「確認申請の図面どおりに描いたので、これで大丈夫ですよね。」
「パースも確認申請に出すものですか?」
上の2行は、筆者が想定した例です。施主への説明や社内の検討でパースを使うとき、確認申請の図面とパースが同じものとして扱われてしまうことも考えられます。パースは図面を基に描く絵ですが、図面そのものではありません。両者の位置づけを分けておかないと、食い違いに気づいたときに「どちらが正しいのか」で止まってしまいます。
この記事では、確認申請の図書とパース(完成予想図)の違いを5つのポイントで整理します。官公庁や自治体の資料に書かれていることと、筆者の見立てとは文を分けて書きます。法規への適合や申請の要否を判断するのは設計者・確認検査機関・行政で、この記事は法的な助言ではありません。
① 確認申請で添付する図書は「図面」が中心
確認申請で申請書に添える図書は、建築基準法施行規則第1条の3に基づいて整理されています。大阪市の確認申請書添付図書の案内では、申請関係図書として、意匠図(配置図・平面図・立面図・断面図等)、設備図、構造図、その他必要に応じて参考となる図書が挙げられています。国土交通省のサイトに掲載されている木造住宅等の小規模建築物向けの運用改善マニュアル(平成22年3月、一般社団法人木を活かす建築推進協議会発行)でも、配置図、各階平面図、立面図、断面図、求積図などが挙げられています。同じく掲載されている木造2階建て一戸建て住宅向けの確認申請・審査マニュアル(日本建築防災協会・建築行政情報センター、経過措置対応版)でも、仕様表、配置図、平面図、立面図、断面図、地盤面算定表、構造詳細図などが並んでいます。
筆者が確認した範囲では、これらの資料にパースや完成予想図という語は挙がっていませんでした。ただし、大阪市の案内には「その他必要に応じて参考となる図書」という区分があり、パースがこれに当たるかどうかは資料の記載からは分かりません。この記事では「パースは確認申請の図書ではない」と言い切るのではなく、申請図書として挙げられている範囲で説明します。
ただし、必要な図書は建築物の規模・構造・用途や自治体によって変わります。鳥取県の令和7年4月1日以降の審査を対象にした資料でも、配置図、求積図、平面図、立面図、断面図、構造詳細図、地盤面算定表などが例示されていますが、これは県内の例です。個別の案件で何を出すかは、設計者と確認申請先(特定行政庁・指定確認検査機関)に確認してください。
② パースは「設計図書」の定義にも挙がっていない
愛媛県の資料に引用されている建築士法第2条第6項では、「設計図書」とは建築物の建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書、「設計」とはその者の責任において設計図書を作成することとされています。また、国土交通省が公表している民間建設工事標準請負契約約款(甲)(令和元年改正版)は、設計図書を「設計図、仕様書、現場説明書及びその質問回答書」としています。筆者が確認した範囲では、どちらにもパースという語は出てきません。
パースが建築士法上の「図面」に当たるかどうかの解釈は、この記事では扱いません。また、標準約款はひな型で、実際の契約でパースを設計図書に含めるかどうかは当事者の取り決めによります。
| 場面 | 資料に書かれていること(要旨) | パースの扱い(筆者の整理) |
|---|---|---|
| 確認申請の図書(施行規則第1条の3に基づく整理) | 意匠図(配置図・平面図・立面図・断面図等)、設備図、構造図、その他必要に応じて参考となる図書が挙がる(大阪市の案内) | パースの語は挙がっていない。「その他必要に応じて参考となる図書」に当たるかは資料からは分からないため、申請先に確認 |
| 建築士法の設計図書 | 建築工事の実施のために必要な図面及び仕様書 | 定義の文言にパースの語はない。寸法や仕様は図面と仕様書で確認 |
| 標準請負契約約款(甲)の設計図書 | 設計図、仕様書、現場説明書及びその質問回答書 | 契約でどう扱うかは当事者の取り決め |
| 景観計画の届出(大阪府の例) | 添付図書に加えて、完成後のイメージパースがある場合は参考として添付 | 提出先ごとに求め方が違う。対象地域と案件で確認 |
確認申請の図書は図面が中心で、パースは図面を基に描く説明用の資料として整理しておくと、場面ごとの扱いを取り違えにくくなります。
※第1・2列は各資料の要旨、第3列「パースの扱い」は筆者の整理で、出典に書かれた内容ではありません。法規への適合や申請の要否は、設計者・確認検査機関・行政が判断します。景観計画の届出は大阪府の例で、自治体によって異なります。
③ 食い違ったときに備えて「図面を基準にしておく」(筆者の整理)
標準約款には、書類どうしの不一致を扱う条文があります。民間建設工事標準請負契約約款(甲)の第16条第1項第1号は、「図面若しくは仕様書の表示が明確でないこと又は図面と仕様書に矛盾、誤謬又は脱漏があること」を、受注者が発見したときに発注者へ書面で通知する事項の一つとしています。これは工事を請け負う側の手続で、パース制作の条件を定めたものではありません。
