【設備まで描くか】外観パースで屋上・外壁の設備機器を扱う5つのポイント|「すっきり見せて」と実物のずれ

たとえば、こんな食い違いがあり得ます。
「屋上の機器は、パースには描かなくていいよ。すっきり見せたいから。」
「でも、図面には室外機も太陽光パネルも載っているんだよな。」

外観パースの依頼文に「すっきり見せて」と書くとき、その「すっきり」は何を指しているでしょうか。設備のない建物でしょうか。それとも、設備が目隠しの内側に収まっている建物でしょうか。

屋上や外壁の設備は、図面にあっても、パースに描くかどうかを決めないまま進めると、制作側は判断できません。依頼側も、仕上がりを見て初めて「屋上の立ち上がりが思っていたのと違う」と気づくことになりかねません。

この記事では、屋上・外壁の設備機器(室外機・屋上設備・太陽光パネルなど)を外観パースにどこまで描くかを決める5つのポイントを、国土交通省・環境省・自治体の資料をもとに整理します。景観法の届出手続そのものは、別記事「景観法の届出・事前協議で求められる完成予想図の確認点5つ」で扱っているため、ここでは「設備を描くか」に絞ります。

なお、資料に書かれていることと、筆者の見立てやパース依頼上の助言は、文を分けて書きます。後者には「筆者の見立て」と添えます。法規への適合の判断は、設計者や行政の領域です。

① 「すっきり」が設備を消すことなのか、隠した姿を描くことなのかを決める

新宿区の「設備等修景の手引き」のコラムには、「建築物が立派なデザインであっても、設備等がむき出しであったり、本体と同様の配慮がされていないアンバランスなものであったりすると、本体にも違和感を与えることになります。」とあります。

同じコラムは「屋上は見えないのでは?」という問いに、足元の道路から見えない位置でも遠方の歩行者の目線が届く可能性や、高台や中高層建築物からも目に付く可能性を挙げて答えています。ただし、これは高低差のある新宿区の地形を背景にした記述で、すべての地域に当てはまるとは限りません。

ここからは筆者の見立てです。依頼文の「すっきり」は、設備を消す意味にも、隠れる設計という意味にも読めます。設備を描かずに済ませると、実物で目隠しが立ち上がる場合に、屋上の輪郭や高さが食い違うおそれがあります。食い違いが出やすいのは、次の3つの場面だと考えます。

  • 屋上の設備をルーバーやパラペットで囲む設計のとき(目隠しそのものが外観に現れる)
  • 高所から見下ろすカメラ位置で、屋上が画面に入るとき
  • バルコニーや外壁に室外機が並ぶ面を、正面に見せる構図のとき

カメラ位置の考え方は、別記事「建築パースのカメラ位置と構図の決め方5つの基準」とあわせて整理すると決めやすくなります。逆に言えば、屋上が画面に入らない視点なら、屋上設備を描かない判断も成り立ちます。

② 公的資料が「設備」と呼ぶものを、描く候補の一覧として使う

新宿区の手引きは、対象とする「附帯する設備」として、空調室外機、水槽設備(防火用、上水用)、ダクト・排水管類、アンテナ類、省エネ設備、パットマウント、付随する計器類を挙げています。この項目以外の設備についても、手引きを参考に「出来る限り、修景の工夫をするようにしてください」とされています。

吹田市の景観デザインマニュアルは、屋上工作物等を「屋上に設置されるもの全て」、附帯設備を「建築物に附属する設備類(受水槽、室外機、配管、給湯器、蓄電池、太陽光パネル 等)」と整理しています。国土交通省の「景観計画策定・改定の手引き(策定編)」の検討例③にも、「室外機・配管設備・ダクト類や屋外階段」を扱う項目があります(詳しくは⑤)。

太陽光パネルは、資料によって対象が違います。環境省の「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」の対象は、環境影響評価法などの対象とならない10kW以上の事業用太陽光発電施設で、建築物の屋根、壁面又は屋上に設置するものは除くとされています。一方、国土交通省の手引き(再生可能エネルギー施設編・令和8年4月)は、太陽光発電設備を地上設置型、高架・支柱型、建築物に付帯して設置される屋根置き型などに分け、建築物に付帯するもの(屋根・屋上・壁面等)には建築物の届出行為の基準が適用される、と図に注記しています。

筆者の見立てでは、これらの一覧は、図面に載っている設備を拾うときの「描く候補のリスト」として使えます。ただし、一覧に載っていることは、パースに描く義務を意味しません。どれを描くかは、パースの目的と、図面に何が載っているかで決まります。

