【2026年最新】マレーシア賃貸契約(Tenancy Agreement)でよくある3つのトラブル|サインする前に確認したいポイント
「契約書にサインしたのに、退去時にデポジットがほとんど返ってこなかった。」
「トラブルになったとき、日本のような借地借家法はないと聞いて不安になった。」
マレーシアに移住して家を借りようとする人から、こうした声をよく耳にします。
マレーシアには日本の借地借家法のような統一的な賃貸保護制度がまだ整っておらず(2026年時点で「Residential Tenancy Act」は最終ドラフト段階で成立には至っていません)、契約書に書かれた内容がそのまま当事者間のルールになるのが実情です。
この記事では、賃貸契約書(Tenancy Agreement)を結ぶ際によくあるトラブルと、サインする前に確認しておきたいポイントを紹介します。

1. 賃貸契約書(Tenancy Agreement)の基本的な考え方
マレーシアの賃貸契約書はTenancy Agreementと呼ばれ、借り手と貸し手の双方が合意した内容にサインして成立します。おおよそのフォーマットは存在しますが、詳細は双方の交渉次第で決められる部分が多く、すべて交渉の余地があります。この契約書は退去まで保存しておき、貸し手と借り手の間でトラブルが起きたときの参照先になります。
交渉結果をまとめた契約書はフレキシブルなのが長所ですが、交渉力がない側が不平等な契約を気づかずに結んでしまう場合もあるのが実情です。
ローカルのマレーシア人同士の賃貸契約で、こんな例が伝えられています。貸し手が弁護士で契約書を自分で作成し、その経験を活かして借り手に非常に不利な契約書を、それとわからないように作成した。書き方が巧妙だったため借り手は気づかずにサインした。数年後の退去時に借り手にはデポジットが一切返ってこず、トラブルになったが、最初にサインした不利な契約書がネックとなり、デポジットは取り戻せなかった、というものです。同様の話は交渉力の差がある取引で繰り返し語られており、契約書は「フレキシブルだからこそ、内容を自分で読み込む責任も大きい」書類だと考えておくべきでしょう。
2. デポジットのトラブル
マレーシアでは家を借りるときにデポジット(日本でいうところの敷金・礼金)を支払うのが一般的です。内訳はSecurity Deposit(家賃2か月分が目安)とUtility Deposit(家賃0.5〜1か月分が目安)の二つで、退去時に原状回復や未払い公共料金がなければ、通常は退去から30日以内に返金されます。
物件探しからエージェント選び、内覧、価格交渉、契約までの一連の流れは以下の記事にまとめています。

借り手側に不利になりやすいケース
貸し手が理由をつけてデポジットを返さないケースです。貸し手が資金繰りに困っている場合にこの傾向が目立ちます。壁や天井の塗り直しをしなければならないなどの理由をつけてくることが多いですが、次のテナントを迎えるために通常必要となる手入れは、原則として貸し手側の負担です。デポジットから差し引かれる理由にはなりません。ただしこれは、最初にサインした契約書に特記されていない場合に限られます。家を借りる際によく注意して、契約書にサインしなければならない理由はここにあります。
貸し手側に不利になりやすいケース
借り手が契約満了直前の家賃をデポジットと相殺したいと申し出るケースです。借り手が合意すればよいのですが、これは本来のデポジットの意味合いからは外れたやり方です。原則として、デポジットは家賃と相殺できないものとされています。仮に室内が大きく荒らされていて原状回復が必要な場合、貸し手はその資金を回収できなくなってしまうためです。
3. 退去のトラブルと救済手続き
借り手が違法なことをしていた場合、または家賃を長期間滞納していた場合など、貸し手には借り手に出て行ってもらう権利があります。この条項は一般的な賃貸契約書にあらかじめ記載されています。
しかし借り手がそれを拒否した場合はどうでしょうか。法的に正しいことであっても、貸し手は裁判所に行き正式な手続きを踏まなければなりません。仮に法的に全く正しくて裁判所にそのことをアピールしなければならない場合でも、その処理には数か月(おおよそ7か月といわれています)かかり、費用もRM10,000ほど発生するといわれています。時間と費用の両方が大きな負担になるため、そもそも立ち退きの裁判が必要な状況に至らないよう、契約時の確認が重要になります。
トラブルを避けるための実践的なポイント
上記のようなトラブルを避けるためには、契約書サイン前に以下を確認しておくことをおすすめします。
- 1. デポジットの返金条件: 通常の使用による経年劣化と、借り主の過失による損傷の切り分けを契約書に明記してもらうこと。
- 2. 入居時の部屋の状態: 壁のキズ・設備の不具合等を写真で記録し、貸主・借主双方で共有しておくこと。退去時のトラブルの多くは「入居時の状態を証明できない」ことが原因になるため、この記録は非常に重要です。
- 3. Expat Clause(就労ビザ保持者向けの中途解約条項)の要否: 一般的には契約から最初の12か月を経過していることと、雇用主からの転勤・解雇を証明する書類の提出が条件になります。契約期間が2年以上の場合は必ず交渉しておきましょう。
まとめ
仮に法的に全く正しくても、裁判所にアピールしなければならない事態になれば、数か月・RM10,000ほどの負担が発生するといわれています。時間と費用、どちらの面でも大きな痛手です。
この現行のシステムの限界はたびたび話題になっており、政府もメスを入れなければならない分野であると認識しています。2026年時点では、過去のトラブル履歴を貸主・借主双方が確認できるシステムの構築や、デポジット上限・通知期間を統一するResidential Tenancy Actの整備が検討されている段階です。マレーシアでの賃貸契約は、日本の宅建業法のような統一的な保護制度が整っているわけではなく、契約内容そのものが当事者の交渉力に大きく左右される点は、今も昔も変わらない基本認識として持っておくとよいでしょう。契約書の内容を借りる前にしっかり読み込み、不明点は現地のエージェントや知人に確認する一手間が、後々の大きなトラブル回避につながります。



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