「売上の7割が1社。分かってはいるけれど、動けていない」——金型メーカーの社長から、よく聞く話です。
これは危機感がないからではありません。金型という商材は、構造的に一社依存になりやすいのです。型構造の癖も、トライで出た不具合の履歴も、付き合いの長さそのものが資産になる。だから同じ相手に発注が集まり、そこから抜けられなくなります。
結論を先に言えば、依存から抜ける方法は「営業を頑張ること」ではありません。金型メーカーが自社の意思で当てに行ける相手は3つに整理できます。そのどこを太くするかを決めることです。この記事では、その3つのルートと、いつ当てるべきか、そして新規先と最初に握るべき条件までを整理します。
こんなお悩み、ありませんか?
- 売上の大半を1〜2社が占めていて、そこが止まると一気に危ない
- 新規開拓しないといけないと分かっているが、社長自身が型設計も見積もりも現場も見ている
- 相見積もりで海外製の型と並べられ、単価で勝てない
- ホームページはあるが、図面つきの引き合いは年に数件しかない
ひとつでも当てはまるなら、それは貴社の営業努力が足りないからではなく、金型の発注が「前回と同じところ」に流れやすい構造だからです。
1. なぜ金型メーカーは特定の取引先に依存しやすいのか
① 発注は「前回と同じところ」に流れる
型構造の癖、入れ子(型の中に組み込む交換可能な部品)の割り方、抜き勾配やゲート位置の判断、トライ(初回の試し打ち。T0・T1などと呼ばれます)で出た不具合とその手直し履歴——これらは図面に残らない情報です。発注側から見れば、前回と同じメーカーに出すのがいちばん安全で速い。
つまり新規参入の壁は、価格だけではありません。価格で並べられたうえに、履歴の蓄積という見えない差がある——ここが金型の難しさです。
② 型代だけでは利益が出にくい
型代(イニシャル費用)は相見積もりで叩かれます。放電加工やワイヤーカット、磨きの工数を積み上げても、そこだけで見れば薄い。量産中の型メンテナンスや補修、摩耗した型の作り替え、次の機種の型まで含めて、ようやく採算が立つ構造です。
つまり金型の営業は「1件を取る営業」ではなく「続く関係を1本増やす営業」だということです。だからこそ、依存先が減ったときのダメージが大きくなります。
③ 新規は、図面が来ないと始まらない
金型の商談は、引合と見積依頼(RFQ)から動きます。引合→見積→内示→注文書という流れのうち、新規の会社には最初の引合そのものが来ません。「見積もりをください」と言われる関係になるまでが遠い——ここが新規顧客開拓のいちばんの難所です。
2. 金型メーカーの販路開拓・営業手法4つと、向き・不向き
金型メーカーの新規顧客開拓の手段は、大きく4つです。どれが正解かではなく、貴社の体制でどれが回るかで選びます。
| 手法 | 向いている場面 | 弱点 |
|---|---|---|
| 紹介・既存取引先の深掘り | 一度入ったメーカーは機種が複数あり、次の型につながる | 自社の意思で件数を増やせない。紹介の輪は既存客の周辺に広がるため、依存はむしろ深まる |
| 展示会(インターモールド・金型展、機械要素技術展など) | 現物とサンプルを見せられる。技術で選ぶ相手に届く | 出展費用と人手がかかり、開催時期に合わせるしかない |
| Web集客・SEO・イプロスものづくりなどのポータル | 図面を持って探している調達担当を拾える | 成果まで時間がかかり、件数と時期が読めない |
| テレアポ・インサイドセールス | 当てる先と時期を自社で選べる。展示会の前後にも動かせる | 現場が忙しいと架電が止まる。外注する場合はノウハウが社内に残りにくい |
紹介は最も確度が高い一方で、依存から抜けるという目的には向きません。紹介は既存の取引先の周辺に広がるからです。展示会とWeb集客・SEOは新しい層に届きますが、どちらも「相手が動いたとき」にしか出会えません。
当てる先と時期をこちらで決められるのは、テレアポ・インサイドセールスです。そしてこの手法だけが、「誰に・いつ当てるか」の設計を必要とします。
