「コンペの提出前に、外に出した図面が漏れたらと思うと怖い。」
「NDAを結べば安心、とは聞くけど、実際どこまで守られているのか分からない。」
コンペ案件や未公開の開発計画など、社外にまだ出せない情報を含む案件のパース制作を依頼したい場面では、まず「NDA(秘密保持契約)を結べば大丈夫」と考える発注担当者が少なくありません。
ただし、NDAは「情報が漏れたときに誰が責任を負うか」を決める契約であって、「実際にどうデータを渡し、どう扱うか」まで自動的に決めてくれるものではありません。契約書を交わしただけで安心し、渡すデータの範囲やファイルの共有方法を決めないまま進めると、後になって「思っていたより広い範囲の図面を渡してしまった」というすれ違いが起きやすいのが実情です。
この記事では、未公開プロジェクトの図面・情報を外部のパース制作会社に渡すときに押さえておきたい情報管理の5つのポイントを紹介します。
※アイキャッチ画像は解説用のイメージで、実際の制作事例ではありません。
① そもそも何が「秘密」にあたるのかを先に決める
NDAを結ぶとき、意外と曖昧にされがちなのが「何を秘密として扱うか」の範囲です。経済産業省の「営業秘密管理指針」では、不正競争防止法上の営業秘密として保護されるためには、秘密として管理されていること(秘密管理性)、事業活動に有用な情報であること(有用性)、公然と知られていないこと(非公知性)の3つの要件を満たす必要があるとされています。
この3要件のうち、発注側が特に意識しておきたいのが「秘密管理性」です。渡した図面や仕様書を「秘密として管理している」と言えるためには、社内でも「これは社外秘」と分かる状態にしておく必要があります。「口頭で伝えただけ」「ファイル名に何も明記していない」状態では、後から情報漏えいが起きても、そもそも秘密として管理されていたと主張しづらくなります。
一方で、あまりに広く「本件に関する一切の情報」と定義してしまうと、すでに公知の情報や、制作会社が独自に持つ一般的なノウハウまで縛ってしまい、かえって双方の対応が硬直しやすくなります。逆に言えば、「意匠図」「未公開の外観デザイン案」のように対象を具体的に絞るほど、発注側・受注側の双方にとって運用しやすい契約になります。
② NDA(秘密保持契約)に盛り込んでおきたい項目
中小企業庁は「知的財産取引に関するガイドライン」とあわせて、秘密保持契約書のひな形を公表しています。このガイドラインが繰り返し強調しているのが、秘密保持義務は発注側・受注側のどちらか一方だけが負うものではなく、双方が公平に負うという考え方です。中小企業側が一方的に秘密を守らされるだけの契約になっていないか、という視点は、パース制作の外注でも参考になります。
NDAで確認しておきたい項目
- 対象情報の定義: 渡す図面・パース・仕様書・価格情報のうち、どれが秘密情報にあたるか。
- 目的外使用の禁止: 受け取った情報を、本件のパース制作以外の目的で使わないこと。
- 複製・第三者開示の制限: 再委託先がいる場合は、その範囲も契約に明記する。
- 返還・消去義務: 契約終了時、または一定期間経過後にデータをどう扱うか。
- 有効期間: 契約終了後も秘密保持義務がどれくらいの期間続くか。
KOKONATSでは、コンペ案件や未公開プロジェクトなど機密性の高い図面・情報を伴うご依頼について、秘密保持契約(NDA)の締結に対応しています。発注元の指定フォーマット・弊社フォーマットのいずれでも締結できる旨をサービスページのよくある質問に明記していますので、条件面はご依頼の際にご確認ください。
③ 渡すデータの範囲を必要最小限に絞る
NDAを結んだからといって、手元にある図面や資料をすべて渡してよいわけではありません。パース制作に実際に必要なのは、意匠に関わる図面(平面図・立面図・仕上表など)であって、事業計画やコスト構造、契約条件のような情報までは通常必要ありません。
| 渡し方 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| フォルダごと丸渡し | やり取りの往復が減り、作業側が確認しやすい | 不要な資料まで渡ってしまい、漏えい時の被害範囲が広がる |
| 必要な図面だけ抜粋 | 渡す情報が絞られ、管理しやすい | 資料不足で確認の往復が増える可能性がある |
迷ったら、まず必要な範囲だけを渡し、不足があれば都度追加する方が管理しやすくなります。
④ データの受け渡し方法を決めておく
NDAの中身がどれだけしっかりしていても、実際のファイルのやり取りが無防備であれば意味が薄れてしまいます。メールにファイルをそのまま添付して送る、パスワードなしのリンクを共有する、といった方法は、宛先を1件間違えるだけで情報が外部に渡ってしまうリスクを抱えています。
■ 受け渡しで確認しておきたいこと
ファイル共有サービスを使う場合は、パスワードを別経路(電話・別メール)で伝える、ダウンロード期限やアクセス回数を設定する、共有リンクの宛先を必要な担当者だけに絞る、といった基本的な設定を都度確認することをおすすめします。設定を「前回と同じでいいだろう」と流用すると、期限切れの確認漏れや、意図しない相手への転送リンクの拡散につながることがあります。
逆に言えば、共有方法そのものを毎回1から決め直す必要はなく、「パスワード付き共有・期限設定・宛先限定」という基本の型を社内で1つ決めておけば、案件ごとに迷わず運用できます。
⑤ 納品後・契約終了後のデータの扱いを決めておく
情報管理は、データを渡す場面だけでなく、納品後にも続きます。契約終了時や一定期間経過後に、渡した図面や制作途中のデータをどう扱うか(返還するのか、消去するのか、消去した場合は証明を求めるのか)を、NDAの中で決めておくことが望ましいとされています。
ただし、即時の完全消去を求めると、後日「もう一案だけ角度を変えて見たい」というような追加の相談があった際に、一からデータを送り直す必要が生じ、双方にとって手間が増えることもあります。一定の保管期間を契約で定めておく方が、セキュリティと実務上の使い勝手のバランスが取りやすいというのが現実的な落としどころです。
未公開プロジェクトのパースを外注する前のチェックリスト
- 秘密の範囲: 何を秘密情報とするか、契約書に具体的に定義したか。
- NDAの中身: 目的外使用の禁止・複製制限・返還消去義務・有効期間が入っているか。
- 渡すデータ: パース制作に必要な図面だけに絞れているか。
- 受け渡し方法: パスワード・期限・宛先を都度確認しているか。
- 納品後の扱い: 保管期間・返還消去のタイミングを決めているか。
NDAは、情報管理の出発点であって、それだけで完結するものではありません。契約の中身と、渡すデータの範囲・受け渡しの方法・納品後の扱いまでをセットで決めておくことが、未公開プロジェクトを安心して外部に任せるための実務的な備えになります。
参考にした情報源
経済産業省「営業秘密管理指針」(最終改訂 令和7年3月31日)、経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」(最終改訂 令和6年2月)、中小企業庁「知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形」(令和8年1月改正)を参考にしています。KOKONATSのNDA対応についてはサービスページのよくある質問をご覧ください。



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