【2026年版】マレーシアのペット事情|狂犬病の現状と、飼う前に知っておくお金・ライセンス・輸入手続き
「街に犬や猫がたくさんいるけれど、触っても大丈夫なのだろうか」
「日本から犬を連れて行きたい。マレーシアでペットを飼うのは現実的なのか」
マレーシアへの引っ越しが決まった方から、こうした相談をいただくことが増えています。マレーシアは通年で気候が安定しており、犬や猫と暮らしやすい面がある一方で、狂犬病の流行が今も続いている州があり、コンドミニアムの規約や自治体のライセンスといった日本にはない手続きも待っています。この記事では、街で見かける犬猫の実情、狂犬病の2026年時点の状況、飼育にかかる費用、KLでのライセンスと住まいのルール、そして日本との間でペットを移動させる手続きを順に整理します。
街で見かける犬や猫は「野良」なのか
マレーシアで暮らしていると、住宅街や店の軒先で犬や猫を頻繁に見かけます。飼い主のいない個体も多いのですが、日本人が想像する「野犬」とは少し違います。どの犬も人に慣れていて、こちらから手を出さなければまず近寄ってきません。撫でてほしそうに擦り寄ってくる個体もいます。
その一方で、幹線道路では轢かれた犬を見る機会が少なくありません。公園には捕獲用のケージが設置され、捕まった犬はそのまま処分される運用が続いています。それでも街の犬の数が目に見えて減らないのは、捕獲のペースを上回る勢いで新しい個体が街に出てくるからです。動物病院の前に子猫が置き去りにされているという話も、KL近郊では珍しくありません。受け入れ側のシェルターも常に満杯で、引き取り先が見つからないケースが積み上がっています。
なぜ手放されるのか。理由は一つではありませんが、共通しているのは「飼い始める前に、必要な費用と生活の制約を計算していなかった」という点です。医療費が想定を超えた、家族にアレルギーが出た、住まいの規約で飼えなくなった、噛み癖が出て手に負えなくなった——どれも、事前に情報を集めていれば避けられた可能性のあるものです。つまりこれは個人の資質の問題ではなく、情報と準備の問題です。逆に言えば、費用とルールを先に把握しておけば、日本と同じように長く一緒に暮らせます。
狂犬病はまだ終わっていない(サラワク州)
日本で暮らしていると意識しませんが、マレーシアのボルネオ島側・サラワク州では2017年7月に狂犬病の流行が宣言され、その後も封じ込めが完了していません。州保健当局の集計では、流行宣言以降の累計で人の狂犬病は94例、うち87例が死亡しており、致死率は92.6%に達します。発症後の救命はほぼ不可能という、極めて重い数字です。
2026年に入ってからも状況は続いており、1月1日から5月2日までに州内で報告された動物咬傷は8,171件、週平均で約480件のペースです。同期間の人の死亡例は4件が報じられています。注目すべきは内訳の変化で、近年の症例は猫による咬傷・引っかき傷が62.2%と犬(36.5%)を上回り、さらに原因動物の68.6%が野良ではなく飼われている動物でした。「自分の家の猫だから安全」という思い込みが最も危ないという構図です。
1. 噛まれた・引っかかれたら、その場で判断しない
傷が小さくても自己判断で済ませないのが鉄則です。まず流水と石けんで15分程度洗い流し、そのうえで医療機関を受診してください。狂犬病は発症するとほぼ助かりませんが、曝露後の処置が間に合えば防げる病気です。
2. サラワク州とその他の州は状況が異なる
流行が長期化しているのはサラワク州です。半島部の状況は州ごとに異なり、時期によっても変わるため、渡航・移住の前に保健省や州保健局の最新発表を確認してください。ここでの記述は2026年7月時点の報道・当局集計に基づくもので、以後の変化は反映されていません。
3. これは医学的助言ではありません
ワクチンの要否・時期は個人の状況で変わります。渡航前の予防接種を含め、必ず医師に相談してください。
飼う前に、お金を先に計算する
マレーシアでの飼育費は「日本より安い」と言われますが、実際に効いてくるのは月々のフード代よりも医療費です。2026年時点の目安を整理すると次のようになります。
| 項目 | 猫 | 犬 |
|---|---|---|
| フード・猫砂など毎月の消耗品 | RM50〜200/月 (砂だけで月8〜10kg) |
RM50〜200/月 (体格でぶれ幅大) |
| ワクチン(1本あたり) | RM40〜80 | RM50〜100 |
| 不妊・去勢手術 | 公的クリニックRM80〜300 民間RM250〜800 |
公的クリニックRM150〜500 民間RM400〜1,500超 |
| 初年度の合計 | RM4,000〜10,000(2年目以降はRM2,000〜6,000/年) | |
| 2017年当時の体感値 | RM150/月 | RM300/月 |
結論として、月々の出費はRM150〜300で収まっても、初年度はRM4,000〜10,000を見込むのが現実的です。
安く抑える手段もあります。SPCA Selangorが運営する低価格の不妊手術クリニック(Klinik Kembiri)では、地域猫・野良の手術がRM50〜100程度の負担で受けられます。一方で、夜間や休日の救急対応、レントゲンや入院を伴う治療は民間の動物病院に頼ることになり、そこは日本と同様にまとまった金額になります。「普段は安く、いざというときは高い」と考えておくのが安全です。
KLで犬を飼うなら、ライセンスと住まいの規約が先
犬はライセンス制、猫は多くの自治体で不要
クアラルンプールでは、飼い犬の登録はDBKL(クアラルンプール市庁)のオンライン窓口「e-DOG」で行います。ライセンスは1頭につき1件・1年更新で、更新を忘れると無登録状態になります。料金は情報源によって記載が分かれており(1頭RM10という案内と、RM60・不妊手術済みならRM40・小型犬RM20という報道が併存)、改定の反映状況もはっきりしません。金額は必ずe-DOGの画面か自治体窓口で確認してください。猫についてはDBKL・MBPJ・MBPPなど多くの自治体でライセンスは不要ですが、マイクロチップによる任意登録を導入する動きも出ています。
