画面上だけで最終承認するのは、実は危うい判断です。モニターは同じ規格(sRGBやRec.709)を名乗っていても、メーカーや個体によって発色の特性が異なり、別々のディスプレイで完全に同じ色を再現するのはほぼ不可能とされています。さらに、iPad・ノートPC・印刷したプレゼン資料という具合に、確認する媒体が変われば、そのたびに同じデータでも見える色は変わります。
つまり「画面で見て問題なかった色」は、あくまで「その画面ではそう見えた色」でしかありません。最終承認をパース1枚の画面表示だけに頼るのではなく、次に紹介する現物サンプルや色番号と必ず突き合わせることが、色の行き違いを防ぐ最初の一歩になります。
2. 同じ色でも、光源が変われば違って見える
色の見え方は、光源が持つ波長の分布によっても変わります。同じ物体でも、太陽光の下と蛍光灯やLEDの下とでは、反射してくる光の成分が異なるため、違う色として映ることがあります。さらに厄介なのは、素材の違う2つのサンプル(たとえば塗料の見本とパースのCG上の質感)が、ある光源の下ではたまたま同じ色に見えても、別の光源の下では違う色として分かれて見えてしまうケースです。この現象は色彩工学で「メタメリズム(条件等色)」と呼ばれ、色彩の解説記事でも取り上げられています。
建築パースでも同じことが起きます。制作側が雰囲気を出すために選んだ夕景の暖色照明の下で確認した外壁の色と、実際の現場が北向きの窓からの自然光にさらされたときの色は、当然一致しません。色を最終判断するときは「どの光の下で見た色か」を必ず添えて伝えるのが鉄則です。現場が主に自然光で照らされるなら昼白色相当、夜間の店舗照明が主体ならその色温度、というように確認する光源環境を先に決めておくと、後からのズレが起きにくくなります。
3. 色は「言葉」ではなく「型番」で伝える
「落ち着いたグレー」「ナチュラルな木目」といった言葉は、伝える側と受け取る側で思い浮かべる色がそれぞれ違います。参考画像やSNSの写真も、撮影時の光源やカメラの発色特性に左右されるため、正確な色の伝達手段としては弱いのが実情です。
| 伝え方 | 向いている場面 | 精度 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 言葉だけ(色名・印象) | イメージの共有段階 | △ 人により解釈が違う | 「思っていた色と違う」の主因になりやすい |
| 参考画像・SNS写真 | 雰囲気の共有 | △ 光源・機材で色が転ぶ | 実物の色とはズレて当然 |
| 現物サンプル | 質感・光沢の最終確認 | ◎ 最も確実 | 確認する光源環境の指定が別途必要 |
| メーカー品番・色見本帳番号 | 発注・仕上げの最終承認 | ◎ 再現性が高い | △ 品番が分からないと使えない |
発注時に伝えるべきは「言葉」ではなく「型番」です。
日本では塗装の分野で、日本塗料工業会が発行する塗料用標準色見本帳が広く使われています。マンセル表色系に基づいた色票番号で色を指定すれば、メーカーや塗装店が変わっても同じ色を再現できる仕組みです。タイルや床材であれば、メーカーのカタログに載っている品番がこれと同じ役割を果たします。パースの色をメーカー品番や色見本帳番号と突き合わせておけば、「画面上の色」と「実際に施工される色」のズレをかなり小さくできます。
4. よくあるつまずき3つ
1. 「見せ場」の照明のまま色を判断してしまう
雰囲気を出すための夕景・暖色照明の1枚は、そのままでは色の最終確認には向きません。色そのものを判断する用途では、昼白色相当の光の下で見た絵を別に用意してもらうのが安全です。
2. テクスチャ画像だけ渡して、実寸を伝えていない
タイルや羽目板の画像データは、3DCGソフト上では貼り付けるサイズを自由に調整できてしまいます。目地の幅や板1枚の実寸を伝えないと、パース上の継ぎ目のピッチが実物と合わず、「思っていたより目地が大きい・小さい」といったズレが起こります。
3. 光沢の指定を「高級感」のような抽象語で済ませる
ツヤの度合いは、艶有り・半艶・艶消しといった等級か、可能であればメーカーが公表している光沢度の数値で伝えるのが確実です。「高級感のある質感で」だけでは、制作側も落としどころを探るしかありません。
逆に言えば、この3つはいずれも「発注時に一言添えておけば起きない」種類の行き違いです。修正のやり取り自体を減らす伝え方は建築パースの修正指示の伝え方5つのコツにもまとめています。
5. 発注時に伝えたい5項目
最後に、素材・色を発注するときに一言添えるだけで初稿の精度が変わる項目をまとめます。すべて揃っていなくても構いません。「型番は未定」と伝わっているだけでも、制作側は確認しながら進められます。
- 1. 型番・色見本帳番号: 分かる範囲でメーカー品番や日塗工番号を共有する。
- 2. 確認する光源環境: 現場は主に自然光か、照明の色温度は暖色系か寒色系か。
- 3. 実寸・目地のピッチ: タイルのサイズ、目地幅、羽目板の見付け寸法など。
- 4. 光沢のグレード: 艶有り・半艶・艶消しのどれに近いか。
- 5. 最終承認の場面: 色の承認は必ず昼白色相当・自然光相当の絵で行う。
この5つが揃っていると、初稿の時点で色と質感のズレはかなり小さくなります。発注前に揃えておきたい資料全般は建築パースに必要な資料と渡し方7項目、時間帯と照明の決め方は内観パースの時間帯と照明の決め方5つの判断軸、カット単価の考え方は建築パースの価格相場と見積りで確認したい5項目で扱っています。
色は、パースの中で最も「見た目通り」に見えて、実は最も条件に左右される要素です。型番と光源環境さえ発注時に共有できていれば、あとは構図や添景の調整に集中できます。



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