【窓を大きく描きすぎない】内観パースの窓と採光規定で確認したい5つのポイント|「明るく開放的に」と図面の窓の食い違い

たとえば、こんな食い違いがあり得ます。
「内観パースは、窓を大きくして明るく開放的に見せてください。」
「でも、図面の窓は、そこまで大きくないんだけどな。」

居室の窓は、パースの印象を大きく左右します。大きな窓を描けば明るく広く見え、小さく描けば落ち着いた部屋に見えます。ところが、窓の大きさは、見た目の好みだけで決まるものではありません。建築基準法には、居室の用途ごとに「採光に有効な窓の面積」の下限が定められているからです。

パースを依頼するとき、「窓を大きく」「もっと明るく」と書いただけでは、制作側は、図面どおりに描くのか、見せ方として広げてよいのかを判断できません。判断できないまま進めると、実際の設計の窓と、パースの窓がずれてしまうことがあります。

この記事では、内観パースで窓を描くときに確認したい5つのポイントを、e-Gov法令検索の建築基準法・同施行令と、国土交通省の告示をもとに整理します。法規への適合の判断は設計者や確認申請先の領域です。ここでは「パースの依頼文に何を書いておくか」に絞ります。

なお、条文に書かれていることと、筆者の見立てやパース依頼上の助言は、文を分けて書きます。後者には「筆者の見立て」と添えます。

① 窓の大きさには「居室の用途ごとの下限」がある

建築基準法第28条第1項は、住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室について、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積を、居室の床面積に対して「五分の一から十分の一までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上」にしなければならない、と定めています。地階等の特定の居室には適用除外もあります。

建築基準法施行令第19条第3項の表では、住宅の居住のための居室の割合は「七分の一」とされています。つまり、住宅の居住のための居室では、採光に有効な部分の面積が床面積の7分の1以上、という基準です(第28条第1項ただし書の適用除外などは別です)。床面積が14㎡の居室であれば、2.0㎡以上が必要になります(14÷7=2.0)。

ここからは筆者の見立てです。依頼文の「窓を大きく」が、図面より大きく描いてよいという意味なのか、図面どおりでも大きく見えるように撮ってほしいという意味なのかで、パースの窓の寸法は変わります。法規を満たすための寸法は設計側で検討されているはずなので、パースで勝手に増減させると、図面との食い違いの元になります。

逆に言えば、窓の大きさは図面の寸法を正として、見せ方(アングル・明るさ)で印象を調整する、という整理がしやすくなります。アングルの考え方は、別記事「建築パースのカメラ位置と構図の決め方5つの基準」を参考にしてください。

② 窓の面積は、そのまま数えられるとは限らない

施行令第20条第1項は、採光に有効な部分の面積を、「当該居室の開口部ごとの面積に、それぞれ採光補正係数を乗じて得た面積を合計して算定する」と定めています。窓の寸法そのままではなく、窓ごとに補正係数をかけた面積を合計する、ということです。

第2項では、補正係数の算式が、住居系・工業系・商業系などの用途地域ごとに定められています。筆者の要約では、開口部の直上にある建築物の部分から隣地境界線等までの水平距離(d)と、その部分から開口部の中心までの垂直距離(h)の比(d/h・採光関係比率)をもとに係数が決まります。条文には、窓が道路に面する場合は算定値が1.0未満でも1.0とする扱い(道路に面しない場合は別の扱いがあります)、天窓は係数を3倍にする規定(上限3.0)、幅90cm以上の縁側等がある場合に0.7を乗じる規定も書かれています。

同じ大きさの窓でも、係数が違えば、有効な面積が変わります。次の図は、考え方を示すための仮の数値です(実際の係数は、敷地や建物の条件に応じて設計者が算定します)。

仮の数値による棒グラフ。床面積14平方メートルの居室で必要な有効採光面積は2.0平方メートル。開口部3.6平方メートルで係数1.0なら有効面積3.6平方メートルで足りる。同じ3.6平方メートルでも係数0.5なら1.8平方メートルで足りない。
開口部の面積が同じでも、補正係数が小さいと有効な面積は小さくなります。

ここからは筆者の見立てです。窓の有効面積が、隣地との距離や軒・庇の出で変わるなら、パースの窓を「見た目で」広げたり、庇を省いたりすると、図面側の検討とずれる可能性があります。窓の寸法と庇は、図面のとおりに描く、と依頼文に書いておくと、図面とのずれを避けやすくなります。

