電気工事の下請け脱却|直請け・元請け案件を増やす新規開拓の進め方

電気工事の下請け脱却|直請け・元請け案件を増やす新規開拓の進め方

「技術には自信がある。でも仕事の入り口は、結局いつもの元請け一社」——電気工事業の経営者様から、最も多くいただくご相談です。単価も工期も、決めるのは自社ではない。元請けの業績が傾けば、そのまま自社の稼働が空く。この構造から抜け出したい、という切実なお悩みです。

この記事では、電気工事会社が直請け・元請け案件を増やすために「何を準備し、誰に、いつ当てるのか」を、許可や体制といった前提条件から、具体的なターゲットの絞り方、そして営業に人を割けない場合の現実的な選択肢まで、順を追って整理します。

こんなお悩み、ありませんか?

  • 売上の大半が特定の元請け1〜2社に依存していて、常に不安がある
  • 単価交渉ができず、人件費や材料費の高騰を価格に転嫁できない
  • 直請けを増やしたいが、誰にどうアプローチすればいいか分からない
  • 職人は足りているのに、営業に回せる人材だけがいない

なぜ電気工事業は下請けから抜け出せないのか

理由は大きく3つあります。①営業しなくても仕事が来てしまう ②直請けに必要な許可・体制が整っていない ③そもそも営業に回せる人がいない——このうち①と③は、セットで起きています。

元請けからの発注が続いている限り、新規開拓は「いつかやること」に後回しされます。ところが元請けが受注を落とした瞬間、自社の稼働も同時に空く。このとき慌てて営業を始めても、直請けの取引先は一朝一夕には作れません。

そして多くの電気工事会社では、代表や現場責任者が営業を兼任しています。日中は現場、夜に見積り。そこから新規のリストを作って電話をかける時間は、現実的に残っていません。②の許可・体制については、次の章で先に整理します。

直請け開拓の前に:許可と体制の前提を確認する

工場の受変電設備更新やビル一棟の改修は、1件で500万円(税込)を超えることが珍しくありません。この規模を直接請け負うには、電気工事業の「建設業許可」が必要です。500万円未満の軽微な工事だけであれば電気工事業登録で足りますが、直請けの主戦場に出ようとすると、いずれ許可の壁に当たります。

許可が未取得なら、順序はシンプルです。まず500万円未満の直請け案件から実績を積み、並行して許可取得を進める。これが最も現実的なルートです。加えて、直請けでは主任技術者の配置、積算・完成図書・官庁届出、材料仕入れの立替といった、下請け時代には元請けが持っていた機能を自社で引き受けることになります。

つまり直請け化は、全案件を一気に切り替える話ではありません。下請けの安定を土台にしながら、直請けの比率を年々上げていく——この前提で読み進めてください。

下請けと直請け、何がどう変わるのか

収益構造は大きく変わりますが、その分だけ自社が引き受けるものも増えます。両方を並べて見ておきましょう。

比較項目 下請け(元請け依存) 直請け(自社開拓)
価格の決定権 元請け側 自社側
粗利率 低い(中間マージン控除後) 高い
案件量の安定性 元請けの業績次第 複数社に分散でき安定
必要な社内機能 施工に集中できる 積算・書類・資金繰り・
工程調整も自社
資金繰り 材料費の負担は元請け 立替が発生する
関係の継続性 切られたら終わり 更新・増設で優先指名

最後の「関係の継続性」が、いちばん大きな違いです。直請け先は、工事が終わっても「その設備を見ている会社」として残ります。年次点検や不具合対応で接点が続き、数年後の更新・増設で最初に声がかかる。1社の直請け先を作ることは、単発の売上ではなく次の案件の優先指名権を手に入れることに近い。年間保守契約まで結べれば、文字通り毎年の固定売上になります。

また、2024年の改正建設業法では、労務費や資材費の高騰分を適正に価格へ転嫁することが求められる方向に制度が動いています。とはいえ下請けの立場では交渉力に限界があるのも事実で、価格を自分で決められる取引先を持つことが、結局は最も確実な備えになります。

電気工事の直請け開拓で狙うべきターゲット4分類

誰に当てるかを外すと、トークをどれだけ磨いても成果は出ません。狙うべきは、自社で設備を保有し、更新の判断権を持っている事業者。そして重要なのは「いつ当てるか」です。

