「改修の計画を立てたいのに、手元にあるのは何十年も前の手書き図面だけ」
「取引先から届いた図面ファイルを開いたら、文字が化けて読めなかった」
古い建物の改修や設備の更新を考え始めると、まず必要になるのが今の建物を正しく表した図面です。ところが実際には、紙の図面しか残っていなかったり、データはあっても自社のCADでは正しく開けなかったりして、検討の入口で止まってしまうことがあります。
手書き図面や紙図面をCADデータに起こし直す作業は「CADトレース」と呼ばれます。線をなぞるだけの単純作業に見えますが、実際には元図面の読めない部分をどう扱うか、どの形式で受け取るかといった判断の連続で、依頼時に伝えた情報の量がそのまま仕上がりの精度に表れるのが現実です。
この記事では、CADトレースを依頼する前に準備しておきたい5つのことを紹介します。
① 図面を「何に使うか」を先に決める
同じ平面図のトレースでも、改修の検討に使うのか、設備更新の計画に使うのか、完成予想図(パース)の下図にするのかで、必要な情報は変わります。改修の検討であれば壁の位置や開口部の寸法が重要になり、設備の計画であれば配管や機器の位置が欠かせません。
使い道がはっきりしないまま依頼すると、元図面に書かれているものを「とりあえず全部」起こすことになり、必要な部分の精度よりも作業量のほうが膨らみがちです。逆に言えば、用途を一言添えるだけで、どこを優先して正確に起こすべきかの判断が揃います。
② 元図面の状態を確認し、読めない部分を先に伝える
古い図面ほど、紙そのものの劣化が進んでいます。特に「青焼き」などと呼ばれる感光紙を使った複写図面は、年月とともに退色や変色が起こりやすく、細かい文字や寸法の数字が潰れて読みにくくなっていることが少なくありません。
■退色した情報は、スキャンしても戻らない
スキャン後に画像を補正すれば読みやすくはなりますが、退色で消えてしまった線や文字を完全に復元することはできません。読めない箇所をどこまで図面に反映するかの判断が必要になるため、「ここは必ず正確に」「ここは参考程度でよい」という線引きを依頼時に伝えておくことが、手戻りを減らす一番の近道です。

図面が複数枚に分かれている場合や、途中で差し替えられた図面が混ざっている場合は、どれが最新なのかも合わせて伝えておくと確実です。
③ 図面にない寸法は、実測や写真で補う
元図面に寸法が書かれていない部分や、そもそも図面が残っていない部屋は、現地の情報で補うことになります。といっても、専門的な測量が必要なわけではありません。
■現地の情報の渡し方(どれか1つでも可)
- 手書きのメモ:部屋ごとの縦横の長さ、窓やドアの幅・高さ、天井高をメモしたもの。
- 写真に寸法を書き込んだもの:撮影した写真の上に、メジャーで測った数字を書き添えたもの。
- 外観・室内の写真:寸法がなくても、全体の形や窓の並びが分かる写真があると、図面との食い違いに気づきやすくなります。
改修や増築を重ねてきた建物では、手元の図面と今の建物が一致しているとは限りません。図面と現地の寸法が食い違ったときにどちらを優先するかを決めておくと、トレースの途中で作業が止まらずに済みます。
④ 受け取るファイル形式を、使うCADに合わせて決める
CADデータは、使うソフトによってファイルの形式が異なります。建築の分野では、無料で使える2次元CADの定番として知られるJw_cad(ファイル形式はJWW)を使っている事務所も多く、AutoCADなど別のCADとの間では、DXFという中間形式を介してデータをやり取りするのが一般的です。
ただし、DXFは「どのCADでも完璧に開ける形式」ではありません。たとえば、Jw_cadは文字をShift-JISという文字コードで扱うため、UTF-8で書き出されたDXFを読み込むと文字化けが起こることがあります。DXFにも複数のバージョンがあり、作成側と受け取り側で合っていないと、文字や寸法が正しく表示されない原因になります。
| 形式 | 一般的な使い分け | 注意点 |
|---|---|---|
| JWW | ◎ 自社でJw_cadを使って編集する | 他のCADで開くには変換が必要 |
| DXF | ○ 別のCADを使う相手とやり取りする | △ 文字化け・表示崩れの確認が必要 |
| ○ 閲覧・印刷・打ち合わせ資料として使う | × CADでの編集には向かない |
「誰がどのCADで開くか」を先に伝えることが、形式選びの失敗を防ぐ一番確実な方法です。
KOKONATSの建築図面のトレースはJw_cadで作図し、PDFでの納品にも対応しています。別のCADで使う予定がある場合は、依頼の段階でご相談ください。
⑤ 「これだけは守ってほしい」ことを最初に伝える
トレースの仕上がりには、作図する側の判断に任される部分が少なからずあります。線の太さや種類、文字の大きさ、レイヤ(図面の層)の分け方、図面枠の有無などは、指定がなければ作図側の標準で進むのが一般的です。
社内の作図ルールがある場合や、既存の図面と並べて使いたい場合は、そのルールを最初に伝えておくのが確実です。後から「レイヤを分け直してほしい」「文字の大きさを揃えてほしい」と依頼すると、図面全体に手を入れ直すことになりやすいためです。既存の図面データが1枚でも手元にあれば、それを見本として渡すのが最も伝わりやすい方法です。
依頼前のチェックリスト
- 用途:改修の検討、設備の計画、パースの下図など、何に使うか。
- 元図面の状態:読めない箇所と、必ず正確に起こしてほしい箇所の線引き。
- 現地の情報:図面にない寸法のメモ・寸法入りの写真・外観写真。図面と食い違ったときの優先順位。
- ファイル形式:JWW・PDFのどちらで受け取るか、誰がどのCADで開くか。別のCAD(DXF等)で使う場合は事前に相談。
- 作図ルール:線・文字・レイヤ・図面枠の指定。見本の図面があれば添付。
CADデータが1つ整うと、改修の検討だけでなく、完成後のイメージを伝えるパースの制作にもそのまま使えるようになります。トレースしたデータを元にパースを依頼する場合の準備は建築パースに必要な資料と渡し方7項目にまとめています。CADトレースの対応範囲や料金は格安CAD図面トレースのサービスページをご覧ください。図面1枚からご依頼いただけます。



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