③ 間仕切りの建具が「壁」か「開放できる建具」かを描き分ける

建築基準法第28条第4項は、「ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前三項の規定の適用については、一室とみなす」と定めています。ここでいう前三項は、採光・換気・換気設備の規定です。

ここからは筆者の見立てです。内観パースで、隣り合う2つの部屋の境を、壁として描くか、引き戸や襖のような開放できる建具として描くかで、見る人が受け取る広さと明るさが変わります。実際の設計で、その境が条文でいう「随時開放することができるもの」として扱われているかどうかは、設計者の判断で、パースの制作側にはわかりません。

そのため、依頼時に、次のことを図面で示すと食い違いが減ります。

  • 間仕切りが壁なのか、引き戸・襖・障子などの建具なのか
  • 建具の場合、パースでは閉じた状態で描くのか、開けた状態で描くのか
  • 隣の部屋の窓も、画面に入る構図かどうか

④ 住宅の居室で、照明を明るく描いても採光の基準を満たしたことにはならない(筆者の見立て)

施行令第19条第3項には、ただし書があります。表の(一)から(六)までの居室のうち、国土交通大臣が定める基準に従って、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられているものについては、国土交通大臣が別に定める割合(十分の一までの範囲)にできる、という規定です。

その基準を定めた国土交通省の告示を読むと、条件は用途ごとに具体的に決まっています。たとえば教室・保育室では、床面から50cmの水平面で200ルクス以上の照度を確保し、かつ、床面から50cm以上の部分の開口部の有効面積が、床面積の7分の1以上であること、といった条件が書かれています。小学校等の音楽教室や視聴覚教室については、別の扱いがあります。住宅の居住のための居室も、ただし書の対象の項(表の(三))には含まれます。ただし、告示が基準を定めているのは教室・保育室等で、住宅の居室について緩和の基準を定めた記載は確認できませんでした。住宅で照明による緩和が使えるかどうかは、設計者・確認申請先に確認してください。

ここからは筆者の見立てです。パースで、ダウンライトや照明を明るく描くことと、法規上の採光を満たしていることは、別の話です。「照明で明るく見せてほしい」という依頼は、見せ方の指示としては成り立ちますが、それによって窓を小さくしてよいという意味にはなりません。

照明の描き方そのものは、別記事「内観パースの時間帯と照明の決め方5つの判断軸」で扱っています。

⑤ 窓の開き方や換気は別の基準。判断は設計者と確認申請先に任せる

建築基準法第28条第2項は、居室の換気について、「換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない」と定めています。政令で定める技術的基準に従って換気設備を設けた場合などは別の扱いになります。採光(光を取り込む面積)と換気(開けられる面積)は、別の基準です。

ここからは筆者の見立てです。内観パースの窓は、はめ殺しなのか、開閉できる窓なのかで、見え方が変わります。サッシのフレームの太さや、開閉の方式も、図面に書いてあるものを描くのが基本です。

採光や換気の規定を、その居室が満たしているかどうかは、設計者が検討し、確認申請などで確認される領域です。パースの制作側が「この窓は基準を満たしているか」を判断することはできません。依頼側にできるのは、設計で確定した窓の情報を、依頼文に書くことです。

確認すること 根拠となる資料 パース依頼で伝えること
居室の用途ごとの採光の割合 建築基準法第28条第1項・施行令第19条 図面の窓の寸法を正とするか
窓ごとの補正係数 施行令第20条 庇・軒や隣地との距離が分かる図面
間仕切りが建具か壁か 建築基準法第28条第4項 建具の種類と、開閉どちらの状態で描くか
換気に有効な開口 建築基準法第28条第2項 はめ殺し・開閉の別、サッシの仕様

表のとおり、窓まわりの食い違いの原因は、主に窓の寸法・庇や隣地との位置関係・間仕切りの種類・開閉の別の4点です。これらを図面で示すと、食い違いを減らしやすくなります。照明の描き方は、これとは別に、採光の基準を満たす根拠にはならない点だけ押さえておいてください。必要な資料の全体像は、別記事「建築パースに必要な資料と渡し方7項目」にまとめています。

「窓を大きく、明るく」という一言は、図面の窓を正とするか、庇や隣地との位置関係を示すか、間仕切りの種類と開閉をどうするか、窓の開き方をどうするかの4つに分けて初めて、制作側に伝わる指示になります。

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