国土交通省の公共工事標準請負契約約款(公共工事の契約が対象)の第18条第1項第1号も、図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないことを挙げています。ここには「これらの優先順位が定められている場合を除く」という括弧書きがあり、書類どうしの優先順位は契約で定めることがある前提の条文です。筆者が確認した範囲の条文には、パースと図面の優先関係は書かれていませんでした。
申請図書の側でも、図書間の整合は確認の対象になります。鳥取県の確認申請図書の解説資料には、平面図と24時間換気の計画図書が整合していない例が、指摘事項として挙げられています。
ここからは筆者の見立てですが、パースの食い違いは、図面にない家具や植栽、外構、仕上げの色を描き足すとき、図面に表れていない天井の高さや開口の位置を想像で補うとき、基にした図面が古い版のときに起こりうると考えます。食い違いに気づいたら、描く側で判断せず、依頼者を通じて設計者に確認する流れにしておくのが安全です。逆に言えば、「図面が基準で、パースは図面を基に描いた説明資料」という位置づけを依頼の最初に共有しておくだけで、食い違ったときの判断は速くなります。優先関係は、契約書や発注書、メールなど残る形で決めておいてください。
④ 「法的な図面ではありません」の注記は、誤読を防ぐために入れる
景観計画の届出のように、パースが提出書類に出てくる場面はあります。大阪府の「景観計画 届出のてびき」(令和4年4月)は、届出の添付図書の表の冒頭で、「以下のものに加えて、完成後のイメージパースがある場合は、参考として添付してください」と案内しています。この場合も、書かれているのは「参考として」の添付です。景観届出でのパースの扱いは別記事【パースの扱いは自治体で違う】景観法の届出・事前協議で求められる完成予想図の確認点5つ…(記事名の前半)にまとめています。
「法的な図面ではない」という注記の書き方を定めた公的な資料は、筆者が調べた範囲では見つかりませんでした。以下は筆者の考え方です。注記の目的は、パースを寸法や仕様、法規への適合の根拠として使われることを避け、図面との関係を読み手に伝えることだと考えます。入れておきたいのは次の3点です。
- 用途の限定:「計画案のイメージを示すもので、寸法・仕様・法規への適合は設計図書によります」といった趣旨
- 基にした図面:図面の名称と版(作成日や改訂記号)
- 変更の可能性:設計の確定前なら、今後変わる可能性がある旨
注記は、パース画像の中やPDFのフッターなど、画像だけ切り出されても残る位置に入れておくと伝わりやすくなります。なお、注記を入れたことで法的な責任がどう変わるかは筆者には判断できません。契約上の扱いは、契約書の内容や弁護士など専門家に確認してください。
⑤ 設計変更があれば、図面と一緒にパースも差し替える
確認済証の交付後に計画が変わる場合の手続は、自治体の案内に整理されています。京都市の案内では、確認済証の交付を受けた後、建築基準法施行規則第3条の2の軽微な変更に該当しない計画変更がある場合は、計画変更手続を行うこと、手続が終わるまでは変更部分に係る工事はできないことが書かれています。軽微な変更は、中間検査または完了検査の申請時に、内容を各申請書に記入し、確認できる図書を添付するとされています。判断に迷う場合は事前相談ができる旨も案内されています。変更がどちらに当たるかは、設計者と確認検査機関・行政の判断です。
図面の変更は、複数の図書に連動することもあります。鳥取県の資料には、面積を複数の図書に載せている場合、面積の訂正があれば配置図や平面図の訂正も必要になる旨が注記されています。
ここからは筆者の見立てですが、図面が変われば、基の図面で描いたパースは古い計画の絵になります。差し替えのときは、次の3点を確認しておくと混乱を避けられます。
- 旧版のパースと新版を、ファイル名や注記の版表記で区別する
- 注記に書いた「基にした図面の版」を更新する
- 変更箇所を、設計者から図面の変更点として受け取る
パース側の修正の費用や日程の考え方は、別記事【いつ伝えるかで結果が変わる】建築パースの制作途中に設計変更が入ったときの影響5つのポイント…(記事名の前半)で整理しています。依頼時に揃えておく資料の全体像は、【依頼前チェックリスト】建築パースに必要な資料と渡し方7項目にあります。

パースを依頼するときは、次の4点を伝えておくとスムーズです。
- 基にする図面の種類と版(図面名、作成日、改訂記号)
- パースの用途(社内検討、施主への説明、景観届出の参考添付など)と提出先
- 図面とパースの食い違いに気づいたときの確認先(設計者)と、基準にする書類
- 注記の有無と文言、設計変更があったときの差し替えの進め方
「図面どおりに描いたから大丈夫」ではなく、「どの版の図面を基に、何の用途で描いたパースか」を明示しておくことが、後からの食い違いを減らす近道です。
参考にした情報源



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