③ 目隠しや修景は、機器を消した姿ではなく「隠した結果の姿」として描く

吹田市のマニュアルの「屋上工作物等・附帯設備」の項は、冒頭に「屋上又はバルコニー、壁面に設置する設備機器は床置き、ルーバーで囲う、地下に収納するなど、まちなみに配慮し、目立たないようにしてください。」と掲げています。

長岡京市の景観形成ガイドライン(景観形成基準の解説・例示)は、「屋上工作物や塔屋等は建築物本体とのバランスを考慮し、突出した印象にならないよう配慮する必要があります。」と述べ、解説の中で、建築物本体と同系色のルーバー等で囲う、屋根に収納する、パラペットを立ち上げて見えないようにする、道路等の公共用空地から見えにくいよう建物の奥の方へ配置する、といった方法を例として挙げています。これは解説であり、同じガイドラインの基準表には、屋上工作物の調和に関する基準や、塔屋等の高さに数値を定めた基準(景観区域によって異なる)もあります。

新宿区の手引きは、目隠しルーバーの色について、建物と同色か同系色の薄い色だと馴染みやすく、空の高いところでは濃い色だと目立ちすぎる傾向があるため、ベージュやグレー等の薄い色が調和しやすい傾向にある、と書いています。

太陽光パネルについては、吹田市のマニュアルが、陸屋根に設置する場合は「パネルの角度やパラペットを立ち上げるなどの工夫をし、周囲からの見え方に配慮しましょう」と、図解に添えて呼びかけています。新宿区の手引き(p.17)は、屋根への設置全般について、「屋根の色と異なるパネルや乱雑な並べ方は違和感が生じる。屋根の色と調和したパネルの色とするとともに、整然とした印象の配置となるようにする」と書いています。

筆者の見立てでは、これらの手法は、いずれも形・高さ・色が外観に現れます。ルーバーやパラペットを描かずに機器だけを省くと、屋上の輪郭や色が実物とずれます。逆に言えば、機器が目隠しの内側に完全に隠れる設計なら、目隠しの高さと色を図面どおりに描くことを優先し、機器の細部は描かない、という割り切りもできます。

外観(立面)の概念図 ルーバーで囲った屋上設備 太陽光パネル パラペット 設備も目隠しも描かない 場合の屋上ライン(破線) バルコニーの室外機 腰壁で下側を隠した例 壁面と同色の 配管・ダクト 凡例 設備機器 ルーバー・パラペット・腰壁 概念図です。寸法・配置は実際とは異なります
概念図です。破線は設備も目隠しも描かない場合の屋上ラインで、パラペットもこの線には含めていません。ルーバーで囲った屋上設備はその線より上に立ち上がります。図の太陽光パネルはパラペットの上端からわずかに見える例、バルコニーの室外機は腰壁で下側が隠れる例、配管は壁面と同色にした例です。望ましい設置例を示す図ではなく、寸法・配置・数は実際とは異なります。
設備 公的資料に出てくる修景の例 出典 パースの依頼で先に決めること(筆者の整理)
バルコニー・外壁の室外機 バルコニー床置きとしパネル等で隠す。ルーバー等で目隠しする 新宿区の手引き 腰壁や手すりに隠れる部分と見える部分を、平面図・立面図で確認する
屋上の設備機器 ルーバーで囲う。同系色のルーバー等で囲う。パラペットを立ち上げる。屋根に収納する 吹田市のマニュアル・長岡京市のガイドライン 目隠しの高さと色を図面どおりに描く。機器まで描くかを決める
屋根・陸屋根の太陽光パネル 陸屋根ではパネルの角度やパラペットを工夫する。屋根の色と調和した色にし、整然と配置する 吹田市のマニュアル・新宿区の手引き パネルの範囲・向き・色と、パラペットとの高さの関係を図面で確認して描く
壁面の配管・ダクト 道路などの公共空間から見えない位置に配置する、ルーバーなどで隠す、壁面と同色にする 吹田市のマニュアル 壁面に出る経路を描くか、壁と同色の細い線にとどめるかを決める

設備は「描くか描かないか」の二択にせず、目隠しの外形まで含めて決めておくと、実物とのずれを減らしやすい。これが、この記事としての目安です。

※第4列は筆者の整理で、公的な基準ではありません。第2列は各資料の例示・解説の要約で、すべての地域で求められるものではありません。

④ 図面から設備を拾うときは、立面図だけで終わらせない

国土交通省官庁営繕部の「建築工事設計図書作成基準の資料(令和2年改定)」は、立面図の記載事項の表の直前で「立面図は、建物の外観及び形状を表現する。」とし、記載事項の「各種附属物等」に、避雷針、ベントキャップ、高置水槽、クーリングタワー、アンテナなどを挙げています。備考には「工事対象外のものは点線等で明示する。」とあります。平面図の記載事項の「各種付属物等」には、換気口や設備基礎など別の項目が並びます。

