「この敷地いっぱいに、できるだけ高い建物でパースを作ってください。」
「上の階が斜めに削れているのは、パースのミスではないですか?」
外観パースの依頼で、建物の形そのものが法規制の影響を受けているケースは珍しくありません。代表的なものが、建物の高さを斜めの線で制限する「斜線制限」です。図面では階段状や斜めに切り取られたボリュームとして現れるため、パース上でも「なぜこの形なのか」が分からないまま進むと、確認の手戻りにつながります。
この記事では、斜線制限のある敷地の外観パースを依頼する前に確認したい5つのことを、国土交通省 住宅局市街地建築課の資料「建築基準法(集団規定)」(参考資料)をもとに整理します。なお、法規制への適合の判断は設計者・確認申請先が行うもので、当社は判断をしません。この記事は法的な助言ではなく、パース依頼時の確認点をまとめたものです。
① 斜線制限は3種類あり、起点がそれぞれ違う
資料では、高さを制限する斜線として「道路斜線制限(法第56条第1項第1号・第2項)」「隣地斜線制限(法第56条第1項第2号)」「北側斜線制限(法第56条第1項第3号)」が示されています。どれも「ある起点から斜めに引いた線の内側に建物を収める」という考え方ですが、起点が違います。
道路斜線は前面道路の反対側の境界線、隣地斜線は隣地境界線、北側斜線は真北方向の敷地境界線(または道路の反対側境界線)が起点とされています。当社の整理として、同じ敷地でも「どの方向の面が削れるか」は、制限の種類と敷地の向きで変わると考えられます。パースのカメラ位置を決める前に、どの面が斜線の影響を受けているかを設計者に確認しておくと、見せたい面の整理がしやすくなります。
② 数字は用途地域などで変わる。図面の数値が前提になる
資料に記載された主な数値を、パース依頼時の確認点とあわせて整理すると次のとおりです。
| 種類 | 資料の記載(要旨) | 当社の整理(パースでの確認点) |
|---|---|---|
| 道路斜線 | 図では住居系用途地域1.25/1、商業系用途地域1.5/1。適用範囲(適用距離)と勾配は用途地域ごとに整理されている(適用距離は20m~50mなど) | 道路側のボリュームの形を図面で確認 |
| 隣地斜線 | 立上り20m又は31m、勾配1.25/1または2.5/1(用途地域により異なる)。一定の高さ以上の建築物に適用 | 高い建物の上部の形状を確認 |
| 北側斜線 | 勾配1.25/1、立上りは低層住居専用地域5m・中高層住居専用地域10m | 北側の面の屋根・上階の形状を確認 |
数値は地域・条件で変わるため、パースは設計者が確定した図面の形を前提に作ります。
※表は資料の要旨で、法規への適合を判断するものではありません。
資料には、隣地斜線は一低専・二低専・田住以外の地域に適用される旨も記載されています。どの制限が自分の敷地に当てはまるかは、用途地域などによって異なります。パースの制作側が数値から形を導くのではなく、設計者が確定した立面図・断面図の形をそのまま立体化するのが基本です。
③ セットバックすると、制限の見え方も変わる
資料の道路斜線の項目には、前面道路からAm後退して建築する場合、反対側の境界線もAm後退しているものとして制限を適用する、という緩和の考え方が記載されています。隣地斜線についても、後退した場合は起点が移動すると示されています。
これはパースの形に直結します。建物を道路側に出すか、後ろへ下げるかで、削れ方や外構の取り方、カメラから見える面積が変わります。計画の途中で配置が変わると、パースの再作成が必要になることがあるため、配置が固まってから依頼するか、変更の可能性がある旨を最初に伝えておくと、手戻りの見通しが立てやすくなります。カメラ位置や構図の決め方は、別記事「建築パースのカメラ位置と構図の決め方5つの基準」で紹介しています。
④ 「天空率」で形が変わる場合も、検討は設計側
資料では、法第56条第7項の「天空率による緩和」が紹介されています。斜線制限により確保される採光・通風等と同程度以上のものが天空図で確かめられた場合に、斜線制限を適用除外とする仕組みで、平成14年に創設されたとされています。
これは当社の整理ですが、天空率を使った計画では、斜線のみに沿った形とは違うボリュームになりうる、という点は押さえておきたいところです。天空率の検討や、制限に適合しているかどうかの確認は、設計者と確認申請先の領域です。パース側は、確定した形をそのまま表現します。「斜線に収まっていないように見える」と感じた場合は、パースを直す前に、設計者へ最新の図面を確認してもらうほうが確実です。
⑤ 依頼時は「確定した図面」と「変更の可能性」を伝える
斜線制限のある敷地の外観パースを依頼するときは、次の4点を伝えておくとスムーズです。
- 設計者が確定した立面図・断面図(高さの寸法入り)と配置図
- どの面が斜線の影響で削れているか(設計者から聞いた範囲で構いません)
- 配置や高さが今後変わる可能性の有無と、その時期
- パースで特に見せたい面(道路側か、北側かなど)
数値や適用の可否は地域や条件で異なるため、パース側が独自に判断して形を補正することはしません。必要な資料の全体像は、別記事「建築パースに必要な資料と渡し方7項目」にまとめています。
斜線の形は「なぜその形か」を知っておくと、パースの打ち合わせで説明しやすくなります。確定した図面と変更の可能性、この2つを最初に共有しておくことが、手戻りを減らす助けになります。
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