「看板は目立つ赤にしたいけど、そもそも大丈夫なのか。」
「パースではこの大きさで見せたいけど、実際に設置できるサイズなのか分からない。」
店舗の外観パースを依頼するとき、看板やサインをどう見せるかは印象を大きく左右します。大きく目立つ看板を描けば訴求力の高いパースになりますが、そのデザインが実際の設置予定地で許可されるとは限りません。
看板・屋外広告物の規制は、屋外広告物法という国の法律が大枠の仕組みを定め、具体的な規制内容(禁止区域・禁止物件・許可基準など)は都道府県や指定都市・中核市などが条例で個別に定める仕組みになっています。つまり、同じ形の看板でも、設置場所の自治体が変われば結果も変わるのが実情です。
この記事では、店舗の外観パースに看板・サインを入れるときに確認しておきたい5つのポイントを紹介します。
※アイキャッチ画像は解説用のイメージで、実際の制作事例ではありません。
① 看板の規制は全国一律ではなく、条例で決まる
国土交通省の「屋外広告物制度の概要」によると、屋外広告物法の目的は良好な景観の形成と公衆に対する危害の防止で、実際の規制は都道府県、政令指定都市、中核市などが条例を定めて行う仕組みになっています。景観行政団体である市町村が独自に条例を定めているケースもあります。
つまり、「この看板なら大丈夫」という一般的な正解はなく、設置を予定している自治体の条例を確認して初めて判断できるということです。パースの打ち合わせ段階で「このデザインで進めてよいか」を判断するには、この前提を関係者間で共有しておくことが欠かせません。
② 禁止区域・禁止物件に該当していないか
屋外広告物条例では、まず看板等の表示・設置そのものを原則禁止する「禁止区域」と「禁止物件」を定めています。東京都都市整備局の案内では、禁止区域の例として低層住居専用地域・中高層住居専用地域・田園住居地域、特別緑地保全地区、景観地区、文化財保護法の建造物や史跡の周辺、学校・病院・官公署の建物・敷地などが挙げられています。禁止物件の例としては、橋や高架道路、道路標識・信号機、街路樹、郵便ポストなどが示されています。
■ 注意したいケース
住宅街に近い立地の店舗や、歴史的な街並み・文化財の周辺に立地する店舗は、禁止区域に該当している可能性があります。パースの打ち合わせを進める前に、設置予定地がどの用途地域・地区に該当するかを確認しておくと、後から看板デザインそのものを見直す事態を避けやすくなります。
逆に言えば、禁止区域・禁止物件のどちらにも該当しなければ、多くの場合は「許可区域」として、許可を得たうえで看板を設置できる可能性が高いということでもあります。
③ 許可区域でも、面積・高さ・色彩の規格がある
禁止区域・禁止物件に該当しなくても、看板を表示・設置するには原則として自治体の許可が必要です。しかも許可を受けられる場合でも、広告物の種類ごとに面積・高さなどの具体的な規格が定められています。
たとえば東京都の施行規則では、壁面に表示できる広告物の合計面積を計算する際、地盤面から第1種・第2種住居地域や準住居地域内では33m、それ以外の地域では52mまでの高さの部分を基準に算定する仕組みがあります(この高さを超える部分は表示面積の計算に含まれません)。また、商業地域内で自己の氏名・店名・商標など自家用の内容を表示する広告物については、13m以下とする基準もあります(東京都都市整備局の公表資料に基づく)。これらはあくまで東京都の例であり、他の自治体では異なる基準が定められています。
| 確認する項目 | 規制されやすい内容 |
|---|---|
| 高さ・面積 | 地盤面からの高さの上限、看板1枚あたりの表示面積の上限 |
| 突出の出幅 | 壁面から突き出す袖看板・突出広告の出幅の上限 |
| 色彩・光源 | 蛍光色・点滅する光源の使用制限、地色の指定 |
パースで見せる看板の大きさ・色は、あくまで「実際の許可基準の範囲内で描いたもの」であることを、施主・発注者とすり合わせておくのが安全です。
④ 景観計画・景観地区の指定エリアは、さらに制限が加わることがある
立地によっては、屋外広告物条例に加えて景観計画・景観地区による制限が重なる場合があります。東京都の景観計画では、景観形成特別地区に指定された地域において、広告物の屋上設置や光源・色彩に制限が加わるとされています。にぎやかな商業地に見えても、実は景観形成の重点区域に指定されているというケースは珍しくありません。
派手な色や光る看板を前提にパースを作ってしまうと、景観計画のある地域では後からデザインを描き直す必要が出てくることがあります。設置予定地に景観計画・景観地区の指定があるかどうかは、看板デザインを固める前に確認しておきたいポイントです。
⑤ パース制作時に伝えておくと手戻りが少ない情報
看板を含む外観パースをスムーズに進めるには、依頼段階で次の情報を共有しておくと、後からのデザイン変更を減らしやすくなります。
共有しておきたい情報
- 設置予定地の自治体: どの都道府県・市区町村に該当するか。
- 用途地域: 住居系地域か商業系地域かなど。
- 景観計画・景観地区の指定有無: 該当する場合は色彩・光源の制限を確認済みか。
- 許可申請の見込み: 既に自治体に相談済みか、これから相談するのか。
なお、屋外広告物の許可申請そのものはKOKONATSの業務範囲ではなく、設置予定地を管轄する自治体の窓口(都道府県や市区町村の屋外広告物担当課など)への確認・申請が必要です。パースはあくまで完成イメージを共有するための資料であり、実際の設置には別途許可が必要になる点を、関係者間で認識合わせしておくことをおすすめします。
看板入りの外観パースを依頼する前のチェックリスト
- 規制の主体: 看板の規制は自治体の条例で決まることを共有できているか。
- 禁止区域・禁止物件: 設置予定地が該当していないか確認したか。
- 規格: 高さ・面積・色彩の許可基準を確認したか。
- 景観計画: 景観地区等の追加規制がないか確認したか。
- 申請の見込み: 自治体への相談・申請の段取りを共有できているか。
看板を含む外観パースは、見た目の訴求力とあわせて「実際に設置できるデザインかどうか」を意識しておくと、施主・発注者との認識のズレを防ぎやすくなります。規制の詳細は設置予定地の自治体によって異なるため、具体的な基準は管轄の屋外広告物担当窓口への確認をおすすめします。
参考にした情報源
国土交通省「屋外広告物制度の概要」、東京都都市整備局「屋外広告物の定義、規制のしくみ」を参考にしています。個別の設置予定地における規制の詳細は、管轄の自治体窓口にご確認ください。



コメント