
量産が続いているあいだ、プレス機は毎月決まった数量を打ち続けます。そしてモデルチェンジで機種が終わると、その型ごと止まります。売上の半分以上を1社の量産品が占めている会社なら、止まるのはプレス1台では済みません。
プレス加工の仕事は、型と一緒に入ってきます。だから新規開拓で決まるのは「次の型が、どの工場に置かれるか」です。型が動く入り口は、新しく型を起こすときと、すでにある型を別の工場へ移すとき(型移管)の2つしかありません。
この記事では、2つの入り口の違いと、それぞれの当て先・当てる時期を整理します。2026年1月に施行された取適法(旧下請法)で、型の保管の扱いがどう見られているかにも触れます。
読みながら、確かめてほしいこと
- 売上が特定の取引先の、特定の機種に偏っていないか
- 棚に何年も注文のない型が並んでいないか
- 型の話ができるのが、社長と工場長だけになっていないか
1. プレス加工の仕事は、型が入ったときに決まる
プレス加工の受注は、切削や板金とは入り方が違います。切削や板金は図面1枚ごとに見積もりが出ますが、プレス加工は型を起こした時点で、その部品の数年分の仕事がほぼ決まります。
型を起こすには費用がかかります。順送型(プログレ)のように1台の型で抜き・曲げ・絞りを連続して行う型なら、なおさらです。発注元は一度型を起こした工場から、簡単には動きません。
つまり、プレス加工の新規開拓は「いま流れている部品を取りにいく」のではなく、「次に型が置かれる場所に入っておく」ことです。量産が始まってから声をかけても、型はもう別の工場の棚にあります。
2. 型が動く入り口は2つ。新しい型と、型移管
4M変更とは、Man(人)・Machine(設備)・Material(材料)・Method(方法)が変わるときに、届け出て承認を取り、初品を検査し直す仕組みです。自動車部品なら品質マネジメント規格IATF 16949が変更の管理を要求しています。型移管は型費がかからない代わりに、この手間を発注元に負わせます。だから型移管は、発注元に「動かす理由」があるときにしか起きません。
2-1. どちらを先に取りにいくか
今月・来月の稼働を埋めたいなら型移管です。型がすでにあるので、決まれば早く量産に入れます。
ただし型移管は、相手の事情が起きていないと話が進みません。新しい型のほうは、機種の立ち上げ時期さえ分かれば、こちらから当てる時期を読めます。両方を並行して回すのが基本です。
3. 当てる時期は4つ
KOKONATSでリストを作るときは、キーワードを決めてGoogleで検索し、当てはまる会社を拾っていきます。この4つのどれを先に狙うかで、検索に使うキーワードが変わります。①なら設計・生産技術、②③なら購買・調達と、話したい相手も変わります。
④は第5章で触れる型の保管のルールと関係しています。
4. 最初に出すのは、設備と工法の条件
プレス加工は、型が自社のプレスに載るかどうかで、話ができる相手が決まります。条件が合わない相手と話を進めても、最後に「載りません」で終わります。電話をかける前に、この条件を1枚にまとめておきます。
- プレス機……台数、加圧能力(トン数)、ボルスタ寸法、サーボプレスの有無
- 工法……順送、単発(単工程)、トランスファー、深絞りのどれが得意か
- 材料……対応できる板厚と材質(鋼板、ステンレス、アルミ、銅)。コイル材か定尺材か。有償支給材を受けられるか
- 数量……月産いくつから受けるか。SPM(1分あたりの打ち数)と、型替え(段取り替え)の回数をどこまで許容できるか
- 型……自社で設計・製作するか、金型メーカーに手配するか。型保全(研磨・部品交換)を自社でできるか
- 二次加工……タップ、溶接、組立、表面処理の手配まで一貫で受けられるか
- 品質……バリ(かえり)の管理、初品検査、測定機器、検査成績書を出せるか
型を外の金型メーカーに頼んでいる会社は、その関係も強みとして書いてください。新しい型の相談を受けたとき、型から量産までを一つの窓口で受けられるかどうかは、発注元にとって大きな違いです(金型メーカー側から見た話は金型メーカーの新規開拓で書いています)。
二次加工のうち表面処理は、外に出している会社が多い工程です。めっきや塗装まで手配して完成品で納められるなら、それも条件に入れます(表面処理の新規開拓)。
5. 型の保管は、2026年から見られ方が変わった
プレス加工の会社の多くが、発注元の型を預かっています。量産が終わったあとも、補給品のために型を置いておく。保管の費用は出ていない——これは長く続いてきた取引慣行です。
2026年1月1日、下請法が改正され、中小受託取引適正化法(取適法)として施行されました。公正取引委員会の取適法Q&Aでも、製造を委託している中小受託事業者に金型を保管させることが、「不当な経済上の利益の提供要請」にあたるかどうかという形で取り上げられています。
下請法時代の公正取引委員会のQ&Aでは、たとえば部品の発注を1年以上行わないまま、保管費用を払わずに型を保管させる場合などが、違反となる例として挙げられていました。保管させるなら、請求があるかどうかにかかわらず、保管期間に応じて費用を払う必要があるとされています。
業界側の動きもあります。経済産業省と中小企業庁は2019年12月に「型取引の適正化推進協議会報告書」をまとめ、日本自動車部品工業会は2024年9月に「型保管費の適正負担に向けた取組み手順」を公表しています。
新規開拓との関係で言うと、ここが第3章の④です。発注元は、量産の終わった型を「保管費を払って置き続けるか」「廃棄するか」「引き取るか」を決める必要が出てきています。補給品の少量生産を受けられる工場は、そのとき候補に挙がります。