3. 依存から抜ける|金型メーカーの新規顧客開拓で狙う3つのルート
「新規開拓」を漠然と考えると手が止まります。商社経由も含めれば発注元は多岐にわたりますが、金型メーカーが自社の意思で当てに行ける相手は、実質3つに整理できます。
| ルート | 取れる仕事 | 立ち上がりと注意点 |
|---|---|---|
| 樹脂・プレス成形メーカー(金型を使う側) | 射出成形金型・プレス金型の新規製作、量産中の補修・入れ子交換・作り替え | 本命。量産まで続く関係になりやすい。ただし既存の型屋がいるため、いきなり主力機種の型は動かない |
| 完成品メーカーの設計・調達部門 | 新製品の試作型・量産型。設計段階からの相談 | 単価と継続性は高い傾向。ただし新機種の開発サイクルに乗る必要があり、期を外すと次まで待つ |
| 同業の金型メーカー(容量オーバーの外注) | 部分外注(入れ子・電極・加工工程だけなど) | 立ち上がりは速い。下請けなので単価は上がりにくい |
この3つは性格がまったく違います。同業外注はすぐ動くが単価が低い。完成品メーカーは単価が高いが時間がかかる。成形メーカーはその中間で、量産まで続く。
ただし、ひとつ正直に書いておきます。同業の金型メーカーへの外注は、主力取引先と同じ景気の波を受けます。自動車が減産すれば、成形メーカーも同業の型屋も同時に手が空く。これだけでは分散になりません。
依存から抜けるという目的なら、同業外注で足元の稼働を埋めながら、いま取引のない業界の成形メーカーと完成品メーカーを時間をかけて増やす——この組み合わせで初めて構成比が意味を持ちます。医療機器、食品機械、住宅設備など、いまの主力と景気の波が違う業界を選ぶことが要点です。
なお、既存の主要取引先を切る必要はまったくありません。売上構成比が動く水準まで新しいルートを太くできれば、依存のリスクは下がります。年に1〜2社でも、5年続ければ構成は変わります。

4. いつ当てるか|金型の引き合いが動くタイミング
金型の営業は、リストの質と同じくらい「時期」が成果を左右します。引き合いが出る時期と、名前を覚えてもらうべき時期はずれているからです。
- 新機種の開発サイクル:完成品メーカーの型は、新製品の企画が動いた時点で発注先の検討が始まります。見積依頼が出てから声をかけるより、その前に名前が入っているほうが有利です。
- 既存型の寿命:量産で回っている型は、ショット数に応じて摩耗し寿命が来ます。補修・入れ子交換・作り替えの相談は、この周期で出ます。相談は通常、既存の型屋に行きます。だからこそ、その時に名前が出る位置にいるかが分かれ目になります。
- 展示会の前後:インターモールド・金型展や機械要素技術展の時期は、相手側も情報収集モードに入ります。出展しない場合でも、この時期は接触の入り口として使えます。
- 期初と予算:多くの企業では期初に予算枠が決まります。相手の決算月を把握しておくと、提案の時期を合わせやすくなります。
KOKONATSの場合:担当者がつかまらない相手には、最大6回まで架電するルールで運用しています。一度で判断せず、断られた相手も追客データとして蓄積し、時期を変えて再アプローチする設計です。金型のように「今はないが、次の機種では動く」相手が大半の商材では、この追客の仕組みがそのまま受注につながります。
5. 社長ひとりで回すなら|週1時間でできる最小手順
ここまで読んで「そうは言っても、自分ひとりでは無理だ」と思われたかもしれません。外部に頼まずに始めるなら、やることを絞るしかありません。
- 時間を先に固定する。週1時間でかまいません。図面や見積もりの合間にやろうとすると、必ず後回しになります。曜日と時間を決めて、そこだけは電話に使う。
- リストは20社だけ作る。いまの主力と景気の波が違う業界を1つ選び、その業界の成形メーカーを20社。展示会の出展社リストは公開されているので、そこから拾えます。100社作ろうとすると、リスト作りで力尽きます。
