「画面では綺麗だったのに、A1のパネルに印刷したら粗くて使えなかった」
「PNGとJPG、どちらで受け取ればいいのか分からない」
建築パースは、完成データを受け取ってから使い道が広がっていくことがよくあります。最初はWebと社内資料用のつもりだったのに、後から展示会のパネルやチラシにも使うことになり、印刷して初めて粗さに気づく、という順番になりがちです。
モニターで見たときの綺麗さは、画像の画素数とモニター側の表示で決まります。一方、印刷したときの細かさは「画素数をどの大きさに引き伸ばすか」で決まります。画面で問題なく見えていても、印刷に必要な画素数が足りているとは限らないのが現実です。
この記事では、建築パースを発注する前に決めておきたい解像度と納品形式の考え方を、5つのポイントに分けて紹介します。
① 印刷の細かさは「画素数」と「印刷サイズ」の組み合わせで決まる
印刷の話でよく出てくる「dpi」は、1インチ(25.4mm)の中に点(画素)がいくつ並ぶかを表す数字です。一般的なフルカラー印刷では、原寸で350dpiが推奨値として案内されることが多くあります。
つまり、必要な画素数は「印刷したい大きさ」から逆算できます。350dpiで紙いっぱいに印刷する場合の目安は次のとおりです。
| 用紙サイズ | 大きさ(mm) | 350dpiで必要な画素数 | 200dpiで必要な画素数 |
|---|---|---|---|
| A4 | 210×297 | 2,894×4,093px | 1,654×2,339px |
| A3 | 297×420 | 4,093×5,787px | 2,339×3,307px |
| A2 | 420×594 | 5,787×8,185px | 3,307×4,677px |
| A1 | 594×841 | 8,185×11,589px | 4,677×6,622px |
A判は1サイズ上がるごとに縦横それぞれ約1.4倍、総画素数では約2倍が必要になります。
② 大判のパネル・ポスターは「見る距離」で必要な解像度が下がる
ポスターや展示パネルのように離れて見る大判の印刷物は、350dpiまで求められないのが一般的です。印刷会社の案内では、200dpi程度でも問題なく印刷できるとされています。
A1を350dpiで作ろうとすると約8,200×11,600px、200dpiなら約4,700×6,600pxで、画素数は3分の1程度に収まります。画素数が大きいほどレンダリングの時間もデータ容量も増えるため、「一番大きく印刷するサイズ」と「どのくらいの距離から見られるか」を先に決めておくことが、納期とコストの両方に効いてきます。逆に言えば、手に取って間近で見るパンフレットやA4資料に載せる予定があるなら、そのサイズでは350dpiを基準に考えるのが安全です。
③ フルHD・4Kの画像で印刷できる大きさの目安
画像の大きさは「フルHD」「4K」といった呼び方で伝えられることも多いため、印刷サイズとの対応を計算しておくと判断が速くなります。
■計算の目安(横長の画像をそのまま印刷した場合の大きさ)
- フルHD(1,920×1,080px):350dpiで約139×78mm。はがきの長辺(148mm)にも届かない大きさです。
- 4K(3,840×2,160px):350dpiで約279×157mm。16:9の横長なので、A4横(297×210mm)に置くと長辺はわずかに、短辺は大きく足りません。200dpiなら約488×274mmで、A3横の長辺(420mm)は超えますが、短辺(297mm)はわずかに足りません。

もうひとつ押さえておきたいのが、解像度は後から上げても鮮明にならないという点です。画像編集ソフトで数値を大きくすることはできますが、元の画像にない細かさが生まれるわけではありません。Web用に書き出した画像を後から大判印刷に使い回すと粗さが出るのはこのためで、印刷用が必要になった場合は、元の3Dデータから大きなサイズで書き出し直すのが基本です。
KOKONATSでは、4K化などのレンダリング品質の変更は、修正の範囲では別途お見積りの対象としています(詳細は修正変更の時の料金設定)。印刷の予定が少しでもあるなら、発注の時点で「最大でどのサイズに印刷するか」を伝えておくと、結果的に作り直しを避けやすくなります。
④ JPG・PNG・PDFは「受け取った後にどう使うか」で選ぶ
納品形式の違いは、画質そのものよりも「受け取った後の使い方」に効いてきます。JPGは写真に向いた非可逆圧縮の形式で、データが軽い代わりに、圧縮の過程で細部の情報が一部失われます。PNGは可逆圧縮で画質を落とさずに保存でき、背景の透過にも対応しています。
| 形式 | 特徴 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| JPG | ○ 軽い / △ 非可逆圧縮 | Webサイト、SNS、メール添付 |
| PNG | ◎ 劣化なし / △ 重い | 画像の加工・合成、資料への貼り込み、保管用の原本 |
| ○ そのまま閲覧・配布しやすい | 複数カットをまとめた確認用・配布用 |
迷ったらPNGで原本を受け取り、用途ごとに軽い形式へ書き出すのが確実です。
KOKONATSの納品形式はJPG・PNG・PDFから選べ、特にご指定がなければPNGでお渡ししています。後から画像を加工する予定がある場合や、印刷会社へ入稿する予定がある場合は、発注時にその旨をお伝えください。
⑤ 印刷するなら「色の変化(RGB→CMYK)」も想定しておく
CGパースは、モニターと同じRGB(光の三原色)の色で書き出されます。一方、一般的な印刷はインクのCMYK(4色)で色を再現するため、印刷会社ではCMYKでの入稿が推奨されることが多く、RGBのまま入稿した場合も印刷会社側でCMYKに変換されます。
このとき注意したいのが、RGBでは表現できてもCMYKでは再現しきれない鮮やかな色があることです。彩度の高い鮮やかな色ほど、変換の過程でくすんで見える傾向があります。植栽の緑や空の青のような鮮やかな色も、この変換で印象が変わることがあります。
■印刷で色を外さないために
大量に刷る前に、印刷会社の色校正やテスト出力で一度確認するのが確実です。印刷会社によっては、RGBの鮮やかさをできるだけ残して出力するオプションを用意しているところもあります。素材や色がモニターとサンプルで違って見える理由は建築パースの素材・色の決め方5つの基準でも解説しています。
発注時に伝えておきたい4項目
- 用途:Web・SNS・社内資料・パンフレット・展示パネルなど、使う予定の場所をすべて。
- 最大の印刷サイズ:一番大きく印刷する予定のサイズ(例:A1パネル)と、見る距離の目安。
- ファイル形式:JPG・PNG・PDFのどれで受け取るか。迷ったらPNG。
- 加工の予定:文字入れ・合成・切り抜きなど、受け取った後に手を加えるかどうか。
解像度と形式は、パースの仕上がりそのものとは別の話に見えますが、発注時に一言伝えておくかどうかで、後からの作り直しの有無が決まります。使い道が決まりきっていなくても、「印刷する可能性がある」と伝えておくだけで判断はずっと楽になります。発注前に揃えておきたい資料は建築パースに必要な資料と渡し方7項目、価格の考え方は建築パースの価格相場と見積りで確認したい5項目にまとめています。
参考にした情報源
印刷に最適な解像度とは?(印刷通販グラフィック)、入稿データは必ずCMYKで作成しないといけませんか(同)、画像ファイルの種類と形式ガイド(MDN Web Docs)。画素数と印刷サイズの対応は、1インチ=25.4mmとして計算した目安です。推奨解像度は印刷会社・印刷方式によって異なるため、入稿先の案内も必ずご確認ください。アイキャッチと本文の画像は解説用のイメージで、実際の制作事例ではありません。



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