【いつ伝えるかで結果が変わる】建築パースの制作途中に設計変更が入ったときの影響5つのポイント|「今さらですが直したい」と言う前に

「初稿を見てから、やっぱり間取りを少し変えたくなった。」
「発注した後に、外観の仕上げ仕様そのものが変わってしまった。」

建築パースを発注したあとに、こうした状況になることは珍しくありません。

パースは基本的に確定した図面を前提に作られるため、図面そのものが変わると、色や素材を差し替えるような「軽微な修正」では済まなくなり、費用とスケジュールの扱いが変わってくるというのが実情です。しかし「どこまでが無料の修正で、どこからが有料の変更になるのか」「変更を伝えるタイミングで何が変わるのか」は、発注前には意外と見えていません。

この記事では、制作途中の設計変更が建築パースの費用・スケジュールにどう影響するか、押さえておきたい5つのポイントを紹介します。

① 「軽微な修正」と「設計変更」の線引きはどこにあるか

建築パースの制作では、修正の可否や費用を「作業量の大小」で感覚的に判断するのではなく、次の2点を基準に線引きするのが一般的です。

■ 判断基準は「モデルの形に手を入れるか」と「タイミング」

1つ目は、3Dモデルの形状そのものに手を入れる必要があるか、それとも再レンダリングだけで反映できる範囲かという基準です。色味の調整やマテリアル(仕上材)の差し替え、カメラアングルの微調整のように、形状に触れずに直せる内容であれば軽微な修正として扱われます。2つ目は、その指示が最終納品の前か後かという基準です。同じ内容の変更でも、納品後に持ち上がったものは扱いが変わってきます。

1. 軽微な修正として扱われやすい内容

色味・明るさの調整、仕上材や什器の色柄の差し替え、カメラアングルの微調整、構造に影響しない範囲での窓やドアの位置修正など。モデルの形を大きく変えずに反映できる内容です。

2. 設計変更として別途見積りになりやすい内容

新しい図面の支給にともなう大幅なモデル修正、建物の形状変更や増築・減築、家具・什器そのものの入れ替え、造作を伴う仕上げの変更、全体のデザイン変更・再構成など。モデルを作り直す必要がある内容です。

どちらに当たるか自分では判断しにくいことも多いはずです。迷ったら「これは直せますか」と一言添えるだけで十分で、線引きを気にしすぎて相談を後回しにする必要はありません。

② 変更を伝えるタイミングで、対応の扱いが変わる

同じ「窓の位置を変えたい」という内容でも、それをいつ伝えるかによって扱いが変わります。制作の流れを、初稿前・初稿から最終納品まで・最終納品後の3段階に分けて整理すると次のとおりです。

伝えるタイミング 軽微な修正の扱い 形状に関わる変更の扱い
初稿提出前 ◎ 制作の一部として進行 △ 別途お見積り(早いほど戻る範囲は小さい)
初稿確認〜最終納品前 ◎ 追加費用なしで対応 △ 別途お見積り(戻る範囲が大きくなる)
最終納品後 △ 別途見積りとなる × 別途お見積りのうえ、作り直しに近い扱いとなる

同じ内容の変更でも、伝えるタイミングが早いほど、戻る工程が少なく短期間で収まりやすくなります。なお、形状に関わる変更は、伝えるタイミングにかかわらず、事前にお見積りをご確認いただいてから着手します。

③ 設計変更は、スケジュールを「その分だけ」押し戻す

建築パースの制作は、モデリング・マテリアル設定・ライティング・レンダリング・修正という工程を順番に積み上げて作られています。色や素材の差し替えのように形状に触れない修正は、モデリングまで戻らずに反映できますが、建物の形状そのものが変わる変更は、モデリングの工程まで巻き戻ることになります。すでに設定していたマテリアルやライティング、カメラアングルも、変更後の形状に合わせて作り直しになる範囲が出てくるというのが実情です。

モデリング マテリアル ライティング レンダリング 修正 形状に触れない修正は、モデリングまで戻らない 形状変更は、モデリングから全工程をやり直す
図: 建築パースの制作工程と、形状変更が入ったときに戻る範囲のイメージ

逆に言えば、変更したい内容が「色・素材・アングルの範囲」に収まっているうちに伝えれば、戻る工程は少なく済み、スケジュールへの影響も最小限にとどめられます。設計変更を我慢する必要はなく、伝えるタイミングと範囲を意識するだけで結果は変わってきます。

④ 「変更には期間と報酬の見直しがセット」という考え方は業界にもある

これは建築パースに限った話ではなく、建築設計の業務委託契約でも同じ考え方が採られています。日本建築士事務所協会連合会など建築士関連4団体が定める標準契約書式「四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約約款」の第16条では、委託者(発注者)が設計業務の途中で内容の追加・変更を指示した場合、受託者(設計者)はその理由を明示したうえで、履行期間の変更・報酬額の変更・損害が生じていればその賠償を請求できると定められています。

国土交通省中部地方整備局が公共工事向けに公開している「工事請負契約における設計変更ガイドライン」でも、軽微な変更は概算金額と必要日数を協議のうえ工期末までに契約変更を行い、それ以外の変更はその都度契約変更の手続きを行うという整理がされています。対象は公共工事の請負契約ですが、「変更の大きさに応じて、期間と金額を都度見直す」という考え方そのものは、建築パースの発注にもそのまま当てはまります。

  • 変更は「悪いこと」ではない: 設計が進む過程で変更が生じるのは自然なことで、業界の契約実務でも織り込み済みの前提として扱われています。
  • 見直すのはセットで: 費用だけ、期間だけを個別に調整するのではなく、変更の大きさに応じて両方をセットで見直すのが基本の考え方です。
  • 事前確認が前提: KOKONATSでも、別途見積りが必要な変更は必ず内容と金額を事前にご確認いただいたうえで着手しています。

⑤ 追加費用と遅れを抑えるために、発注側でできること

設計変更そのものを避けることは難しくても、伝え方を工夫するだけで費用と時間への影響を小さくすることはできます。

① 変更点は思いついた順ではなく、まとめて伝える

小さな変更を思いつくたびに個別に伝えると、その都度工程を戻す必要が生じ、結果として何度もやり直しが発生します。次の確認タイミングまでに気づいた変更点をまとめて伝えるほうが、戻る工程を1回にまとめられます。

② 「直したい範囲」に優先順位をつける

すべてを一度に完璧にしようとせず、「必ず直したい部分」と「余裕があれば直したい部分」を分けて伝えると、優先度の高い変更から先に反映してもらいやすくなります。

③ 案を比較したいときは「修正」ではなく「別案」として伝える

1つの案を直しながら決めていくのか、複数の案をそれぞれ残して比較したいのかによって、進め方も費用の扱いも変わってきます。比較検討そのものが目的の場合は、その旨を最初に伝えておくと話がスムーズです。この進め方については「A案・B案比較の頼み方」の記事でも詳しく紹介しています。

建築パースの制作途中に設計変更が入ること自体は珍しくありません。大切なのは、変更をゼロにすることではなく、気づいた時点でまとめて早めに共有することです。

参考にした情報源

一般社団法人日本建築士事務所協会連合会ほか建築士関連4団体「四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約約款」第16条、国土交通省中部地方整備局「工事請負契約における設計変更ガイドライン(統合版)」を参考にしています。KOKONATSの修正・変更の取り扱いはこちらのページ、A案・B案の比較についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。

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