  • 工場・倉庫:受変電設備(キュービクル)更新、動力配線、LED化、生産設備の増設に伴う電源工事。
    設備投資は期初予算で決まるため、決算月の3〜6か月前が提案の入り口。省エネ関連の補助金公募時期も動機になります。
  • ビル管理会社・オーナー:共用部の照明・防災設備、テナント入替時の内装電気。
    大規模修繕は概ね12〜15年周期。
  • 店舗チェーン本部:新規出店・改装に伴う電気工事。1社獲得できれば複数店舗に展開します。
    出店情報が公表された時点では手遅れ。本部の年度計画が固まる前に接点を作ります。
  • 医療・介護施設:非常用電源、ナースコール、更新需要が読みやすい領域。
    法定点検があるため、指摘事項が出た直後が最も動くタイミングです。

逆に、単発の個人宅リフォームや、価格だけで比較されるマッチングサイト経由の案件は、単価が上がりにくく継続性も低いため、下請け脱却の主軸にはなりません。

電気工事の新規開拓が失敗する3つの理由と、自社での打ち手

① 受付で止まる
決裁者は総務部長・設備保全担当・工場長など会社ごとに異なり、「担当者様はいらっしゃいますか」では受付を通れません。
自社で解決するなら:用件を設備名で言い切ることです。「キュービクルの更新時期のご確認で」のように具体的な設備名を出すと、受付は取り次ぎ先を判断できます。

② 既存業者の壁を想定していない
中堅以上の工場やビルでは、すでに保安管理を委託している電気保安法人や、系列のビルメンテナンス会社が設備を握っています。何も考えずに当てても「既存の業者がいるので」で終わります。
自社で解決するなら:正面から置き換えを狙わず、相見積の1社として入る・夜間や停電作業に対応する・緊急対応の速さで差し込む——この3つが現実的な入り口です。そして断られた相手を「いつ再提案するか」まで記録し、追い続けられるかどうかで、翌年以降の受注数がまったく変わります。

電気工事の新規開拓を、人を増やさずに回す方法

下請け脱却に必要なのは、特別な営業テクニックではありません。正しいリストを作り、正しい相手に、当て続ける——それだけです。問題は、その「当て続ける」を担う人が社内にいないこと。選択肢は現実的に3つあります。

  • ① 既存顧客の掘り起こしから始める:過去に工事した施設の竣工年・更新時期を洗い出し、順に連絡する。コストゼロで最も確度が高く、まずここから着手すべきです。
  • ② 社内の誰かの時間を固定する:「手が空いたらやる」では続きません。週に半日でも営業専任の時間を決め、リスト作成と架電を習慣化します。
  • ③ 外部に委託する:社内に時間を捻出できない場合の選択肢。ただし業界を理解している委託先かどうかで結果が大きく変わります。

③を検討する場合の費用感も押さえておきましょう。営業担当を1人採用すると、年収400〜500万円に加えて法定福利費(年収の約15%)と中途採用コスト(1人あたり平均100万円前後)がかかり、初年度の実負担は600万〜800万円規模。さらに戦力化までに半年〜1年を要します。

一方、営業代行の一般的な相場は、成果報酬型でアポ1件あたり1.5〜3万円、月額固定型で月50〜70万円、固定と成果報酬を組み合わせた複合型なら固定費月10〜50万円+成果報酬、といったところです。採用リスクを負わずに、開拓活動そのものを立ち上げられるのが利点になります。

※費用はいずれも2026年時点の一般的な相場です。商材の難易度やターゲット企業の規模によって変動し、電気工事の直請け開拓のように決裁者の特定が難しい領域では、上限側に寄る傾向があります。

ただし委託先選びには一点だけ注意が必要です。「キュービクルの更新はできますか」「主任技術者の選任はどうなっていますか」——設備担当者からのこうした質問に、業界未経験のアポインターは即答できず、その瞬間に信用を失います。格安のテレアポ業者にリストを渡しても成果が出ないのは、この専門性の壁が理由です。価格よりも「業界を理解しているか」で選んでください。

業界を理解した営業がやると、結果はこう変わります

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