【パースの扱いは自治体で違う】景観法の届出・事前協議で求められる完成予想図の確認点5つ|「パースは要りますか」の前に確認したいこと

「景観計画区域だと、パースを出さないといけないんですか。」
「役所から完成予想図を出すよう言われたのですが、普通のパースで足りますか。」

建物の計画が進み、確認申請を意識し始めたころに、こうした疑問にぶつかることがあります。景観法に基づく届出や事前協議は、建築確認とは別の手続きで、見落としたまま設計が進んでしまう場合もあるためです。

パースの扱いが分かりにくいのは、景観計画を自治体ごとに定めているからです。同じ建物でも、どこに建てるかで提出図書もパースの条件も変わるのが現実です。条件を知らないまま発注すると、「この角度では足りない」と分かって撮り直し(再制作)になることもあります。

この記事では、景観の届出・事前協議でパースを求められたときに、発注前に確認しておきたい5つの点を、東京都・大田区・大阪府・大阪市の公開情報をもとに紹介します。なお、当社は建築パースの制作を専門としており、届出書類の作成や、届出が必要かどうかの判断は承っていません。

① まず「その土地で届出が必要か」は自治体の窓口で決まる

景観法第16条は、景観計画区域内で建築物の新築・増築・改築・移転などをしようとする人に、あらかじめ行為の種類・場所・設計または施行方法・着手予定日などを景観行政団体の長へ届け出ることを求めています。届出の内容が景観計画の制限に合わない場合、景観行政団体の長は設計の変更などを勧告できると定められています。

どの区域が景観計画区域か、どの規模から対象になるかは、各自治体の景観計画で決まっています。そのため、「うちの案件は届出が要るのか」「パースは必要か」は、パース会社ではなく、敷地を所管する自治体の景観担当課に確認するのが出発点です。東京都の案内ページでも、届出や事前協議の前に必ず事前相談を行い、提出書類を確認したうえで進めるよう記載されています。

② パースの扱いは「任意」「必要に応じて」「項目にある」の3通りに分かれる

公開されている手引きを見ると、パースの位置づけは自治体によって異なります。大阪府の景観計画の届出のてびきでは、必須の添付図書として配置図、着色した立面図、現況のカラー写真などを挙げたうえで、「完成後のイメージパースがある場合は、参考として添付してください」としており、パースは任意の扱いです。

東京都の案内では、行為の届出の提出書類のうち完成予想図(外観パース・部分パース・模型の写真等)と景観シミュレーションについて「必要に応じて提出していただきます」と注記されています。一方、大規模建築物等の事前協議では、この2つが提出書類の一覧に含まれています。大田区の手引きでは、事前協議や届出の資料の項目に外観パースが条件の付かない形で挙がっています。

同じ都内でも届出の種類や段階で扱いが違い、さらに自治体が変われば、ルールも変わります。「前の案件では要らなかった」という経験は、次の案件の根拠になりません。

自治体・手続き パース(完成予想図)の扱い
大阪府(届出) △ ある場合は参考として添付(任意)
東京都(行為の届出) ○ 必要に応じて提出(事前相談で確認)
東京都(大規模建築物等の事前協議) ◎ 提出書類の一覧に完成予想図・景観シミュレーションが含まれる
大田区(事前協議・届出) ◎ 外観パースが資料の項目に含まれる
大阪市(事前協議) ◎ 彩色が施された完成予想図が必要書類に含まれる

パースが要るかどうかは、建物ではなく「どの自治体のどの手続きか」で決まります。

③ 求められるのは「建物単体の見映え」ではなく「街並みの中での見え方」

営業や施主説明に使うパースは、建物を魅力的に見せる角度や時間帯を選ぶのが普通です。ところが景観の手続きで求められるのは、周囲との関係が分かる絵です。大田区の手引きは、外観パースについて「建築物等及び両隣の建築物等周辺の街並みが分かる」ものとし、植栽の位置・高さをできるだけ正確に表現するよう求めています。

東京都は景観シミュレーションを「既存の街並み写真に完成予想図を組み入れたもの」と説明しています。建物を単独で描いたパースとは作り方が別で、現地の写真が前提になります。現況写真の撮影位置や方向を後から揃え直すのは手間がかかるため、パースを発注する前に、どの位置から見た絵が必要かを自治体に確認しておくと手戻りを避けられます。

逆に言えば、「見せたい角度」と「求められる角度」を最初に分けて考えておけば、両方を1回の制作計画に収めやすくなります。

④ 色は「パースの見た目」ではなく数値で示すことが多い

景観の手続きでは、外壁などの色をマンセル値で示す運用が見られます。大阪市の事前協議の案内には、縮尺1/200以上の各面立面図について「彩色が施されたものとし、材料及びマンセル表示系による色彩を表示する」と書かれています。大阪府のてびきでも立面図での色彩表示が求められており、大田区の手引きでは、マンセル値を表示した四面の着色立面図の提出に加えて、強調色・アクセント色を使う場合はその使用部位と見付面積・計算式の記入も必要です。

ここで注意したいのは、パースの色とマンセル値の食い違いです。パースは光源・モニター・印刷で見え方が変わるため、画面上の色をそのまま届出の色として扱うことはできません。色の根拠は立面図や自治体指定の色彩資料の数値に置き、パースは「その色を採用した場合のイメージ」という位置づけで揃える、という整理が現実的です。素材・色の見え方の違いについては、別記事「建築パースの素材・色の決め方5つの基準」で詳しく紹介しています。

⑤ 届出は少なくとも着手の30日前、パースの制作期間はその前に見込む

大阪府のてびきには、届出後30日を経過しないと行為に着手できないと書かれており、着工予定日の30日前までの届出が必要になります。東京都は起点が少し異なり、着手そのものではなく、関係法令に基づく手続きのうち最も早い期日の30日前までに提出するよう案内しています。届出のためのパースは、この期限より前に出来上がっていなければなりません。

加えて、大阪府のてびきは、計画が進むと変更が難しくなるため、建築確認申請の前のできるだけ早い時期に届出することを勧めています。事前相談の結果、必要な図書が増えることもあります。パースの発注は、相談で図書の要否と条件を確認してからにするのが安全です。制作日数の内訳は、別記事「建築パースの納期の内訳と5つの工程」で紹介しているので、逆算の参考にしてください。

事前相談 自治体の窓口 図書の確認 パースの条件 パース発注 制作期間を確保 届出 着手の30日前まで* 着手 届出の30日後以降 パースは「届出の前」に出来上がっている必要がある
事前相談で図書の要否と条件を確認してからパースを発注し、届出は着手の30日前までに行うという順番の例。*起点は自治体で異なります(東京都は関係法令の手続きの最も早い期日の30日前)。実際の手続きは自治体ごとに異なります。

景観の届出でのパースは、見せるための絵というより、周囲との関係を示す資料としての性格が強くなります。「要るかどうか」「どの角度か」「色の根拠はどこか」を発注前に自治体へ確認するだけで、再制作や手戻りのリスクを大きく減らせます。

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