ただし、この基準は官庁施設の営繕工事のうち建築工事の図面向けで、民間の案件の図面が同じ書き方とは限りません。また、立面図の表には室外機や太陽光パネルの語は出てきません。

筆者の見立てでは、設備は図面によって載る場所が違う可能性があるため、立面図だけで拾い終えないほうが安全です。拾い方の例は次のとおりです。

  • 立面図で、外壁や屋上に見える付属物に印を付ける
  • 屋根や屋上の図面(名称は案件による)で、屋上の設備と目隠しの範囲を確認する
  • 各階の平面図で、バルコニーやテラスの室外機置き場を確認する
  • 設備の図面があれば、機器の位置と大きさを確認する
  • 点線などで「工事対象外」と示されたものは、パースに描くか設計者に確認する

図面の種類や記載範囲は案件ごとに違います。図面にない設備が付く可能性があるときは、設計者に確認します。推定で描く場合は、推定であることを書き添えて渡します。

⑤ 自治体の基準は地域ごとに違う。適用の有無と範囲を確認して、依頼文に落とす

国土交通省の「景観計画策定・改定の手引き(策定編)」は、旧市街地を想定した検討例③で、景観形成基準の一例を示しています。「建築に附帯する設備等」の項目には、「建築物に附帯する室外機・配管設備・ダクト類や屋外階段などがある場合は、通りから見えないよう設置する。やむを得ず露出する場合は、目隠し等で目立たなくなるよう配慮する。」とあります。

ただし同じ手引きは、検討例について「実際の地域における景観特性等を参考に作成したものですが、当該地域が作成する景観計画等とは関係ありません」と注記しています。基準の一例についても、「実際には当該地区の建築物等の景観の構成要素等を考察し十分な検討の上で設定することが重要です」と書いています。検討例は、実際の基準ではありません。

実際の基準の例として、新宿区の手引きは【景観形成基準】(地区区分:区全域)として「附帯する設備等は、建築物と一体的に計画するか、歩行者や水平方向からの見え方に配慮し、緑化や目隠しなどによる修景をする。」を掲げています。吹田市のマニュアルは景観形成基準を解説する資料で、項の冒頭は「してください」、図解に添えた説明は「しましょう」という語尾です。どこまでが基準本体の文言なのかは、この資料からは特定できません。

同じ「設備の目隠し」でも、資料ごとに、基準なのか、解説なのか、検討例なのかが違います。届出の際に守るべき表現かどうかは、資料名だけでは分かりません。

国土交通省の再生可能エネルギー施設編は、再エネ施設の提出図書の例として、付属設備等(パワコン、キュービクル、蓄電設備、配線、施設の保護柵を含む)の色彩が分かる資料と、「最終的な仕上がりイメージを共有し、景観への影響や配慮について評価を行うため作成」するパース図及びフォトモンタージュを挙げています。これは再エネ施設向けの例で、屋上設備一般の提出図書を定めたものではありません。届出書類の整理は、別記事「景観法の届出・事前協議で求められる完成予想図の確認点5つ」に任せます。

ここからは筆者の見立てです。自治体の基準が設備に及ぶかどうか、パースで何を示せば足りるかは、設計者と自治体の窓口で確認することで、パースの制作側や依頼側が判断できる範囲を超えます。依頼側にできるのは、確認した結果を依頼文に書くことです。

依頼時には、次の4点を伝えておくとスムーズです。

  • 設備を描く方針(描かない・目隠しの外形まで・機器まで)と、描かない場合に実物で目隠しが立ち上がる範囲の扱い
  • 設備が載っている図面(立面図・屋根や屋上の図面・平面図・設備の図面)と、図面に載っていない設備の有無
  • 室外機や太陽光パネルの位置・数が確定しているか、仮置きか
  • 設備の見え方が景観上の論点になるかを設計者・自治体に確認した結果と、パースで見せる視点(地上か高所か)

必要な資料の全体像は、別記事「建築パースに必要な資料と渡し方7項目」にまとめています。「すっきり見せて」という一言は、描く方針と目隠しの範囲、設備が載っている図面、位置・数が確定か仮置きか、自治体への確認結果と見せる視点の4つに分けて初めて、制作側に伝わる指示になります。

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