自社の棚にある型を、発注元ごと・最後に注文があった時期ごとに一覧にしておくと、既存の取引先との保管の話にも、新しい発注元からの④の相談にも、同じ資料で答えられます。
※制度の内容は執筆時点のものです。個別の取引が該当するかどうかは、公正取引委員会・中小企業庁の窓口や専門家にご確認ください。
6. KOKONATSの場合:最初の接点をつくるところだけを切り出す
プレス加工の会社の強みは、加工の中身を具体的に説明できることです。その型がうちのプレスに載るか、順送にすれば歩留まりがどれだけ変わるかを社長や工場長が説明できれば、話は前に進みやすくなります。
足りないのは、その説明の場をつくるための「最初の電話」をかける人です。社長や工場長は現場と見積もりで手一杯で、新しい相手に電話をかけ続ける時間がありません。その結果、新規開拓は社長が空いた時間にやるだけになってしまいます。
KOKONATSがお引き受けしているのは、最初の接点をつくるところだけです。
- 当て先の設計……新しい型を狙うか型移管を狙うかを決め、検索に使うキーワードを一緒に決める
- リストの作成……決めたキーワードでGoogle検索し、当てはまる会社を拾う
- 架電と記録……反応と断られた理由を分類し、当て先の設計に戻す
担当者につながらない相手には、最大6回まで架電するルールで運用しています。生産技術や品質保証は工場や立会いに出ていることが多く、1〜2回では「不在」と「見込みなし」の区別がつかないためです。
料金は公開しています。
| プラン | 月額(税抜) | 対象 |
|---|---|---|
| 高精度マッチング(機械加工・板金等) | 140,000円 | 200社 |
| 大型案件創出(製造装置・FA等) | 230,000円 | 200社 |
| 見込み客フォローアップ特化 | 80,000円 | 100社(枠) |
| 初期費用 | 0円 | 全プラン共通 |
アポインセンティブは、高精度マッチングが15,000円/件(キャンペーン中は5,500円/件)、大型案件創出が30,000円/件です。
【見込み客フォローアップ特化プラン】は、展示会やWebからの問い合わせ、見積もりを出したまま止まっている相手を、半年から1年かけて追い続けるためのプランです。「100社」は名簿の数ではなく、同時に追い続ける枠の数を指します。確度が低いと分かった先は枠から外し、空いた枠に次の候補を入れます。外した理由は毎月のレポートで返します。なお、このプランはアポインセンティブ・コールリスト作成の対象外です。
新しい型は、機種の立ち上げまで時間がかかります。1回当てて終わりにしないことが、そのまま成果につながります。
7. まとめ
- プレス加工の仕事は型の単位で動く。型が入れば数年続き、機種が終われば型ごと止まる
- 型が動く入り口は2つ。新しい型を起こすとき(設計・生産技術。遅いが工程変更の承認がいらない)と型移管(購買・調達。早いが4M変更の手間を相手に負わせる)
- 当てる時期は4つ。新機種の立ち上げ前/いまの加工先が止まる/2社化/型の置き場所の見直し
- 最初に出すのは設備と工法の条件。台数・トン数・ボルスタ寸法・工法・板厚・数量・型・二次加工・品質を1枚にする
- 2026年1月1日に取適法が施行された。型の無償保管は「不当な経済上の利益の提供要請」の観点から見られている。発注元が型の置き場所を決めるときが、補給品の少量生産を受けられる工場の出番
KOKONATSでは、製造業に特化した営業代行・インサイドセールスを行っています。ターゲットの選定からリスト作成、アポイント獲得、断られた相手の追客までを一貫してお引き受けします。
次の型がどの工場の棚に置かれるかは、型が起きる前に決まっています。
初期費用0円。料金・支援の流れはこちらから。
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よくある質問
新しい型と型移管、どちらから当てるべきですか?
今月・来月の稼働を埋めたいなら型移管が先です。型がすでにあり、4M変更の承認が通れば量産に入れるからです。ただし型移管は、相手に加工先を動かす事情がなければ起きません。新しい型は時間がかかる代わりに、機種の立ち上げ時期からこちらで当てる時期を読めます。件数を分けて、両方を並行して回してください。
型を自社で作れず、金型メーカーに頼んでいます。不利になりますか?
不利にはなりません。発注元が見ているのは、型から量産までを一つの窓口で受けられるかです。付き合いのある金型メーカーがあり、型の手配から型保全まで話を通せるなら、それを条件として出してください。自社で型を作るかどうかより、型が壊れたときにどれだけ早く直せるかのほうが、量産中の発注元には重く見られます。
補給品や少量の仕事ばかりになりませんか?
第3章の④だけを狙うと、そうなります。④は補給品の少量生産を受けられる工場が候補に挙がる時期ですが、量産の型が入る①②③とは別の入り口です。④で取引が始まった発注元に、次の新機種の話が出たときに声がかかる関係をつくる——④は、そのための入り口として使ってください。
自動車部品以外でも、4M変更の話は当てはまりますか?
品質マネジメント規格IATF 16949が変更の管理を要求しているのは自動車部品の分野で、ここがもっとも厳格です。家電や産業機械でも、加工先の変更を届け出る仕組みを持つ発注元は多くありますが、どこまで求めるかは発注元ごとに違います。最初の接点で、加工先を変えるときの手続きを聞いておくと、型移管の話がどれくらいで進むかの見当がつきます。
製造業の新規開拓そのものを、もう少し広く知りたいのですが
業種別に記事を用意しています。あわせてご覧ください。



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