軒・ひさしの出を描くときに確認したい5つのポイント(外観パース)

たとえば、こんな食い違いがあり得ます。
「軒は深く出して、陰影のある外観にしてください。」
「でも、図面の軒の出は、そこまで深くないんだよな。」

※アイキャッチ画像は解説用のイメージで、実際の制作事例ではありません。

外観パースでは、軒やひさしの出が、建物の印象を左右します。出が深いと陰影がはっきりして落ち着いた表情に、浅いとすっきりした表情に見える傾向があります。一方で、軒やひさしの出の長さは、建築面積の算定にも関わります。そのため、設計の段階で数字が決まっていることが多いと考えられます(筆者の見立て)。

「深く」「浅く」と書くだけでは、制作側は、図面の寸法どおりに描くのか、見せ方として変えてよいのかを判断できません。判断できないまま進めると、実際の建物とパースで、軒の出が違ってしまうことがあります。

この記事では、外観パースで軒・ひさしを描くときに確認したい5つのポイントを、e-Gov法令検索の建築基準法施行令第2条第1項第二号と、パース依頼で押さえたい点とを合わせて整理します。建築面積や法規への適合の判断は、設計者と確認申請先の領域です。ここでは「パースの依頼文に何を書いておくか」に絞ります。

なお、条文に書かれていることと、筆者の見立てやパース依頼上の助言は、文を分けて書きます。後者は「ここからは筆者の見立てです」と添えて書きます。条文は要旨を言い換えており、実際の規定は必ず原文でご確認ください。

① 軒の出の長さは、建築面積の算定に関わる

建築基準法施行令第2条第1項第二号は、建築面積について、建築物の外壁またはこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によると定めています。そのうえで、軒、ひさし、はね出し縁などで、外壁や柱の中心線から水平距離1メートル以上突き出たものがある場合は、その端から水平距離1メートル後退した線で囲まれた部分の水平投影面積によるとしています。

つまり、軒やひさしの出が1メートル未満であれば、軒の部分は外壁・柱の中心線で囲まれた範囲に入らず、建築面積に含まれません。なお、この1メートルは外壁または柱の中心線から測る寸法です。図面の「軒の出」が外壁面から測られていることもあるため、寸法の基準位置は必ず確認してください。1メートル以上突き出ている場合は、その先端から1メートル分を除いた範囲までが、建築面積に含まれる、という考え方です。なお、同じ号には、建蔽率の算定に用いる建築面積に関する特例の軒等の扱いと、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造についてのただし書きもあります。該当するかどうかは設計者と確認申請先の領域のため、ここでは立ち入りません。

ここからは筆者の見立てです。軒の出は、見た目の好みで変えにくい数字になっていることがあります。外観パースで軒の出を描くときは、立面図・断面図の寸法を依頼側で確認しておくと、食い違いを減らせます。

② 1メートル以上突き出た軒は、先端から1メートル引いた分だけが入る

次の図は、考え方を示すための仮の数値です。軒の出が1.5メートルの例と、0.6メートルの例を比べています。条文の言い換えに沿って、1メートル未満の軒は含めない扱いで描いています。

仮の数値による軒の出の概念図。左は軒の出が1.5メートルで、先端から1メートルを除いた0.5メートル分までが建築面積に含まれる。右は軒の出が0.6メートルで、1メートル未満のため軒の部分は含まれない。
図は、軒の出が1メートル以上かどうかで、含める範囲の考え方が変わることを示した概念図です。

ここからは筆者の見立てです。軒の出を図面より深く描くと、実物より陰影の強い建物に見えます。逆に、浅く描くと、実物より軽い印象になります。軒の出は、図面の寸法を正として描き、見せ方はカメラの位置や画角で調整するのが、無理のない整理です。カメラ位置の考え方は、別記事「建築パースのカメラ位置と構図の決め方5つの基準」にまとめています。

③ 軒・ひさし・はね出し縁は、図面上の名前と形を確認する

条文は、「軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもの」と並べて書いています。どれに当たるか、どこからどこまでを算定に含めるかは、設計者の判断と、確認申請先での確認に委ねられる領域です。

ここからは筆者の見立てです。外観パースでは、玄関ひさし、窓上の小さなひさし、バルコニーの出、屋根の軒先など、突き出た部分が複数あることがあります。依頼文では、次のことを図面で示すと、食い違いを減らしやすくなります。

  • 突き出た部分の位置と、水平方向の出の寸法
  • 厚み(軒先の見付け)と、軒裏の仕上げ・色

素材や色の指定の仕方は、別記事「建築パースの素材・色の決め方5つの基準」にまとめています。

④ 軒の出は、影の落ち方にも関わる

ここからは筆者の見立てです。軒やひさしが深いほど、外壁や窓に落ちる影が大きくなり、時刻や季節で見え方が変わります。パースで影を入れるときは、軒の出が図面と一致していないと、窓の見え方や外壁の明るさが実際と違って見えるおそれがあります。

時刻や季節の決め方は、別記事「日影規制のある敷地でパースの季節・時刻を決める5つのポイント」で触れています(日影規制の話が中心の記事です)。軒の出の寸法と、時刻・季節の指定を、セットで伝えると、影まわりの食い違いが減ります。

⑤ 判断は設計者と確認申請先。依頼側は図面の情報を揃える

建築面積がいくつになるか、軒やひさしがどの扱いになるかは、設計者の検討と、確認申請先での確認に委ねられる領域です。パースの制作側は、これらを判断する立場ではありません。

ここからは筆者の見立てです。依頼側にできるのは、設計で確定した軒・ひさしの情報を、図面と依頼文で伝えることです。次の表のように、確認することと、パース依頼で伝えることを対応させて整理しておくと、制作側が迷いません。

確認すること 根拠(資料) パース依頼で伝えること
軒・ひさしの出の寸法 施行令第2条第1項第二号(1メートルの扱い) 立面図・断面図の寸法を正とするか
突き出た部分の種類と位置 施行令第2条第1項第二号 軒・玄関ひさし・窓上ひさし等の位置
厚み・軒裏の仕上げ 条文なし(筆者の見立て) 軒先の見付け、軒裏の素材と色
影の落ち方 条文なし(筆者の見立て) 時刻・季節の指定

5つのポイントのうち、①と②は寸法の確認、⑤は判断主体の確認です。依頼文に書く情報は、軒・ひさしの出の寸法、突き出た部分の位置、厚みと軒裏の仕上げ、影の条件の4点です。これらを図面で示すと、軒まわりの食い違いを減らしやすくなります。必要な資料の全体像は、別記事「建築パースに必要な資料と渡し方7項目」にまとめています。

「軒を深く見せて」という一言は、図面の軒の出の寸法を正とするか、突き出た部分の位置をどうするか、厚みと軒裏の仕上げをどうするか、影の条件をどうするかの4つに分けて伝えると、制作側に伝わりやすい指示になります。

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