- 断られた先を記録に残す。社名・部署・担当者・断られた理由・次に連絡する月。これだけで構いません。金型は「今はない」が「来期はある」に変わる商材なので、この記録そのものが資産になります。逆に、記録がないと同じ会社に同じ話を繰り返すことになります。
- 既存の取引先に、紹介を頼む。ただしこれは3.で書いたとおり、依存から抜ける目的には効きにくい手です。足元の売上を埋める手段として割り切って使います。
この4つを半年続けて、手応えのある業界が見えてきたら、そこから件数を増やす段階に入ります。件数を増やす段階で、はじめて外注や採用を検討すればいい——順番はこれで十分です。
6. なぜKOKONATSが金型・加工分野の営業を任されるのか
① 図面と加工の話ができる
製造業の営業支援を長く手がけてきたため、公差や抜き勾配、パーティングラインやゲート位置、放電加工とワイヤーカットの使い分け、材料の話(プレス型ならSKD11などのダイス鋼、樹脂型ならプリハードン鋼)、そして「なぜその工法なのか」が通じます。相手が技術の人だったときに、会話が途中で止まりません。
② 営業社員を採用する前に、市場を試せる
金型の営業は、成果が出るまでに時間がかかる仕事です。しかも、どの層が反応するかは会社ごとに違います。それを採用の前に外部で確かめられる——これが営業代行を使う意味です。有望な層が分かってから採用すれば、採用した人が空回りしません。
③ 「今はない」相手を持ち続けられる
新機種が動くまで待つ相手を、社長ひとりで何十社も抱え続けるのは現実的ではありません。型設計と現場を見ながら、半年後にもう一度電話をかける——それができないから、結局いまの取引先に戻ってしまいます。外部に持たせれば、現場の忙しさと関係なく接触を継続できます。
7. よくあるご質問(FAQ)
Q. 図面がないと話が始まらないのに、テレアポで何ができるのですか?
最初の電話で見積依頼をもらうことは目的にしていません。目的は、次に型の話が出たときに思い出してもらえる位置に入ることです。金型は「今はない」が「来期はある」に変わる商材なので、その時点で名前が入っているかどうかで結果が変わります。
Q. 海外製の安い型と価格で比べられてしまいます。
型代単体の比較なら海外製に分があります。比較の土俵を、型代・支払条件・保管費用・量産中の補修まで含めた総額に移すことです。型代の支払方法や型の保管・廃棄の扱いは、経済産業省の「型取引の適正化推進協議会」報告書(2019年12月)でも当事者間の協議事項として整理されています。この話が通じる相手を探すほうが、同じ架電数でも結果が変わります。
Q. 同業の金型メーカーに営業をかけるのは抵抗があります。
無理に勧めるものではありません。ただし立ち上がりが速いのは事実です。手が空いている工程だけを外注で受ける形なら、繁閑の谷を埋める手段として機能します。判断は貴社の方針次第です。
Q. 営業代行の費用はどれくらいかかりますか?
一般的な相場として、アポイント課金型は1件1〜3万円、月額固定型は1人あたり月50〜70万円程度です。金型は検討期間が長い商材なので、短期のアポ数だけで判断せず、追客の設計まで含めて比較することをおすすめします。KOKONATSの料金はサービスページに掲載しています。
8. まとめ:依存は、腕ではなく取引先の構成で決まる
売上が1社に偏るのは、営業が下手だからではありません。型構造とトライの履歴が積み上がるほど、発注は同じところに流れます。依存は、良い仕事をしてきた結果として生まれます。
逆に言えば、成形メーカー・完成品メーカー・同業外注という3つのルートのうち、いま主力と景気の波が違うところを、売上構成比が動く水準まで太くできれば、依存のリスクは下がります。
あとは、新機種が動く前という早い段階で、誰が接触を続けるか——現場が回っている会社ほど、ここを外部に持たせる価値があります。
「型の腕には自信がある。でも、新しい取引先を探す時間と人がいない」
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