コンドミニアムは「1ユニット1頭・管理組合の同意書つき」が基本
ストラタ物件(コンドミニアム・サービスアパート)でDBKLの犬ライセンスを申請する場合、原則としてDBKLが認めた小型犬1頭までで、申請にはJMB/MC(管理組合)が発行する同意書(Surat Kebenaran)の添付が求められます。つまり、管理組合が犬の飼育を認めていない建物では、そもそもライセンスが取れません。物件を決める前に規約(House Rules)を確認するのが鉄則です。賃貸契約時の確認事項についてはマレーシアの賃貸契約でトラブルになりやすいポイントも参考にしてください。
禁止犬種と、周囲への配慮
マレーシアではPit Bull系(American Pit Bull Terrier、American Staffordshire Terrier、Staffordshire Bull Terrierなどを含む)、American Bulldog、Neapolitan Mastiffなどが飼育禁止の対象とされ、Rottweilerのような犬種は追加の条件が課されることがあります。禁止・条件つきの範囲は自治体の細則で変わるため、犬種を決める前に確認してください。
もう一つ、日本にはない配慮があります。マレーシアは多民族・多宗教の国で、宗教上の理由から犬に触れることを避ける人が一定数います。共用廊下やエレベーター、プールサイドではリードを短く持ち、同乗を避けたい人がいれば見送る。この一手間が、集合住宅で犬と暮らし続けられるかどうかを分けます。
日本から連れて行く・日本へ連れ帰る
ペットを連れた移住で最も時間がかかるのは、航空券ではなく検疫関連の書類です。マレーシア側(半島部)への持ち込みで一般に求められるのは以下の要素です。
- MAQISの輸入許可(Import Permit): 到着前に取得。有効期間が短い(30日程度)ため、出発日から逆算して申請します。
- ISO規格のマイクロチップ: 番号がすべての書類に一致して記載されている必要があります。
- 狂犬病ワクチン: 不活化ワクチンで、出発の30日以上前に接種。証明書にはチップ番号・接種日・有効期限の記載が必要です。国によっては抗体価検査も求められます。
- 政府獣医が発行する健康証明書(原本): 検査時点で伝染性疾患がないことの証明。
- その他のワクチン: 犬はDHLPP(ジステンパー・肝炎・レプトスピラ・パラインフルエンザ・パルボ)とBordetella、猫はFVRCP。出発の2週間以上前が目安です。
- 内部・外部寄生虫の駆除: 線虫・条虫・ノミ・マダニの処置を出発の2〜7日前に実施。
- 到着後の検疫: MAQIS指定の検疫施設に一定期間留置されます。ここが最も情報が揺れている部分です。「非指定国からは最低7日」という案内と、「2024年12月の改訂で到着後14日以上」という案内の両方が流通しており、どちらが現行かは公式文書だけでは確定できませんでした。日数を前提に予定を組む前に、必ずDVS/MAQISへ直接確認してください。
日本は狂犬病の発生がない国として、マレーシア側の「指定国(scheduled countries)」に挙げられています。ただし指定国であることが検疫免除を自動的に意味するわけではなく、日本からでも抗体価検査や一定期間の検疫が求められるという記載も見られます。逆に、日本へ連れ帰る場合は日本側(動物検疫所)の要件が別に課され、マレーシアは狂犬病発生国の扱いになるため、出国の6か月以上前から準備を始める必要があります。どちらの方向でも、動き出しは「半年前」と考えておくのが安全です。
迎える前に確かめる5つのこと
1住まいの規約で飼えるか。管理組合の同意書が取れるか。
2初年度RM4,000〜10,000と、急病時の数千リンギットを負担できるか。
3散歩と留守番の時間を、平日の生活に組み込めるか。
4帰国が決まったときに連れ帰る前提か。連れ帰るなら半年前から動けるか。
5ペットショップで買うのか、シェルターから迎えるのか。
5番目については、選択肢が広がっています。SPCA Selangor、PAWS、Furry Friendsといった団体はオンラインでの里親募集や面会の仕組みを整えており、以前より探しやすくなりました。地域猫の管理についても、犬で先行したTNR(捕獲・不妊手術・戻す)の枠組みを猫にも広げる動きがあり、2026年5月にはペナン島市庁(MBPP)が猫を対象としたTNRの導入検討を表明しています。処分ありきではない方向へ、少しずつ動いているところです。
ベランダや中庭の狭いスペースにつなぎっぱなしにすると、もともと穏やかな犬でもストレスで気が荒くなり、飼い主に向かって攻撃的になることがあります。これは犬の性格の問題ではなく環境の問題です。飼える環境を先に用意する。順番を逆にしないことが、街に手放される動物を増やさない一番の方法です。
一次情報の確認先
手続きと費用は年度で変わります。最終確認は必ず公的な窓口で行ってください。
- ペットの輸出入・検疫: マレーシア獣医局(DVS)Animal Passport ポータル / MAQIS(Tel: 03-8870 1619、Email: feedback.maqis@moa.gov.my)
- 日本への持ち込み: 農林水産省 動物検疫所
- KLの犬ライセンス: DBKL e-DOG
- 狂犬病の発生状況: 保健省(KKM)および各州保健局の発表
- 不妊手術・里親: SPCA Selangor(Klinik Kembiri)、PAWS、Furry Friends



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